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エルヴィス (2022)

世界で最も成功したミュージシャン・エルヴィスの幼少期から死ぬまでの42年間を駆け抜ける作品。
バズ・ラーマンによるエキセントリックな映像と史実に基づいた伝記映画はどうも食い合わせが悪いように思えるが、狂乱の音楽ビジネスのカオスさとマッチしてむしろかなり馴染みが良い。

エルヴィスが世界で具体的にどれくらい成功を収めてどれくらい社会現象を起こしたかというところは、実はこの映画だけではよく分からない。
50年代の革命的な登場と、60年代後半のカムバックとではエルヴィスの立ち位置も影響力も大きく違うが、その変化には注視せず、エルヴィスのビジネスに呑み込まれていく人生とその周辺環境にフォーカスされている。

芸術活動は崇高である一方、ビジネスは金が絡む以上どうしても汚くなる。
アーティストが前者を、マネジメントが後者を担うということを考えればアーティストとマネジメントは間違いなく二つで一つだし、どちらかが無能ではショービジネスの世界では勝ち残ることができない。音楽と観客に対し果てしなくピュアだったエルヴィスと、敏腕でありながら薄情で小賢しいパーカー大佐は、少なくともビジネスの視点においては、良きバディだったと言えるかもしれない。

そういう意味においても、物語終盤の大佐による「君は私で私は君だ」という発言は、ビジネスマンとしての意地の悪さと一人の人間としてエルヴィスに掛けた思いが入り混じった、真実の言葉だったように思える。

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