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yeule / Glitch Princess (2022)

「私の名前はNat Cmiel。22歳、音楽とバレエが好き」

このアルバムは、yeuleの自己紹介から始まる。好きなものや嫌いなもの、願望などを紹介していくその声は加工、切断され、不気味に響く。
「Glitch Princess」を体現するようなこの楽曲は、この先続いていくアルバムの取っ付きづらさを予感させるかもしれない。

そもそもyeuleは、一躍その名を世間に知らしめた前作「Serotonin Ⅱ」(2019)以降、ビジュアルも表現方法もコアでエクストリームな方向に向かっていった印象があった。
だからこそ今作がどれくらい実験的なものになっているか、期待半分、不安もあった。が、yeuleはそんな心配や期待をはるかに越えてきた。

ポップでキャッチーで、でもエクスペリメンタルで、ノスタルジーで、未来的。

過去に聴いていて同様の感想を持った作品を思い出す。今ではHyperpopムーブメントのパイオニア的作品となっている、Charli XCXのミックステープ「Pop 2」(2017)。
yeuleの「Glitch Princess」はちょうど、その先にあるアルバムに聴こえる。

2曲目「Electric」は特に、「Pop 2」的と言えるかもしれない。
コーラスで立体的に展開するサウンド、オートチューンで歪められながらも美しく響くボーカルは、
広大なWebの海を羽ばたくような、チャーリーがCaroline Polachekをフィーチャリングに迎えた「Tears」を彷彿とさせる。

続く「Flowers are Dead」もどこかノスタルジーの空気を纏ったスロウテンポのナンバー。
ノイズ、アンビエント的なギターの響き方が、グリッチにもかかわらず感傷的な気持ちを誘う効果をもたらしているのかもしれない。
ピアノが印象的なバラード「Eyes」、Tohjiが客演として参加したニュー・ノスタルジーと形容すべき「Perfect Blue」と続いてからの、
アコースティックギターがフィーチャーされたyeuleにとっての異色曲「Don’t Be So Hard on Your Own Beauty」の美しさと言ったら。


アルバム後半、徐々にカオスティックな色合いを強めていくのは前作とやや似た作りとも言える。
一点大きく違うのは、最後の曲が4時間44分もするということだ…(先行配信でリリースされたとき驚愕した)


個人的には、ここ数年のドリームポップ/エクスペリメンタル/Hyperpop系の一つの集大成と言ってもいいくらい、好きだ。
Dorian Electraの「Flamboyant」やCaroline Polachek「Pang」などと同じくらい、愛せそうな作品。


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