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キャラ軸の整理:体制派か個人派か

1.キャラクターを2項で測る

 ブレのないキャラクターの価値基準のために、その存在が一体何派に分類されるのかということを考えるのはとても役に立つ。キャラクターとは創作された存在であり、それは創作者がある程度コントロールすることができる。だから、キャラクターを分類してその基準から逸脱することを未然に防いだり、あるいはすでにある基準に合わせたキャラクターを創造することが可能と言える。
 そのための価値基準は様々であるが、2項対立したものが分かりやすく考えやすいだろう。Aか、Aでないか。そういったシンプルなルールにあてはめられたキャラクター達は、一見窮屈そうに見えるが、基本的に矛盾なくブレなく創作の中でいきいきと動き回る。

2.体制派

 体制派のキャラクターとは即ち、その心が個人ではなく組織にあるキャラクターのことである。体制派に属することの最大のメリットは、毎回の判断に自身のリソースを使わなくて良いことである。時間やお金や疲労を気にすることなく、なんらかの(実際にはほぼ無制限に)、判断を下すことができる。そしてもう1つのメリットとして、そのキャラクターはその判断に関して責任を負わなくて良い。なぜならその判断や結論は組織のものだからである。個人がそれらを決定するわけではない。そのように言える点で、自我の濃くない、あるいは立場の弱いキャラクターにぴったりである。
 一方で最大のデメリットとして、生殺与奪を組織に握られているという点があげられる。責任を負わなくて良い代わりに権利もない(本当はなければならないが、そう声を上げる判断はこの手のキャラクターにはない)。だから仮にその組織の判断が間違っていたり、何か大きな代償を払わなければならなかったりした時に、真っ先に犠牲となるのは立場の弱い体制派のキャラクターとなる。組織の歯車としての悲痛な運命である。
 総じて体制派のキャラクターは、自身のリソースを使わないままに無責任な判断を下せる一方で、組織という後ろ盾が無くなったり裏切られたりした場合にはなすすべなく被害を被ることになる。このような特性を持つキャラクターは、普通は主人公(一派)にはなれず、サブキャラクターどまりであることが多い。なぜなら体制派のキャラクターは、1個のキャラクターというよりも組織の代弁者であったり、被害者であったりといった側面が強いからである。

3.個人派

 個人派のキャラクターとは即ち、その心が組織ではなく自分自身にあるキャラクターのことである。個人派に属することの最大のメリットは、自身がかけたコストの分だけ、あるいはポテンシャルに応じて、自由な判断と行動が許されることである。ルールや法則、仕組みを気にすることなく、まったく無制限にその判断を行うことができる。もしくは、そのルール作り、即ち世界を創り上げるということもまた、個人派のキャラクターでなければできないことだ。そのように言える点で、自我の濃い、あるいは立場の強いキャラクターにぴったりである。
 一方で最大のデメリットとして、全ての行動が自己責任だという点があげられる。自由の代わりに庇護がない(実際には運や創作者の判断により守られてはいるが、少なくともキャラクター自身は気づかず、過度な庇護は自由度を壊すために抑制される)。だから仮にそのキャラクターの判断が間違っていたり、何か大きな代償を払わなければならなかったりした時に、真っ先に犠牲となるのはそのキャラクター自身となる。それを回復させるには、そのキャラクターがもっとコストをかけられるようになるか、ポテンシャルを成長させるしかない。
 総じて個人派のキャラクターは、自身の好みに応じた自由な判断を下せる一方で、その責任についてはほとんど自分で被ることになる。このような特性を持つキャラクターは、普通は主人公一派に数えられ、サブキャラクターだったとしても、いずれは中心人物となることが多い。なぜなら個人派のキャラクターは、成功と失敗をくりかえし世界を変革していく、それを見ている者(視聴者)の感情移入先としての側面があるからである。

4.2つの意味

 このように2項対立的に組織派と個人派を比べると、その顕著な違いは「自由な行動をとるか否か」「主人公か否か」「感情移入しやすいか否か」であるものと考えられる。
 非常に単純な見方ではあるものの、この2項は様々なキャラクターを分かりやすく分類でき、その行動の1つ1つについて統制し、ブレを起こさないことに役立つものである。
 この「体制」と「個人」はあくまでも基準点であり、どちらにどれくらい寄っているのか、時系列に応じて、成長に応じて変わるのかなどの判断を入れていくことで、更なる複雑性と面白さを帯びていく
 そのための1つのきっかけとして、まずはこういった2項対立で考えることの大切さが存在する。

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