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今、エネルギーの未来について、「自分の頭」で再考する時。

本記事はタイトルにもある通り、日本のエネルギー事情の現状と未来を再考するために、なるべく客観的に資料等を整理したものです(一部、人工呼吸器ユーザーとしての記述もあります)。非常に難しい問題がテーマですが、決して意見の押し付けではありません。約3,200字と少々長文ですが、よろしくお付き合いください。


原発事故によって変わった日本のエネルギー政策

2011年、東日本大震災により引き起こされた原発事故によって、私たちは大きな悲しみと不安を植え付けられました。放射性物質という目には見えない敵との長い戦いが今も続いています。
原発事故後、原子力発電安全基準の見直しにより、全国の原子力発電所48基(福島第一原発の6基を除く)が全て運転停止。日本の発電量の約30%を占めていた原子力発電を一気に失ってしまいました。2021年末時点で、再稼働しているのはわずか7基(うち2基はいつ停止命令が出てもおかしくない状況)となっています。その他に、再稼働後に裁判所からの停止命令を受けて再停止した1基を含む3基が定期検査中となっています。

資源エネルギー庁「エネルギー白書2021」より引用

「あの忌まわしい事故を起こした原発の再稼働なんてありえない、未来の子供たちにクリーンな地球を残していくために、太陽光発電などの再生可能エネルギーをどんどん推進していきましょう!」

確かに聞こえはいいですね。「その通りだ!」と考えている方、「なんとなく正しく、もっともらしい事を言っている気がするな」と考えている方、未だに多いのではないでしょうか。

しかし、今現在の日本のエネルギー事情を今一度考え直してみると、果たして理想の未来に向かっているのでしょうか?


不安定になった?電力供給

先日、太陽光発電等の「出力制御」が相次いで実施されたことをご存知でしょうか。

一言でいうと、「電気作りすぎ!電気の需要供給バランスが崩れると、大規模停電の恐れがあるので、発電やめて!」という内容。


一方で、2022/3/16 23時頃に発生した福島県沖を震源とする最大震度6強の地震によって、首都圏の約210万戸で停電が発生しました。(これは、大規模停電(いわゆるブラックアウト)とは異なる、局所的な停電であることに注意してください。)
この局所停電の対象に、自分が入院している病院があるエリアも含まれていました。院内が真っ暗になると同時に、フロアで使用されている複数の人工呼吸器が一斉に内蔵バッテリー運転に切り替わり、低いビープ音を鳴らし続けました。程なく病院自家発電に切り替わり、一安心。停電が発生したということだけを相方に伝えて熟睡してしまったので、後で相方にこっぴどく𠮟られた話はまた別の機会に。

停電が発生した直接的な原因は、地震による施設倒壊等により、広野火力発電所(約120万kw)をはじめとする複数の火力発電所に発電不能に。それによって電力需要に対する電力供給力が著しく低下(約600万kw)し、送電網を保護する装置「UFR」(周波数低下リレー)が作動したため。

「UFR」(周波数低下リレー)の仕組み(東電パワーグリッドのWebサイトより引用)

 一言でいうと、「発電所壊れちゃった!大規模停電の恐れがあるので、一部の電力供給を止めます!ごめん!」という内容。

この地震のダメージが残ったまま、2022/3/22、法令化後初となる「電力供給ひっ迫警報」が発令されました。複数の要因が絡み合い、まさに一週間前の局所停電と同じ状況が目前に迫っていました。いったい何が原因で、何が起ころうとしていたのか。NHKのWebサイトに分かりやすくまとめられています。

電力自由化、電気小売業者の増加。いざという時の責任の所在がどんどん分かりにくくなり、日本はいつの間にか、「安定した電力供給」という最も重要な社会インフラについて、脆弱な国になってしまったようです。

自分をはじめ、人工呼吸器などの生命維持装置に電気の供給が不可欠な人は大勢います。自分は病院の自家発電設備があるため数時間の猶予がありますが、在宅で人工呼吸器管理を行っている友人もいます。我らにとって、「安定した電力供給」が脅かされつつある現状に、不安を覚えざるを得ません。

環境にも家計にも負担が増え続けている

原子力発電所の運転停止により、原子力発電で賄っていた発電量を石炭・石油・天然ガスを用いた火力発電で賄うことになりました。2010年には全発電量の68%を占めていた火力発電ですが、2019年になっても全体の76%と、火力発電依存が高まったままです。これは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガス削減という世界規模の取り組みに逆行しているのは明らかです。
それだけではなく、その間の発電燃料費の相場上下動、近年では再エネ賦課金(再生可能エネルギーを電力会社が買い取る際の費用を消費者が負担する制度)の大幅な上昇も含めて、電気料金は直近10年で見ると上昇傾向が続いています。

電気料金平均単価の推移 (資源エネルギー庁Webサイトより引用)


賦課金単価の推移 (自然エネルギー財団Webページより引用)

2021年度(5月の電気料金から適用される)賦課金単価は、1kWhあたり3.36円と公表され、2020年度2.98円から13%の増加率になった(図1)。これにより、月に250kWh以上の電力を消費している平均的一般家庭では、賦課金負担総額が1ヶ月あたり840円程度となり、年間1万円を超えることになる。

再エネ賦課金単価の上昇(自然エネルギー財団Webページより引用)


発電しない原子力発電所

現在の日本のエネルギー事情を鑑みたとき、一番無駄になっているものは何か?と考えると、残念ながら「発電しない原子力発電所」と言えるのではないか、と自分は考えてしまいます。
原子力発電所は発電せずに停止いれば安全かというと、必ずしもそうとは言い切れません。一度使用した「核燃料棒」は、発電の有無にかかわらず数年間熱を放出し続けます。1ワットも発電させずに、粛々と冷やし続けられています。
もちろん、被災した場合のリスクには違いがあります。震災発生時に運転中だった福島第一原発1~3号機と、定期検査のため運転停止中だった4号機の現状は、以下のように差があります。

資源エネルギー庁「エネルギー白書2021」より引用


自分は福島県出身です。原発事故によって、美しい故郷を奪われた当事者の一人でもあります。それでもやはり、ここまで整理してきた様々な要素を総合して考えると、もう少し積極的な原発再稼働の推進が最もバランスが取れた道筋なのではないかと思います。
現在、再生可能エネルギーをもっと有効活用するために、地域間連系線(地域間で電力を融通し合う送電線)の整備が着々と進められています。前述の再エネ賦課金の一部もこれに使用されています。十分な電力を融通し合う連携線が完成するまでには数年間かかる見通しですので、その間は今もホットでエネルギーが有り余っている「核燃料棒」ちゃんに頑張ってもらいましょう。これらのインフラ整備が実用的なレベルに達したら、徐々に原子力発電の割合を減らしていく未来が望ましいのではないでしょうか。

地域間連系線の整備状況 (資源エネルギー庁Webサイトより引用)

但し、原発の新規建設については、自分は慎重な立場です。もうこれ以上「核のゴミ」を増やすことはないでしょう。

原発再稼働についての世論の推移

原子力文化財団 2021年度世論調査Webサイトより引用

自分の考えに近いのは黄色になるかと思います。原発事故から10年以上経過していますが、未だに色々な意見がある難しい問題です。
今回のこの記事をきっかけに、現代を生きる我々について、未来を生きる子供たちについて、周りの声に左右されず「自分の頭で再考」してみてはいかがでしょうか。


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