【#妄想本棚:チャラい男友達編】こんな本読んでる人と付き合いたい!元書店員が本気出して彼氏の家の理想の本棚作ってみた。
飲み会で「うえ〜〜〜〜〜い」とか言ってる男友達が、突然真剣な顔をして「おまえって可愛かったんだな」なんて言ってくるときほど、女をくらっとさせる瞬間があるだろうか、いや、ない。
どうも! のっけから反語で失礼します、川代です!
いやー、最近寒くてですね、うちのマンションはどういうわけか全然暖房が効かなくてですね、毛布を2枚重ねても布団の隙間から冷たい風が流れ込んできて、寝よう寝ようと思っても全然眠れず、だんだん意識は朦朧としてきて、なんとかこの寒さを紛らわすためについ妄想の世界に飛び込んでしまうわけでございます。
あー、こんな本読んでる人と付き合いたい……。
と!!!(唐突!)
いや、唐突なのはわかっとるんです! しかしね、しょうがないんですよ、書店員という職業柄なのかなんなのかわかりませんが、私にはどうにもこうにも、「好きな男性のタイプ」を本棚で決めてしまうという性癖がありまして。
「こんな手が好き」という「手フェチ」、「こんな血管が好き」という「血管フェチ」がいるとするならば、私はいわば「本棚フェチ」になるわけでございます。手よりも血管よりも本棚にムラっとくるわけです。(変態か)
というのもですね、「本棚」というものは、その人の人となりがものすごく反映される場所ではないかと私は個人的に思っております。
どんな作家が好きなのか? ジャンルはビジネス書なのか、小説なのか、ノンフィクションなのか、絵本なのか、写真集なのか? 並べ方は? カバーのかけ方は? 帯はとる? とらない?
などなど、本棚からにじみ出る人柄を垣間見るのが好き。個人的には「本棚」=「頭の中」だと思っているので、下手な占いよりも本棚の方がよっぽどその人となりがあらわれると思っております。
この謎の性癖のおかげか、最近は相手が「今読みたい本」を言い当てるのがめちゃくちゃ得意になってきました。「誰にも言ったことないのに! なんでこんなにドンピシャに好きな本当てられるんですか!?」と驚かれたりするのですが、なかなか「性癖なんで」とは告白できていません。
そんなこんなで楽しく本棚づくりをしていたある日、ふと思いついたことがありました。
だったら逆に、「理想の本棚」をつくってみたら、面白いんじゃないの?
店の中に、私の理想の男子が読んでそうな本を集めたら、その本棚にイケメンの魂が宿って、私の疲れた心と体もあたたまるのでは?
ということで、私の超個人的趣味でスタートした企画「妄想本棚」。
2018年から不定期で連載しているこのシリーズですが、2020年バージョンということで、今回また新たに選書をいたしました! いえーい!
私の独断と偏見で「理想の彼氏」のキャラクターを勝手に作り上げ、その彼が読んでそうな本を選んでみました。
結構ガチで考えましたよ! いやーこんな本棚の人がいたらイケメンにちがいない! 絶対モテる! やばい! と興奮しながら選書しました。
私の趣味全開の企画で、非常に暑苦しいかもしれませんが、どうか最後までお付き合いください。
さて、今回の妄想彼氏さんを語るときに外せないキーワードがあります。
それは──「ギャップ」。ギャップなんです。今回の彼は、一言でいうならば「ギャップの鬼」。
おっっっっっまえそんな超ベタなギャップを見せられていまどき落ちる女がいると思ってんのか!?
なめんな!!! バカにするのも大概にしとけよ!!!
はい、ここにいます!!!!
そんな感じです。
まずはプロフィールからご覧ください。
はい、働き盛りの31歳、大手人材派遣会社でマーケティングやってますなんて、もう、みなさんもおわかりでしょう、
この人、めっちゃモテます。
合コンざんまいです。
もうあれですよ、道を歩けば女が寄ってくるみたいなそんな感じですよ。(そんなにモテる人いるのか知らんけど)
社内の盛り上げ役、ムードメーカーでいかにも「陽キャ」な彼と付き合ったきっかけは、高校の同窓会でした。
そう、高校の頃、同じクラスだったんです。
高校の頃からスクールカーストの上位にいた「人気者」の彼と、本ばかり読んでいて、影の薄かった私。
そんな陽キャと陰キャの戦いが今ここで!! 勃発するわけでございます!! カーン!!!
注:これ以降川代の脳内妄想がスタートします。あくまでも妄想です。なお、この彼氏は中村倫也さんの顔面で脳内再生してください。
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(来なければよかったな……)
久しぶりの同窓会。せっかくだし、と思って来てみたものの、案の定、手持ち無沙汰になってしまいました。
結婚しただの子どもが生まれただの、何組の誰々は不倫してるらしいよだの、たわいもない世間話が一通り終わると、話題もなくなり。
なんだか一緒にいるのが気まずくなり、「私トイレ行ってくるね」と立ち上がったきり、隣にいた同級生は戻ってこない。
ふと気がつけば、会場の端っこでただひとり黙々と枝豆を食べ続けるしかありませんでした。
ひとりでいることを気にしているのがバレないように、わざとゆっくり、時間をかけて枝豆の皮をむいて。
そんなときにぼんやりと思うのは。
(ああ、やっぱり、大人になっても何も変わらないんだな……)
人気者はいつまでたっても人気者だし、
「根暗なオタク」はいつまでたっても「根暗なオタク」。
こんな残酷な階級社会は、結局変わることはないんだ──。
「おう、川代じゃん、ひさしぶり」
そんなことを考えていると、目の前のテーブルにビールジョッキがどん、と置かれます。
顔をあげるとそこにいたのは、
クラスでもナンバーワンの人気者だった、中村くんが。
ほとんど話したこともないのに。
どうして話しかけてきたのか想像もつかず、何と返していいかわからない私。
すると中村くんは、脈絡もなく突然こう切り出します。
「なあ、川代さ、聞いたよ。書店員になったんだって?」
「……そうだけど」
「あのさ、じゃあ俺に面白い本教えてくんね?」
あまりに唐突すぎる質問に、面食らいます。
聞けば、大学生の頃から本を読むようになったという彼。
自分の好みで選んでばかりいるといつも同じ本を読むことになってしまうので、何かおすすめを教えてほしい、と。
「でも、むやみやたらには勧められないよ。中村くんの好みとか教えてもらわないと」
「じゃあ、これでどう?」
言うなり、中村くんはスマホを取り出し、私に一枚の写真を見せてきます。
「これ、俺の本棚」
あんたこれは反則だろうよ……!!!!
その写真を見せられ、私は思わずくらっとしてしまいます。
なぜなら、彼の本棚があまりに私の性癖ドンズバタイプだったからです。
思わず頭を抱えたくなります。大混乱です。
「どう? 傾向とかわかった?」
いやあんたそんなめちゃくちゃチャラそうな顔でこんなっ……こんな本棚って……
ちょ、ちょっと待って落ち着け私! と言い聞かせるも、胸の動悸がどうにもこうにも治りません。
だってあんたそんなツーブロックの立ち上げ前髪で
『野生の思考』とか読むの?
え?
……
……
え?(激しい動悸・息切れ)
やばい! ギャップありすぎるんですけど! この本めっちゃ読書家な人が読む本っていうイメージなんだけど?
ツーブロック×野生の思考?
立ち上げ前髪×野生の思考?
チャラ男×野生の思考?
というか何? そういう人類学とか実は好きみたいなことおっしゃる?
え、あとさ、その隣も
あ〜、ジャレド・ダイアモンドとか読んでしまいますか、そうですかそうですか。
「あっこの本、読んだことある? 俺さー、こういうなんつーの、難しい本って結構買っちゃうんだよね。ちゃんと理解しながら読むのすんげー大変っつーか、でもだからこそ面白いっつーか。俺たぶんまだ半分も理解できてないと思うんだけど、でもいつか理解できるようになったらいいなーと思って読んでる」
うわっっっ!!! まぶしい!!! ちょっおまっやめろ! そのギャップはやめろー!!!
いかにもチャラくて意識高い系の見た目してるくせに、「難しい」とか「理解できない」とか正直に言っちゃう感じなんなの! そんなイケメンでリクルー○でハイパーエリートなんだから「あの理論はすごく興味深いよね」とか言ってもいいんだよ!? 誰も責めないよ!? あ〜やっぱり頭いいんだな〜意識高いやつはちげーわってなるだけだよ!? 何!? その正直に言う感じ何!?
「無知の知」系男子はほんと性癖に刺さりすぎるからやめて!!!
まずい……おそるべし陽キャ……コミュ力高すぎ……
と思いつつも平静を装いながら次の本を見ると
そこにいたのは
そこにいたのは
そこにいたのは岩波でした。
ちょっとマジで勘弁してほしい! 岩波文庫! しかも赤と黒はあかんって! ダメだって!
だって想像してごらんよ
岩波文庫を片手に電車に乗る中村倫也
岩波文庫のカバーを外してなぜか本体表紙の薄茶色の部分の模様を眺める中村倫也
付箋貼りまくり、赤線引きまくりのボロボロに読み潰された岩波文庫を手に風呂で読書する中村倫也
やばない?
……
……
えー、ということで、岩波文庫の衝撃で固まっている私に、中村くんはさらなる攻撃を仕掛けて来ます。
「あっ、今読んでるのはね、これ」
ボカーン!
「男なら司馬遼太郎は読んどかなきゃダメかなーとか思って!」なんて単純な選書理由をにっこり笑いながら言われた暁には私は爆発します。
さて、ということで確実に私のHPをごりごり削っていく恐るべきギャップの鬼・中村倫也でございますが、ちゃんとビジネススキルを上げるための努力もしているようです。
入社したての営業部配属だった頃、「仕事出来る」人たちに囲まれて挫折しかけて、とにかくスキルアップに繋がるようなビジネス書ばっかり読んでた時期があってほしい。
「最初の頃、マジで超厳しくてさ。毎日毎日怒られてばっかりで……。でも、ぜってえ誰にも負けねーって思って、勉強しまくったなあ」とか遠くの方を見つめながらしみじみと言ってほしいよね。
あと実はアイドル好きみたいなギャップもいいよね!
疲れたときにはももクロが頑張ってジャンプして全力で踊ってる映像をひたすら見て元気もらってる、みたいな。
「Amazonプライムでやってた『バチェラー』の指原のMC力はマジで半端なかった」みたいに熱く語るところも見たい。(どんな妄想)
さて、本棚をきっかけに、話は盛り上がります。
「中村くん、美術とか好きなんだ」
そう、こういう「美術手帖」のバックナンバーとかがあるのも良いよね!
と、思ったのもつかの間、
「あー、それは塩田千春展に行って、すげーよかったから買ったんだよね」
「へえ、美術展とか行くんだ? ちょっと意外かも」
「いや、誘われたら行くくらいだけどねー」
……
……
『誘われたら行く』
イコール
『この展覧会は誘われたから行った』
……
……
ふーん。
なるほどね。(何が)
まあ、大の大人が男友達と二人で美術展には行きませんわな。
そこで何かいやなものを感じてしまった私。
そうだよね……
こんなイケメンで陽キャの中村倫也が彼女いないわけないよね……(というか顔面が中村倫也の時点で彼女いないわけがない)
あぶねえあぶねえ、あまりのギャップに私としたことがつい落ちそうになってしまったわ!
ということで気を取り直しましょう。
落ち着きましょう。
『昭和元禄落語心中』がある理由は、飲み会での笑いを追求しすぎて最終的に落語に行き着いたみたいな経緯があってほしいな。
大阪出身とはいえ住んでたのは5歳までだから、あんまり関西のノリとかわからないし、関西弁もめっちゃ流暢というわけじゃないけど、でも「大阪出身」って言っちゃうと面白さをいつも求められるから、「笑い」を追い求めすぎて最近は落語の研究までしてる、みたいな。(設定が細かいわ)
「みんな大阪出身ってだけで期待しすぎなんだよ」
とかちょっといじける彼を、
「え〜? なんでやねんは?」
とかって雑にいじったりして、
「お前バカにしてるだろ?」
とか言って頭ぐしゃぐしゃにされたいよね!!!!
そんで仲良くなったあかつきには彼の実家に遊びに行ったりして、田舎に帰ると周りの言葉がうつって、つい「ほんまや〜」とか関西弁気味になっちゃう中村倫也を
見たいよね!!!!(妄想が飛躍しすぎ)
さて、グレネードランチャー並みの攻撃力を持った中村倫也に爆死させられそうになった私でございましたが、なんとか息も絶え絶え、生き残りました。
まだ白旗はあげておりません。
大丈夫! こんなモテ男に惚れてしまったらこの先苦労するの目に見えてる!
さあ最後に出てくるのはなんだと思いながらよく見ると、見逃していた本が。
そしてその一冊を見つけた瞬間私は凍り付くのです。
──ああ、もう、私は恋に落ちるしかない。
なぜなら、そこには
辻村深月があったからです。
(……いや、でも、たまたま読んでみただけかも)
私の中で、辻村作品は、何かしらの「生きづらさ」を感じている人がハマる小説、というイメージがありました。
私自身、辻村さんの作品に救われたことはなんどもあって、
だからこそ、彼女の小説が好きという人とは、ものすごく気が合うことが多いのです。
「あ、もしかして辻村深月、好き?」
ビールを飲みつつ、中村くんは聞いてきます。
そして、私の答えを待たずに、
「俺、この人の小説、めっちゃ好きなんだよね」
そう語り始めました。
「『凍りのくじら』でハマって、それからほぼ全部読んだかな。『かがみの孤城』も超よかった。辻村さんの小説読んでると、落ち着くんだよね」
(ああ、なんでそんなこと言うの……)
「……私も、好き」
それを聞いて、やっぱり、そうだと思った、と中村くんは嬉しそうに笑います。
「……俺さ、小学生のとき、あんまり楽しくなくて。友達いなくてさ。だから中学からは、人気者になろうって必死になって……」
意外な過去を語り出す彼。
そして。
「でもたまに、怖くなる。今は周りにいる人たちも、いつかはいなくなるんじゃないかって」
ぼんやりと、同窓会で盛り上がっている同級生たちの方を見つめています。
「そういう気持ち、わかる?」
わかる。
わかるよ、わかるよ、わかるよ……。
ああ、私がバカだった。
なんの努力もせず、勝手に人が寄ってくる。
生まれながらにして人気者。
私とは別世界を生きる人。
私には到底、たどり着けないし、私みたいな根暗の苦しみなんてわかってくれるはずがないと思っていました。
でも、違った。
勝手にレッテルを貼り付けて、彼のことを知ろうともせず、うがった目で見ていたのは私のほうだったのです。
「私、中村くんに読んでほしい本、ある。たくさんある」
感情が高ぶり切った私があれと、これと、と指折り数えて本のタイトルを読み上げようとしたその瞬間
「そんな一気に、覚えらんねーって」
と、
中村倫也が
私の手を
ぎゅっと
握るわけですね!!!
「今度行くから。お前の店に」
とかいって
とかいって
それでまあ本がキューピッドとなって
お付き合いスタートみたいな
そういうのって
いいよね!
……
……
……
まあ、ここに書いてあること一から十まで全部妄想なんですけどね。
……はい。
いやー、なんかもう前回にも増して妄想爆発しすぎて本当恥ずかしいし虚しいしクリスマス前に何やってんだ感がすごいんですけど、それ以上に楽しすぎました!
まあ何が言いたいかといいますと、やっぱり本って一冊一冊に選ばれた理由があって、エピソードがあって、
「なんでこの人はこういう本を選んだんだろう」って考えれば考えるほど、その人のことを知れるような気がして、すごく楽しいですよね。
みなさんも好きな人がいたら、「本棚見せて」って言ってみたらその人の人となりが見えてくるかもしれませんよ〜。本屋さんに行って、お互い好みの本をいくつか選んでみて、「それを選んだ理由」を話してみるのも良いと思いますよ〜。そうそう、本屋ってそういう使い方もできるんですよ!
コミュニケーションツールとして、本と、本屋を!
ぜひに!! ご活用くださいませ!!!!(書店員の叫び)
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おまけ
注:この記事は、実話を元にしていない完全なる妄想です。
現実では
「はーい、俺の勝ち」
「え? うっそ、こいつマジでLINEゲットしやがった!」
「あの女、俺の作り話全部信じたわー!」
「なにそれうけるー!」
などという恐ろしいこともありますから、ご注意ください。
根暗族のみんな、同窓会には気をつけようね!☆(ゝω・)vキャピ
《おしまい。次回をお楽しみに!》
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