内澤 崇仁さま
はい、はじまりました。往復書簡なのに往復していない書簡。
この書簡はデーリー東北に内澤さんが連載されている『音は空から言葉は身から』に勝手に返信することを目的としています。
てなことで強引に三通目、いきまーす。
【前回までのあらすじ】
内澤さんの「エッセーとは何か。エッセーなのかエッセィなのか」という言葉からエッセイについて考えてみようというものでした。
そうそう、文筆家の村尾清一氏によると
とあります。
なるなる。内澤さんがエッセーと書かれるのは、フランス語読みにされたということでしょう。余談ですが、私はパソコンデスクに常備している『新選国語辞典第九版』(小学館)に「エッセイ」とあったのでそちらにしました。
などと、至極まっとうな人を気取りましたが、これ往復していないので全部独り言なんですよね。
……。
でも大丈夫!
無駄づくりで有名な発明家、藤原麻里菜さんが
とおっしゃっていました。
我、かえらない!
あたいこういうの、得意!!
さ、では雀躍と『音は空から言葉は身から』vol.2にいきましょう。
この引用部分で美しい蕪島やウミネコを想像していたと思わせて、私の心はえびせん一筋でした。
例えるなら、映画『パズラー』のパッケージと中身くらいの差ですね。
何を言っているのかわからないかもしれない。なのでまずは「映画」「パズラー」でググってください。はい、出てきましたね。あのえっぐいホラー映画『SAW』を連想させるパッケージが。うわあめちゃくちゃグロいホラーやん、って思うでしょ。
いいえ、内容はまったく違います。
自動販売機でホットコーヒーを押したのに、なま温いナタデココドリンクヨーグルト味が出てきた(川勢の実体験です)くらいの違いがありますまずいです。
さて。
えびせんべいとは何だろう。
ウミネコどもも私も大好きえびせんべい。
食べると痒くなる(わたし甲殻類アレルギーでして)のに、やめられない止まらない、かゆかゆかゆ。
そんなわけで、今回はえびせんべいについて一緒に考えてみませんか。
そういえば『音は空から言葉は身から』で内澤さんの少年時代のお写真が掲載されていましたね。内澤少年が抱えている赤い袋を見るとカルビーのかっぱえびせんを思い出します。
とはいえ、かっぱえびせんは煎餅らしくないじゃないか!
煎餅といえば平べったく薄いもの、というイメージが私の中にはあります。
ただ、カルビーのホームページによるとかっぱえびせんは当初「かっぱあられ」として販売されていたそうです(関係ないですが、カルビーの社名の由来はカルシウムとビタミンB1を合わせた造語だったんですね)。
あられならあの形も納得よね──なんて寛大な女ではありませんぜ、わたくし。
なぜ平べったくないと煎餅らしくないと私は思ったのか。そもそも煎餅の定義がわからない。なので『老舗煎餅』(小学館)を読んでみました。
中国から伝わった煎餅。ただ、中国の煎餅は現在の日本で「煎餅」と呼ばれるものとは様子がかなり違います。
そうなんです。
中国の煎餅は日本でいうところのクレープのようなものだったんです。
あるいは
とあるように、煎餅は春巻きのようなものでした。
そのように考えると日本における煎餅とは当初どのようなものだったのでしょうか。
正倉院文書の中にある煎餅については
とあります。揚げたといっても
とあるので、今日私たちがイメージする油をたっぷり使ったドーナツなどの揚げ物より、炒めものと揚げものの中間といった感じでしょうか。
正倉院文書の中の煎餅はどんなものなのかはっきりとしませんが、弘法大師が持ち帰った煎餅にはこんな話があります。時は八〇四年の話です。
そうなんです。もともと煎餅というのは米粉を使用した丸いものではなく、瓦煎餅のようなものだったのですね。
内澤さんは煎餅と聞くと、やはり八戸(南部)煎餅なので小麦粉の煎餅を思い浮かべられたのでしょうか。ライブのグッズにも八戸煎餅を出されていたり、メンバーのお土産に購入された話をされていましたね。
八戸煎餅といえば
とあります。江戸時代以前、八戸煎餅は小麦粉ではなく蕎麦粉を使用していたようです。煎餅って小麦粉や米粉だけではなかったんですね。
さらにさらに
煎餅といっても、蒸したり、型ではさんで焼いたり、作り方もさまざま。いやあ、驚きました。
さらに驚いたことに中国文学者の青木正児が紹介する「陶然亭 」の目録には蝦夷巻煎餅というものがあります。
鮭の燻製をえび煎餅で巻く! これはおいしそう。うう、ビールプリーズ。
そうそう、煎餅といっても海老煎餅はまた違いますよね。
海老煎餅については法政大学出版局の『海老』に詳しく書いてありました。
海老煎餅って小麦粉でも米粉でもなく、澱粉が主流なんですよね。さらに海老煎餅のなかにも種類がある。
そして、「えびせん」で忘れちゃいけないのが坂角のゆかりです。
えびはんぺいが煎餅となったなら、長崎名物ハトシ(えびのすり身をパンに挟んで揚げたもの)も煎餅の仲間に入れたいところです。
そうそう、内澤さんには弟さんがいらして、アメリカ在住と以前おっしゃっていましたね。アメリカのチャイニーズレストランで出されるフォーチュンクッキー。あれ、実は日本の辻占煎餅がはじまりのようです。
かっぱえびせんにはじまり、フォーチュンクッキーまで広がった煎餅トークという名の独り言。
いやあ、煎餅の二文字にここまでの広がりがあったとは。
広がり、で思い出すのはアルバム『One and Zero 』のタイトルについての内澤さんのお言葉です。
煎餅と同じく、1と0についてもこんなに考えたことがありませんでした。
かっぱえびんせんは煎餅じゃねえなんて言っていた自分にナックルパンチをおみまいしたい気分ですが、痛いのは嫌なのでandropのアルバム『One and Zero 』に収録されている『End roll』を拝聴しなくてはいけないので今回はここらへんにしておきましょう。
ではまた。