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唐突に、日常の風景が愛おしくなった~ブラッシュアップライフ~

 調べたらずいぶん前からけっこう観ていた。バカリズム脚本のドラマ。
 夫も好きだからいっしょに観ているとそうなったのだろうか。シチュエーションコメディや映画も楽しんでいた。

 中でも「架空OL日記」の脚本に、なんとなくバカリズムらしさを勝手に感じている。

 存分に日常の空気感をかもし出す。特別な事件とか感動的な展開、衝撃がなくたって日常ってこんなもんだ。少し退屈になることもある。特に大画面で観ると。でもなんだろう。このテンポは他で見られない。皆の個性やあるあるならぬ「ありそうありそう」風景から目が離れなくなる。

 今話題の「ブラッシュアップライフ」も最初はそんな雰囲気だった。
 なんとなく観始めたらもう夢中。

 安藤サクラ演じる近藤麻美ちゃんが、人生を何度もやり直すループもの。
 何故何周もするのかと言えば、次の生まれ変わりがオオアリクイだのサバだの「白い場所」で言われるからだ。それがイヤならまた一度通った自分の人生を最初から始め、次人間に生まれ変わりたくばループする人生にて、もっと徳を積めとのことなのだ。

*ネタバレあります

 放送一回目にして、その中で伏線回収。
 前半は「やっぱり架空OL日記みたいなテンポで日常を描くのかな」とぼんやり観ていたら、後半ですでに人生二周目に入る。めっちゃ伏線回収してくる。すごく当たり前にやり過ごしていた「ありそう」風景だった中からあれもこれも回収するので楽しくなってくる。きっとすぐに観返した人もいただろう。

 人生3周目くらいまではそれでものんびりした感じで笑いながら観ていた。
 平凡な日常の中に「おおなるほど。あれが!」と発見があったり伏線回収だったりを楽しんでいたら。

 4周目で「わあああ!」とビックリさせられる。

 自分の知らないうちに友達の一人が何周もしているとわかるのだ。
 実はその彼女は5周目で、1周目では麻美ちゃんや麻美ちゃんの仲良し2人とも親しかったとのことだった。
 胸がつぶれそう。だって何周も何周も、彼女は元の3人の仲良したちと仲良くなれないし、でもそれは皆を救うために選ぶしかない孤独。全部合わせると100年以上、ずっと頑張っているんだもの。
 私なら「まいっか。オオアリクイでも」って思いそうなのにさ。あっ彼女はアリって言われたらしいけど。

 で、麻美ちゃんの5周目。
 次は人間に生まれ変われる。と、例の白い場所で言われる。
 人間になれるということは、次の人生1周目が始まるということ。つまり今までの記憶はなくなり、それまでの出来事はただ事実として残る。
 「やっと人間!」だけどやり残したことがあると確信した麻美ちゃん。もう一周したいと言うと、これで最後だと言われる。人によって何周できるかはちがって、最後だけ教えてくれるそうだ。
 あれはなんでかとかあそこはどうなっているのとか、疑問点とか矛盾点とか考え始めるとキリなく出てくるのだけど、こういうのって考えない方が断然楽しめるからね。考えない。タイムトラベルやループものは楽しむに限るからね!

 そして麻美ちゃんことあーちんは、覚悟を決めて自分の5周目を始める。

「最後は人間に生まれ変わるためでも、徳を積むためでもない人生。自分の人生を精一杯歩むのだ」
「来世ではなく今世をより良いものにするため」

 うわぁ……。
 そんなセリフを聞くと、とたんに自分の人生に愛を感じて胸いっぱいになる。日常も、周りの人も、全部が愛おしい。
 本来なら人生、一回きりだもの。
 やり直しなんかない。
 そうやって精一杯歩むんだよなあ。

 あーちんはさらに続ける。人に助言するのも「徳のためではなく、純粋な親切心。ただ幸せになってほしいから」。
 
 一人ひとりの関係性だって、互いにこうあると良いよね。泣きそうになっていると、そこでバカリズムらしく笑わせてくる。
 
 そして次の予告。

 胸アツ展開! 激アツだ!!

 どうしても書いておきたいのが皆の演技。
 安藤サクラの演技に私は今回、圧倒されている。何でもないような自然で淡々とした日常感以上に、4周目で人生の、命の重たさを受け止めている喫茶店、カラオケボックス、お葬式の後の道端での彼女。それぞれの表情。この、空気感も含めた重たさを背負って表現できるのが彼女なのか。
 三人の子役たちも素晴らしい。大きすぎない演技とちょっと考えている表情。指導が良いのかしらん。

 他に「架空OL日記」の面々も出てくる楽しみとか、細かな発見があちこちにちりばめてある。
 
 とりあえず今晩、ラス前らしい。どうかしんどい思いしませんように。めっちゃ楽しみ! 


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かわせみ かせみ
読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。