自分はどんな子供だったか、どんな親かを振り返り、励まされる二作
子供の頃、自分はこの家族に要らないのではと思ったことが何度もある。
自分の子供にはそんな風に思ってほしくない。
それでも親は親の人生を歩まないと子供には負担。
その加減が難しいものだなあと、手が離れたようでまだ離せない息子と接していて思う。
息子の特性がある子については「大学生になったから」と手を離して遠くから見守るやり方ではいけないのだと、最近知った。ちょっとショックだった。誰もが「自信を持てるようになると、うまくやっていける」ってわけではないようだ。
こういう葛藤っていつまで続くのかなと思っていたけど、親ってこういう葛藤を抱え続けるものなのかもしれない。この葛藤とどんな風に付き合っていけば良いのか。
苦しむ日々の中で観た二作。
「パリ・ブレスト」と「リンダはチキンがたべたい」。
※内容に少し触れる程度のネタバレがあります
「パリ・ブレスト」を観終わり、「悲しい家庭でつらすぎた」と夫が言う。
幼い頃に関しては特に、親からの愛を信じたいだろうから、そうではない家庭を大人になってから目にするのは胸がいたむ。
いや観終わってしまうと、元気の出る温かい映画なのだけどね。
パティシェの世界コンテストで若くして優勝したアラブ系の男の子の実話。
そりゃあもう美味しそうなスイーツが次々と大画面に出てくる。お昼ちょっと前の時間だったもので。
うわあ。とろとろのチョコ。
「グオー!」
歯ごたえ伝わるぅ。
「グルルルル!」
お腹に野獣でも飼ってそうな重低音を、何度も鳴らしてしまった。
とにかく幼いヤジッドの家庭はつらかった。母親は育児放棄でアルコール中毒。父親はいない。
一定の年齢になるまで里親のもとに通い、そこで愛情を知る。
里親のところにいる兄(実際は兄「たち」)がパティシエで、ヤジッドにお菓子のつくり方などを教えてくれる。この兄との交流も心温まる。
過酷な成育歴だけど、必ず誰かが手を差し伸べてくれる。そんな救いを、ちゃんと感じられる彼だから良かったのかもしれない。
それでも実の母親の愛情を欲する思いからは逃れられないものなのだなあと思ったし、育ての家族の愛情の深さも感じた。どんな彼でも、受け止める親の姿勢には学ぶところがあると、今の私は痛切に思う。
「リンダはチキンがたべたい」もそう。
お父さんが亡くなって、団地で貧しく暮らすリンダ。お母さんも忙しいし疲れている。それでもリンダの願いを叶えるべく、大奮闘する。
母娘が友達みたいに見えるのは、母親があまりに自然体でいるから。だけどやっぱりお母さんなんだよな。
リンダだってワガママってわかっているけど、お母さんがそこまでしてくれるかどうか、きっと試している部分もあるのだろう。
アニメーションで、独特の動きだけでなく、色もあたたか。みんなの持ち物が木にひっかかっている所なんて、まるで絵本のよう。
それぞれの人物が色分けされているのも個性の発するオーラみたいだし、色合いがとってもかわいかった。
リンダの赤ちゃんの頃が特に可愛くて。どの国の赤ちゃんも似たような声を発し、どうにか親にかまってもらうんだなと目を細める。映画が始まってすぐだったのに、息子の赤ちゃん時代を思い出して胸がいっぱいになってしまった。
自分の子供はずっとかわいいけれど、赤ちゃん時代は中でも特別な時期。あの頃の私はその愛らしさをもっと噛みしめられたら良かったけれど、必死でそれどころではなかった。それどころではなかったのに、あの愛らしさは記憶の中に刻まれているんだなあ。
ゴールデンウィークに続けて観た二本のフランス映画は、自分の子育てを振り返らされた。
私は冷たくなかったか。突き放してきた部分はなかったか。いや想いが押しつけがましくなかったか。負担ではなかったか。
考えをめぐらせただけでも、観て良かったと思った。