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【書評】過酷な運命に翻弄される女性の一生を描く〜『銀花の蔵』(遠田潤子)

翻弄される直木賞候補作に選ばれた、遠田潤子さんの『銀花の蔵』を読みました。ずっしりとした読み応えがあり、直木賞候補になるだけの素晴らしい作品でした。遠田潤子さんは、こちらもかなりの傑作でした。

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1、あらすじ・内容

時は1968年。主人公は山尾銀花という少女。絵描きの父・尚孝と料理上手の母・美乃里と3人で暮らしていました。

ある日、銀花は、奈良にある尚孝の実家へ一家揃って移り住むことを聞かされます。尚孝の生家は、江戸時代から続く由緒ある醤油蔵でした。

尚孝は醤油蔵の新しい当主となり、慣れない醤油造りに奮闘します。銀花は友達もでき、新しい生活にも慣れ、楽しい日々を送ります。

しかし、母の美乃里が「ある問題」を起こしたことをきっかけに、銀花の周囲は一変。その「問題」は、引っ越してくる前から銀花や父を悩ませていたことでした。

これを皮切りに、山尾一家は次々と苦難に襲われます。銀花も運命に翻弄されますが、懸命に、必死に生きていきます。

時代は流れ、父も母もこの世を去り、やがて銀花が山尾家の当主となります。

そして、一家に伝わっており、彼らの人生を狂わせた「座敷童」の謎が明かされる日がやってきました──。

2、私の感想

『雪の鉄樹』の時もそうでしたが、主人公・銀花の境遇が想像を絶します。波乱万丈すぎて絶句します。

あまりの過酷っぷりに、「この子は果たしてこの後報われるのかな……」と心配しながらページをめくっていきました。

しかしそこはさすが遠田潤子さん。見事な大団円がやってきます。これはもう立派な大河小説です。NHKで10話くらい連続でドラマ化してほしいものです。

作中で、「過去は消えない。罪は消えない」というような台詞が出てきます。「罪や過去を背負いながらどう生きていくか。どうすれば赦しを得られるか」ということが、遠田さんの小説のテーマなのかな、と勝手に思いました。これも『雪の鉄樹』で描かれていたことでした。

今回は直木賞受賞はならず、残念でしたが、きっとそのうち何らかの形で世に広まる作家さんだと思います。

3、こんな人にオススメ

・お醤油が好きな人
醤油蔵が舞台なので、醤油づくりの詳細についてもよくわかります。

・直木賞に興味がある人
選評を見ながら、候補作を読み比べてみると面白いかもしれません。

・大河小説が好きな人
時代の奔流というか、スケールの大きさを感じさせる小説です。

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