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【書評】死生観を問う医療ドラマ〜『最後の医者は桜を見上げて君を想う』(二宮敦人)
これは「死生観」を問う感動作です。『最後の医者は桜を見上げて君を想う』。作者は二宮敦人さん。
本当は誰もが考えなければならない、でも目を背けがちな「死」について考えるきっかけになると思います。
1、あらすじ・内容
主人公は、武蔵野七十字病院に勤務する二人の若き医師。
一人は、副院長にして天才的な外科医の福原雅和。「絶対に諦めない」が信条で、最後まで患者の「生」を諦めず、奇跡を起こそうと戦い続けます。
もう一人が「死」を肯定する皮膚科医の桐子修司。あだ名が「死神」。治る見込みのない患者に対して、諦めて死を受け入れるように淡々と告げるため、「死神」というあだ名で呼ばれています。
死生観が正反対のこの二人は、常に対立していました。
「死」を受け入れ、残りの日々を大切に生きるべきか。
奇跡を信じ、最後まで「生」を諦めずに戦うべきか。
難病にかかった三人の患者のストーリーを通して、桐子と福原が読者に「死」「生」「命」を問いかけます──。
2、私の感想
「死」という、誰もがいつか必ず向き合わなければいけない問題を、厳しく、でも優しく考えさせてくれる小説です。
3人の患者さんの、死を前にした苦しみと葛藤がもう……。泣けてしまいます。読んでいられないくらいです。ボロボロ泣きました。
3人の患者さんの最後の一人は、桐子・福原と同じ病院で働く医師で、学生時代からの親友です。
この親友の死を通して、桐子と福原も医師としての「答え」をそれぞれ見つけていきます。感動的です。
私は、身内が大病にかかった経験があり、その時に「生きること、死ぬこと」についてはさんざん考えさせられました。
そのため、「自分がもし余命を宣告されたらどうするか」「いつ死んでもいいように、日々を精一杯生きる」ということを常に考えるようにしています(忘れることもありますが……)。
他の人にこういうことを言うと変な顔をされることもあるのですが、死に方を考えることは人間の必須課題だと思います。
だから私は診てもらうとしたら桐子の方がいいな、なんて考えながら読んでいました。
それにしても、難病を告知するお医者さんもつらいだろうなあ、ということも読んでいて感じました。
そのあたりの病気や病院の描写がとてもリアルで、作者さんはお医者さんなのかなと思いましたが、そうではないようです。しっかり取材をしているのでしょう。
往年の医療名ドラマ『振り返れば奴がいる』を連想しました。
3、こんな人にオススメ
・医療従事職を目指す人
難病にかかった患者さんにどう寄り添えばいいか、勉強になるのではないかと。
・泣きたい人
これは泣けると思います……。泣けなかった方は私に苦情を。
・「死」について考えたことがない人
必ずや「死」について考えるきっかけになり、そして「生」についても考えることになると思います。
なお、続編も出ています。