【書評】今さえ良ければいい人たち〜『サル化する世界』(内田樹)
内田樹さんは教育現場でもよく読まれていて、ファンが多いです。私もその一人。『サル化する世界』です。かなり売れているようです。
1、内容・あらすじ
表題の「サル化する世界」をはじめとした、内田樹さんのエッセイ集です。色んな媒体に発表したものがまとめられており、話題は多岐にわたります。
ポピュリズム・嫌中嫌韓・トランプ政権・司馬史観・英語教育・AI・貧困・人口減少・結婚・雇用……。
巻末には堤未果さんとの対談も収録されており、グローバル市場原理主義について警鐘を鳴らしています。
2、私の感想
内田さんは教育現場でも人気が高いのですが、それは我々がもやもやと考えていることを見事に言語化してくれるからだと思います。
そして要所要所で適切すぎる例を出してくるので、話が非常にわかりやすいです。
内田さんの本を読むと、いつも線を引きすぎて真っ赤になってしまいます。
内田さんが言う「サル化」とは、「朝三暮四」のサルのように「今さえ良ければ、自分が良ければあとのことはどうでもいい」と思い込む人たちが政治・経済・メディアで多数派を占める世界、のことです。
「サル化する世界」のエッセイ自体は短いのですが、その後本書の中で何度も「サル化している人たち」が登場してきます。
最もわかりやすかったのは「また原発事故が起きて日本列島が居住不能になっても、そのときは日本を出て海外で暮らせばいいと思っている人たち」の例です。
仕事柄、「AI時代の教育論」の章を読んで深く深くうなずきました。特に、今の英語教育に対する指摘は鋭すぎます。文科省の人たちはこれに有効な反論ができるのかな……。クラスの学力を下げようとした小学生?中学生?の例も、内田さんの主張を裏付けるようでとても怖いです。
3、こんな人にオススメ
・文科省の方たち
文科省の人はnoteなんか見ないのかもしれませんが……。ぜひ感想を聞いてみたいです。
・同業者
読めば大きくうなずかれることと思います。特に国語科・英語科。
・何だか世の中がおかしいと思っている人
おかしさの原因がわかるかもしれません。世の中の見方が変わります。