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書評通信

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紹介した本の記事をまとめました。
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2020年5月の記事一覧

【書評】ウイルスで滅びた人類とその再興~『復活の日』(小松左京)

この本も、今の情勢でなければきっと読まなかったと思います。ウイルスによる人類滅亡を描いた、小松左京さんの『復活の日』。 ※書評一覧の目次はこちら 1、内容・あらすじ舞台は196X年。イギリス陸軍細菌戦研究所では、宇宙空間から採取した微生物を元にした細菌兵器=猛毒の新型ウイルス「MM-88」を研究していました。 しかし、良心の呵責に耐えかねた研究所の教授がこの「MM-88」を持ち出しますが、スパイに騙され、横取りされてしまいます。 さらに不幸な偶然が重なり、スパイの乗っ

【書評】「こち亀」40年間継続の秘訣~『秋本治の仕事術』(秋本治)

サブタイトルが「こち亀作者が40年間休まず週刊連載を続けられた理由」です。ラジオに出演して、ご自身の仕事ぶりを語っていたことがあり、その時から興味を持っていました。 ※書評一覧の目次はこちら 1、内容・あらすじ週刊少年ジャンプで『こちら葛飾区亀有公園前派出所』、通称『こち亀』を40年間連載し続けた秋本治さん。 一度の休載もなく、原稿を落とした(締切に間に合わなかった)ことも一度もないそうです。 秋本さんはどんなタイムスケジュールで働き、どうやって仕事をマネジメントして

【書評】果てしない感染症との戦い〜『感染症の世界史』(石弘之)

この本も、今の状況でなければ読む機会がなかったかもしれません。とても勉強になりました。石弘之さんの『感染症の世界史』。 ※書評一覧の目次はこちら 1、あらすじ・内容人類の歴史は、そのまま感染症との戦いの歴史でした。その戦いは未だに続いており、近年ではエボラ出血熱やデング熱、SARS、MARS、そして現在は新型コロナウイルスが猛威をふるっています。 人類がいくら感染症を駆逐したかのように見えても、微生物たちは次々と突然変異を繰り返して進化し、新たな脅威となって立ちはだかり

【書評】苦しすぎる貧困女子小説〜『神さまを待っている』(畑野智美)

貧困問題を調べている時に見つけた小説で、ずっと気になっていました。ようやく読むことができました。畑野智美さんの『神さまを待っている』。 ※書評一覧の目次はこちら 1、内容・あらすじ主人公は、文房具メーカーで派遣社員として働く26歳の水越愛。 愛は、派遣期間の終了とともに正社員になるはずでしたが、会社の業績悪化で正社員の話がなくなり、職自体を失ってしまいます。 失業保険を受けながら求職活動をしてもうまくいかず、貯金が底を尽きます。そして家賃が払えなくなり、アパートを解約

【書評】コロナ後の世界はどうあるべきか〜『コロナ時代の僕ら』(パオロ・ジョルダーノ)

これは、とあるラジオで紹介されていた本です。この情勢下、「今こそ読むべき本」「今しか読まないであろう本」をなるべく優先的に読むようにしているのですが、この本もまさにそうでした。『コロナ時代の僕ら』というエッセイ集です。著者はイタリアの小説家、パオロ・ジョルダーノさん。 ※書評一覧の目次はこちら 1、内容・あらすじイタリアで数々の文学賞を受賞した小説家、パオロ・ジョルダーノさん。 「この災いに立ち向かうために、僕らは何をするべきだったのだろう」 「何をしてはいけなかった

【書評】壮絶だけど科学的な介護体験記〜『母さん、ごめん。50代独身男の介護奮闘記』(松浦晋也)

書店で『画期的な介護ノンフィクション』という紹介をされていて、気になっていた本です。これは読んでよかったです……。『母さん、ごめん。50代独身男の介護奮闘記』。著者は松浦晋也さん。 ※書評一覧の目次はこちら 1、内容・あらすじ著者は科学ジャーナリストの松浦晋也さん。 松浦さんは50代で独身。実家で母親と同居しながら、気ままな独身生活がこの先も続くと信じていました。 ところが、活動的で人生を楽しんでいたはずの母親が認知症に。発覚したきっかけは、「預金通帳が見つからない」

【書評】愛する人を見送るために──『ほどなく、お別れです』(長月天音)

この作品は、簡単にいうと「お葬式小説」ということになりますが、ものすごく温かく、心に寄り添ってくれるような素敵な小説でした。長月天音さん『ほどなく、お別れです』とその続編『ほどなく、お別れです それぞれの灯火』。 ※書評一覧の目次はこちらです 1、内容・あらすじ主人公は、大学生4年生の清水美空。 美空は、東京スカイツリーの近くにある葬儀場「坂東会館」でアルバイトをしています。 坂東会館には、漆原という男性スタッフがいました。彼が担当する葬儀は「訳あり」のものばかり。若

【書評】英語を話せない全ての日本人へ〜『もしも高校四年生があったら、英語を話せるようになるか』

これは授業でやったビブリオバトルで、生徒が紹介してくれた本です。プレゼンがとても上手だったのと、その内容に興味を持って読んでみました。こういう本との出会い方もいいものです。 ※書評一覧の目次はこちら 1、内容・あらすじ主人公は中学校の英語教師・桜木真穂。英語の「読み書き」には絶対の自信がありますが、「話す」ことについては全く自信がありません。 今まで、英会話スクール、オンライン英会話、ハウツー本など、英語が話せるようになるため、数々の方法を試してきましたが、全て効果がな

【書評】一番罪深いのは誰なのか?『犯罪者』(太田愛)

前から気になっていた作家さんで、Kindleのセールで安くなっていた時にこの本を買っておきました。自分の先見の明に感謝したいです。めちゃくちゃに面白かったです。太田愛さんの『犯罪者』です。 ※書評一覧の目次はこちら 1、内容・あらすじ19歳の繁藤修司は、恋人と待ち合わせをしていた白昼の駅前広場で、通り魔殺人事件に遭遇してしまいます。4人が刺殺された中で、修司はただ一人助かります。 九死に一生を得た修司でしたが、搬送先の病院で謎の男から「逃げろ。あと10日生き延びれば助か