書評#6 寺山修司『書を捨てよ、町へ出よう』
書を捨てる、という宣言にも、書が必要とされている。
みたいな一種の矛盾は、あっさりおいて行かれ
「私」の衝動は、遠く何処かの「町」を目指すようになる。
町は、「私」を放っておかない。
町が、「私」と交わる。
町で、「私」は、新たな「私」を孕む。
読むほどに実験されてくような感覚が面白い。
捨てろとけしかけられる情動。行動。
そしてそれら総てが、この手の「書」に端を発していることに気づいた時
袋小路の感覚が、また、面白い。
しばらく、同じ感銘は受けていないと思う。
なぜかいつも、焦りに似た読後感がある。
それが、「書」を捨てる始まりなのか
それとも「書」を捨てられない快感の証明なのか
幾度でも、目を通す毎に、新しい「欲」を感じてしまう作家。
彼の死ほど、惜しいものも滅多にないと思う。
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…みたいなことを年中考えていた20代前半の自分がちょっと怖い。
-★★★★☆
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