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大河「光る君へ」(40)君を置きて

 季節外れの30度!から急転直下の秋。体調崩さないよう注意しましょうね。ガテン仕事ももう少し続くの巻(サロンパスペター)。
※「源氏物語を読みたい80代母」のための企画です。最終回までこの形式で続ける所存。思いっきりネタバレ全開なのでご注意くださいまし。
お喋り役の平安女房ズは以下:
右近(右)、侍従(侍)、王命婦(王)、少納言(少)

侍「ねえ右近ちゃん……」
右「なあに侍従ちゃん……」
侍「まさかの二週連続顔パッツパツなアタシたちじゃん……」
右「いやもうアレは反則よ。此の世で一番白の似合う一条帝が、徐々に弱っていって最期は消え入るように……(鼻ズビー)」
少「まさに光そのもののような帝でしたものね……彰子さまの悲痛な泣き声には胸を打たれましたわ」
王「あの辞世の歌、末尾がどうなっているのかは御堂関白記(道長)と権記(行成)で違っているらしいわね。だから途中で切れた形になってた。芸が細かいわ今大河」
露の身の 草(風)の宿りに 君をおきて 塵を出でぬること「をこそ思へ」/「ぞ悲しき」(前者は御堂関白記、後者は権記。なお大河では「草の宿り」ではなく「風の宿り」になってた)
侍「さすが王命婦さん冷静(涙ダバー)」
王「いやいや実のところ、彰子さまが道長くんを叱り飛ばしたシーンで既に泣いてたのよ私。あのシャイな中宮さまがこんなに熱く、お気持ちをハッキリ言葉にされて……!なんて誇り高き素敵な女性に成長なされたのかしら……!って古参の女房的な気持ち?(涙こらえつつ)」
少「わかりますわ、わかります……強くなられましたよね。今まで懸命に努力されて、それを帝にもわかっていただけて(涙ポロリ)」
右「夫婦としてさあこれからってところだったのにね。まったく、聞いてるか道長ア!罪を犯したら必ず報いが、ってお前が言うなっちゅうの!」
侍「右近ちゃん急に矛先が道長くんにイ!」
王「冒頭シーンのアレは明らかに敦康親王さまへのけん制よね。どの口でそれを、と思うのはあの場じゃまひろちゃんだけだもの。にしても藤壺宮さまが光源氏を愛していたのかどうか、って中々なお題だったわね。のっけから興味深く拝見したわ」
侍「エッ!!アタシはメッチャラブラブ♡だと思ってたけど?!お歌のやりとり、倒れそうなくらい情熱の嵐!だったじゃん!」
右「密通の時のヒカル王子の歌が
見てもまた あう夜まれなる 夢のうちに やがてまぎるる わが身ともがな
(こうして目の前にいても次にお逢いする夜はいつになるやら……夢のようだ。我とわが身をこの夢のうちに紛らわせてしまいたい)

藤壺宮さまの返しが
世がたりに 人や伝えん たぐいなく うき身を醒めぬ 夢になしても
(世の語り草となりましょう、この上なく辛い我が身を醒めることのない夢と成しても)

……なるほど、今考えてみればすんごいボカしてるわ。二つ揃わないとほぼ意味不明ね」
少「私は……愛しておられたと思いますわ。藤壺宮さまは決してご自分から逢いたいとは仰らなかったし、お文のお返事も殆どなさらなかったけれど……ヒカルさまが青海波を舞われた時のご様子からして、必死にお気持ちを抑えておられた……とお見受けいたしました」
侍「ダヨネダヨネ!!!王子への愛がぜーーんぜんないんならさー、あそこまで罪悪感持つこともない!と思うんだよねアタシは。相思相愛説に一票おー!」
右「あと平安的には、お子が出来るくらいの宿縁があるって言い方もできそう……あーでも三宮ちゃんは柏木くんのこと1ミリも愛してなかったっけ。ヤダ案外現実的だわ紫式部パイセン。わかんなくなってきた。王命婦さん、どうなの?貴女ならわかるはずよね、腹心の女房だったんだから」
王「うふふ、どうかしらね?」
侍「王命婦さんまでまひろちゃん化して答えてくれなーい!」
少「ご懐妊以降は一層ガードが固くなられましたね。桐壺院が亡くなられて、政治的なお立場が不穏になってからはさらに。塗籠事件※はその中で起きた。ただ……藤壺宮さまは、ヒカルさまの手引きをした王命婦さんをお傍から離しはしなかった。出家も共にされましたものね。それが答えかと存じますわ」
王「温かい解釈ありがとう少納言さん。でもね、三宮ちゃんも柏木くんを手引きした女房サン辞めさせてないし、出家も一緒にしてたのよね多分」
右「まあ三宮ちゃんはねー、筋金入りのポヤヤンちゃんだし、そもそも藤壺宮さまと同レベルの罪悪感があったとも思えない。王子に怒られるのが嫌だっただけで」
侍「エーもういいじゃーんヒカル王子と藤壺宮さまは相思相愛ラブラブってことで!!!物語はねー読む人が読みたいように読めばイイの!てかさー右近ちゃん、なんか最後の方で直秀くん出てきたじゃん!ヨカッタネ!」
右「直秀くんじゃないわよアレは双寿丸!」
少「いつかどこかで見たような風景と展開でしたわね……辛い回でしたけど最後に和みましたわ」
王「名実ともに世代交代ってことね。来週からも楽しみ!」
右「(結局答えないのね王命婦さんてば)」
少「(それが『源氏物語』ですのよ)」
※塗籠事件:体調不良のため三条宮に里下がりしていた藤壺宮の下に光源氏が忍んで来るも、藤壺宮は完全拒否。光源氏は側近の女房達によって塗籠に押し込められ、思いを遂げられないまま帰る。(「ひかるのきみ 賢木 六」参照のこと)

 気づけばもう十月も後半。この大河もあと二か月を切ってしまってるんですよ?ひいいい。ロスに耐えきれるだろうか私……。
 そういった現実からは逃避しつつ、さて今回も盛りだくさん。冒頭の「藤裏葉」読み聞かせからの、女房ズも盛り上がった談義、罪が云々の道長のセリフ。あの後、まひろは「柏木」巻の冒頭を書いています。罪悪感に圧し潰され病みついた柏木が、誰しも千年も生きられるわけではない、ならば少しでも人に惜しまれるうちに……と、一直線に死へと傾いてしまう場面。いやーエグイ構成だわ。さすが人の心のない大河(褒めてます)。
 一条帝の崩御にまつわる色々もみっちりでしたね。道険しき恋にこそ燃えるのですと笑っていた赤染衛門の夫・大江匡衡おおえのまさひらが占いで引き当てた「崩御の卦」。驚くべきことにこの卦が出たことも、一条帝が知ってしまうこともどうやら史実らしい。既に帝は重病でしたから、後から取ってつけた話の可能性もありますし、占いの結果と現実の一致は偶然なのか・作為があるのかもわかりません。ただこういう話が記録として残された、それだけは紛れもない事実。呪詛だの毒殺だのという疑いを払拭するための「占い」だったかな、なんて埒もない考えが頭をよぎります。
 そしてあの辞世の歌について、「君」は定子を指すのではないかという説もあるようです。お産で亡くなるという罪を負った(!)ため成仏できない定子に対し、生前に出家した帝は仏と成る。よって「君を置きて」の君は定子であるということらしいですが、うーん。こうして映像で見せられるとやはり彰子以外には考えられない。定子は成仏の有無にかかわらずこの世ならぬ世界にはいるわけで、「置きて」という言い方はしないんじゃないかな。目の前にいる彰子に対してのお歌だと思いますし、そうであってほしい!
 この大河始まる前は、毎回の「紀行」果たしてネタが続くのか?!などと要らない心配をしていましたが、本当にまったく余計なお世話の大間違いトントンチキでした。当たり前ですが形は変われどもその場所がなくなるわけではない。一条天皇がたびたび行幸されたという松尾大社、龍安寺がかつて一条の父・円融院の御所で圓融寺があった場所、ということも初めて知りました。聖地巡礼し放題じゃないスかこれ。平安を、京都を舐めてましたすみません。
 さあ来週、というか今週金曜日からはいよいよ「源氏物語アカデミー」が始まります!またもや更新が遅れることとなりそうですがご了承くださいまし。アカデミーのレポもやる所存(と自分を追い込む)。あと次回の「光る君へ」は選挙放送のため早い時間らしいですね。注意しましょう(自分もだよ!)。私は実家で観ますけどねフフフフ。
 ではでは、また来週♪
<つづく>

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かわこ
「文字として何かを残していくこと」の意味を考えつつ日々書いています。