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大河「光る君へ」(4)五節の舞姫

※「源氏物語を読みたい80代母」のための企画です。最終回までこの形式で続ける所存。思いっきりネタバレ全開なのでご注意くださいまし。
お喋り役の平安女房ズは以下:
右近(右)、侍従(侍)、王命婦(王)、少納言(少)

侍「ねえねえ右近ちゃん!」
右「なあに侍従ちゃん」
侍「何って、五節の舞姫に決まってるじゃーん!もうもうヤバすぎるくらい可愛かったよねまひろちゃん!!私は男受け悪いッスからみたいに言ってたけどなーにをすっとぼけたことを!ってかんじよね。アタシの中じゃ断トツナンバーワンよ!ああアタシのまひろちゃんがあの、足で扇ビローンの花山帝に見初められたらどうしよう……歴史が変わっちゃううう」
右「侍従ちゃんったら落ち着いて。全くこれだから五節舞姫オタクは(溜息)」
王「あの帝なら新しく来た忯子よしこさまに夢中だから心配ないわよ」
侍「王命婦さんいらっしゃーい♪あっそうそう忯子さまといえば、なんで手首を赤い布で縛られちゃったりしたのー?アレって壁代や几帳とかについてる布筋のすじってヤツなんだって?Twitter(x)で見た。おまじない?」
右「侍従ちゃん……」
王「えーと……いきなりコメントに困るわね(笑)深夜帯ならともかく大河ですものね」
少「帝が如何に忯子さまをお気に入られたか、今後のご寵愛が如何に深いものかの表現ですわ」
右「(助かった)少納言さん、いらっしゃい!」
王「さすがね。色んな意味できれいにまとめてくれてありがとう」
侍「そっかーなーるほど!そう聞くとなんかエロいねあの場面!」
右「(何も感じてなかったんかい)そ、そうねアハハハ」
王「それはともかく、ストーリーが大きく動いたわね今回。円融から花山への譲位で兼家右大臣の思惑通りに進んだはずが、円融帝に毒を盛ったと疑われた詮子さまがキレて三兄弟全員が陰謀を知るところになるわ、扇ビローンのうつけ者だったはずの新帝が案外やり手で次々改革に着手するわ(今回もひと暴れしたけどね)、新帝ご寵愛の忯子さまは政敵の娘だわ、とまだまだ一波乱ありそう」
少「詮子さまはお気の毒でしたわね。いくら兼家さまの娘御だからといって、一方的に決めつけられて怪我までさせられた挙句
『人の如く血など流すでない、鬼めが!』
 とまで……震えましたわ」
右「酷すぎだけど、血を穢れと見なす平安時代ならではのセリフよね。単に汚らわしい!っていうよりインパクト強い」
侍「なんかさー右大臣家ってギスギスしてるよねー。源氏物語でもそうだったじゃん?左大臣家はなんかおっとりのんびり平和ーな感じなのに。あっそういやまひろちゃん、今回も空気読めない/読まないパワーすごかったね!」
少「『絵合』巻の物語対決を思い出しましたわ。あちらではかぐや姫を『世の濁りに汚れず』とかなりオブラートに包んで評していらしたけれど、まひろさん直球でしたわね」
右「かぐや姫はどうしてあんな無理難題を仰ったのかしら・皆お嫌いだったのかしら・帝までも?っていう典型的な女子トークからの『身分の高低何ほどのものか~』発言はまたまたヒイイってなったわ。そして倫子さまのパーフェクトお執り成し再び」
王「強いわあの方(確信)。あれこそが紛れもない平安女子のトップオブトップね。まひろちゃん完敗だけど負けたと一切気取らせない、うまくフォローされたという自覚すら持たせない。不穏な雰囲気を一撃で霧散、あくまでふんわりゆるふわな笑顔で。相当に高度なテクよ。恐ろしい子……!」
少「真の天上人はマウント取る必要ございませんもの……本物ですわ」
侍「あっ今気づいた!五節の舞姫ちゃんてさ、帝の目の前で何度か踊るじゃない?本番の後はそのまま内裏に残るパターンもあったわけで。それをまひろちゃんに代わって貰ったってことは
『ウチの娘(倫子)は新帝に入内させる気1ミリもありませーん』
と表明したに等しいってコトじゃない?左大臣家スパイの目的達成じゃん?」
右「あーそれもそうね。侍従ちゃん冴えてる。舞台で為時父に目配せしてたのもそれかも」
侍「でしょでしょ(エッヘン)!えーじゃあ倫子さまってどんな人と結婚するんだろ?きっと非の打ちどころのないすっごいイケメンだよねヒカル王子みたいな!」
右「えっ」
王「えっ」
少「えっ……」
侍「まひろちゃんと道長くんの恋の行方も気になるよねー!仇の弟と知れちゃった後の展開どうなるのかなー。たーのしみー♪」
右「じ、侍従ちゃんあのね」
王「しっ、右近ちゃん……今は言わない方が」
少「(涙目)」

 はい、早くも第四回めとなりました。いやー五節の舞姫美しかったですね。文献や図絵などで想像するだけとは違い、映像として目と耳に入るその迫力はやはりすごい。特にあの真上からの映像!舞姫たちの位置と観客の並び、男性の服の色がきっちり身分ごとに分かれているのも一目瞭然。舞姫たちの髪飾りも
奈良の薬師寺に所蔵されている国宝・吉祥天女画像(きちじょうてんにょがぞう)の頭に付けられている髪飾りをモチーフとしました。
【をしへて! 佐多芳彦さん ~美しき姫たちが袖を振るう「五節の舞」会場と衣装 編】
 と、拘りまくりです。ちなみに顔の前に垂れている白い糸飾りは「日陰糸ひかげのいと」というそうな。さすがは大河、後々にも文化資産として残せそうなハイクオリティでした。
 実際には紫式部が五節舞姫に出たという記録はなく、父為時の身分からしたら普通は無理なのですが、倫子の代役として源家から出る形で可能にしたのは上手いと思いました。源氏物語中でも、光源氏の娘がまだ幼いため惟光の娘を代わりに出す、というエピソードがあります(「乙女」巻)。
 何よりこの大河ドラマ世界では、藤原三兄弟を一気に観ることのできる機会としてこれ以上のものはない。衝撃を受けながらもなんとか踊り切ったまひろが、他の舞姫たちに一人一人名前を言って確認する場面も圧巻です。いや本当によく練られてるなと毎回感心しきり。
 さて、お互いの素性を知った二人、政治的にも大きな動きがある中でどうなっていくのか。来週も楽しみです。
<つづく>

「文字として何かを残していくこと」の意味を考えつつ日々書いています。