大河「光る君へ」(5)告白
大河五回目の放映明けて月曜朝、母から電話。いや別件でだけど、今回は
「ええーなんやってアレ!!すごいのー!!!」
と語彙力が崩壊してた。前回は政治のアレコレが難しくてついてくの大変!といってたけどすっかりこのドラマの張り巡らせた網に絡めとられたようだ。ふふふふふ。これからますますヤヴァイことになるのよふふふふ(何者)。
※タイトル画像は福井県・大安禅寺。タペストリーと灯りは長田製紙所製作。
※「源氏物語を読みたい80代母」のための企画です。最終回までこの形式で続ける所存。思いっきりネタバレ全開なのでご注意くださいまし。
お喋り役の平安女房ズは以下:
右近(右)、侍従(侍)、王命婦(王)、少納言(少)
侍「ねえ右近ちゃ……アレ?誰もいない?」
王「侍従ちゃん、こっちこっち」
侍「王命婦さん!少納言さんも右近ちゃんも!エッ何やってんすかそんな奥まったところで御簾全下げで灯りもなしで……ってもしかしてアレ?陰謀ごっこ?!」
右「やあね侍従ちゃん、そんなこと口に出さず何気にそっと乗るものよ」
御簾がすっと持ち上がる。
少「ささ侍従さん、此方どうぞ。お茶もお菓子もご用意してありますよ」
侍「わーい!なんか密談ぽくってたーのしー♪」
王「今回は、いや今回もというべきかしら。なかなか陰惨だったわね。自分たちの権益を守るため、帝の子を産ませまいとする呪詛……真の能力者である安倍晴明をも意のままに道具として使う兼家さま。月明りの薄闇の中同調する重鎮たち。冒頭の、寝込んだまひろちゃんへのインチキ祈祷・憑依ショーは前振りで、くっきり対比を成してる。さすがの手練れ脚本よ」
右「あのインチキ坊主、事前にさりげなく母親が亡くなってること聞き出してたもんね。巫女役の女と頷きあったりしちゃってさ。現代でも占い師のよくやる手よ」
少「恐ろしいのは、兼家さま自身がまるで穢れや呪いを恐れていらっしゃらないところですよね……権力さえあればどうにでもなると思っていらっしゃる」
王「後ろ暗い話を散々した後からの、道長くん乱入・道兼殴打、
『(道兼の殺人を知っていて揉み消したとは)父上、まことにございますかッ!』
に答えて曰く、
『お前がそんなに熱き心を持っていたとは!これで我が一族は安泰じゃHAHAHA!』
だものね。並大抵じゃない。あの超絶ワルイ顔、イケオジだけに突き抜けすぎて痺れたわ」
侍「王命婦さんのツボそこなの?!アタシ、断然三郎くん、いや道長くんにシビれたんだけどっ!だってあののんびり・おっとり三男キャラの道長くんがよ?まひろちゃんのために馬飛ばしてさ、次男ぶん殴って父親問い詰めるとか!これで惚れない女いる?!いねえよなぁ!!って感じじゃなーい?」
右「まひろちゃんはその現場みてないっしょ。突然置き去りにされて訳ワカランだし、それ以前に多分色恋考える余裕なし」
少「まひろちゃん不憫でしたわ……ずっとあんな風に罪悪感を抱え続けてたんですね。幼い頃の恐ろしい心の傷……いくら見ないふり、忘れたふりをしていても消えることはありませんもの。子供に戻って泣きじゃくるまひろちゃんの姿、痛ましいやらいとおしいやらですっかり貰い泣きしてしまいました」
侍「わかるー!アタシも号泣した!」
右「でもね、まひろちゃんにとってはそんなに悪いことでもない気がする。今まで抑えてた憎しみや悲しみを、仇の道兼じゃなく道長くんに対してぶちまけて、ある意味開放されたんじゃないのかな。それで為時パパの前でもやっと泣けたのよね」
王「そうね、まひろちゃんは一歩先に進めたのかもしれない。道長くんはこれから地獄への道ね」
少「兼家さま他の陰謀に巻き込まれるか、そうでなくとも目の当たりにするのは確実ですものね……詮子さまの『裏の手』も気になります」
侍「アタシ気づいちゃったかもしれない……もしかして、詮子さまのそれってさあr(モガッ)」
右・王・少「そこから先は次回以降のお楽しみ♡」
母の言う通り、凄い回でしたね。
あのイケオジ陰謀の会は、若いF4(道長・公任・行成・斉信)と明らかに対を成しています。公任の、
「(俺たちがこの先の政治を担うということは)俺たちも互いに争うことになるのだぞ?」
という言葉はまさに両方にとっての予言。共通の目的のために行動している間は結束しているが達成した後は……まさにこの時代の政治の形を表しててお見事というしかない。
まひろの号泣シーン、本当に素晴らしかったですね。完全に十代の娘さんが泣きじゃくってるようにしか見えませんでした。女優さんて凄い。目の前であんな風に泣かれたら、侍従ちゃんじゃないですけど
「惚れない男いる?!いねぇよなぁ!!」
になりますよね。長年胸に抱えてきたすべてを感情も露わに曝け出した、家族でも滅多に見ることのない生身の人間の姿。これはもう一発で持ってかれますね間違いなく、うん。
ただ、まひろは道長の兄・道兼を母の仇として
「一生呪う」
とも言ってしまった。三郎に会いたいという自分の気持ちが母の死を引き起こした、とも。
暗闇の下で明かされたこの残酷すぎる現実に、六年越しの、まだ恋ともいえないようなほのかな思いは無残に踏みにじられ、もう取り返しがつかない。もはや身分違いとかそういう問題でもなく、吐かれた言葉に互いが縛られる結果に。
道長があの場でまひろの手を握るとか抱き寄せるとかいう仕草をしなかったのも、この機微を瞬時に理解したからなのでしょう(いや「帰るのかよ」とは思いましたけどね直秀と同様)。「一発で持ってかれた」心の激流は兄に向かったわけです。
そこからのあの修羅場ですよ。実行犯である道兼より父が激ヤバ、と思い知る道長の表情は圧巻でした。どんなに怒りに震えようが憎悪しようが何ひとつ響かないあの感じ。相手が血のつながった家族であるだけにその無力感、絶望感たるや察するに余りあります。
源氏物語の「夕顔」巻にて描かれた六条の闇に蠢く物の怪、それにより失われたもの、新たに動き出す何か、がこの回のそこかしこに埋まっているような気がします。今後も史実とガッツリ絡めつつ、源氏物語の源流をそこはかとなく匂わせつつ、見えない何かが次々と解き放たれていくのでしょう。
いやーぞくぞくしますね。清少納言の登場も楽しみです。
<つづく>
「文字として何かを残していくこと」の意味を考えつつ日々書いています。