阪急宝塚線の危急存亡/歪んだ栄枯盛衰への処方箋
阪急宝塚沿線が受難の時だ。
阪急電鉄は三大路線からなる。
大阪梅田と神戸三宮を結ぶ阪急神戸線。
大阪梅田と京都河原町を結ぶ阪急京都線。
そして、
大阪梅田と宝塚を結ぶ阪急宝塚線。
阪急創業者・小林一三が最も愛した「阪急宝塚沿線」の経済が受難の時を迎えている。
早速数値で観てみよう。
繁栄している街ランキング2024【阪急沿線版】
「繁栄している街ランキング2024【阪急沿線版】」が今年もついに発表された。
だがなんと、
上位20位の中に阪急宝塚線の駅が一つも顔を見せなかったのだ。
(十三駅、中津駅、梅田駅は全線共通なので宝塚線にカウントしていない)
ここで、繁栄している街ランキングの算定基準となっている「繁栄スコア」の算出方法を説明しなくてはなるまい。
阪急宝塚線のターミナル駅である「宝塚駅」を例に「繁栄スコア」について説明しよう。
繁栄スコア算出にあたっては食べログアプリから数値を拝借した。
まず、
阪急宝塚駅の半径800メートル圏内にある飲食店舗数を検索。
「226軒」と表示された。
次に、
この上位30位・60位・90位の飲食店スコアを100倍して拾い上げる。
それぞれ「326」「315」「309」であった。
その上で、800メートル圏内にある飲食店数と3つの100倍飲食店スコアを足し合わせる。
226+326+315+309 = 1176点 【繁栄スコア】
結果、阪急宝塚駅の繁栄スコアは「1176点」と算出された。
この繁栄スコアは、
半径800メートル圏内の店舗数による「繁栄の量」と、
飲食店スコアという「繁栄の質」が融合されたものであり、
その街における「繁栄の質量」をともに反映した指針となっているのだ。
これを踏まえて、
もう一度、「繁栄している街ランキング2024【阪急沿線版】」を観てみよう。
凋落か?
20位までには宝塚沿線駅が1つもランクインしていない。
ようやく21位に川西能勢口が顔をのぞかせ、そこから「太文字」にした部分が宝塚沿線の駅である。
宝塚線終着駅である宝塚駅ですら「27位」とふるわない。
これは一体どういうことだろうか?
間違いか?
筆者はこのランキングを作成していて、「これは間違いだ」と思った。
というのも、
筆者は小さい頃に「宝塚ファミリーランド」に幾度となく遊びにいかせてもらった。
「宝塚歌劇」にだって連れて行かれた。
あれは子供ながらにつらかった。
だけど、
だから、「宝塚はとても繁栄している街だ」というイメージしかない。
しかしながら、繁栄を示す繁栄スコアは27位。
あまりにイメージと数字が乖離していて、何度も数字を確認してしまった。
だがやはり繁栄スコアは「1176」であり順位は27位。
実は今もよく理解できていない。
よく理解できていない理由を整理すると次のようになる。
①宝塚沿線全体が下位に低迷し過ぎている
②宝塚線のターミナル駅である「宝塚駅」が27位とあまりに低すぎる
そうだ。
そうなのだ。
宝塚駅といえばあの「宝塚歌劇」の駅であり、日本でも高名な駅だ。
その高名な駅の順位が「27位」とあまりに低すぎるのだ。
ひいては「宝塚駅」は宝塚線のターミナル駅であり、
大阪梅田・神戸三宮・京都河原町と並ぶ阪急電車の「看板駅」なのだ。
阪急電車にとって「看板駅」でなければならないのだ。
この筆者のイメージと数字があまりに乖離しているから、よく理解できないのだ。
西宮北口の台頭?
なぜこんなことになっているのか?
仮説としては次のようなものが思い浮かぶ。
この15年において「住みたい街ランキング」で1位の常連となっているのが「西宮北口」。
阪急神戸線の中庸に位置する要諦中の要諦駅だ。
この「西宮北口」を中心に繁栄の吸収が起こり、
逆に繁栄を吸収されたのが宝塚沿線わけても「宝塚駅」だったのではないだろうか。
思えば、
宝塚ファミリーランドの閉園が2003年。
阪急西宮ガーデンズの建立が2007年。
栄枯と盛衰がこの時期を境に入れ替わったのかもしれない。
阪急宝塚線から阪急神戸線へと繁栄が移ろい、
わけても宝塚駅から西宮北口駅へと繁栄が移ろい、
結果として現下の数値に落ち着いた。
というのが第一感としての仮説である。
虚像としての西宮北口
だが上記した仮説には「瑕疵」がある。
西宮北口は実のところ、
言われているほど繁栄してはいないのだ。
阪急神戸線の要衝駅である西宮北口。
阪急京都線の要衝駅である高槻市駅。
相似形を描く両駅を比較した場合、
高槻市駅が圧倒している。
これが何を指し示すかといえば、
「西宮北口は「1位」というほど繁栄していない」と言える。
先ほどの仮説であれば、西北が宝塚駅の繁栄を吸収したわけだが、
それにしては繁栄の度合いが少ない。
むしろ高槻市駅こそが繁栄を吸収したようにすら見える。
もう一度上の比較図を見てもらいたいのだが、
高槻市駅の飲食店舗の数は、西北の2倍以上となっている。
繁栄の「量」で明確に高槻市が上回っているのだ。
ここから考えるに、
宝塚駅の繁栄はむしろ「北摂」に抜けたのかもしれない。
歪すぎる衰退
他の路線を含めて観ると様々な仮説が錯綜する。
だが、宝塚沿線だけをよくよく観るとすこぶるおかしなことを発見した。
「なぜ、ターミナル駅の宝塚駅が中間駅の川西能勢口の後塵を拝しているのか?」
「なぜ、ターミナル駅の宝塚駅が中間駅の豊中の後塵を拝しているのか?」
「なぜ、ターミナル駅の宝塚駅が中間駅の池田の後塵を拝しているのか?」
「なぜ、ターミナル駅の宝塚駅が中間駅の庄内の後塵を拝しているのか?」
ターミナル駅が栄えて、中間駅にその繁栄がこぼれ落ちていく。
これが繁栄の方程式だ。
阪急神戸線でも阪急京都線でもターミナル駅2つが栄えており、その間の中間駅へと繁栄がこぼれ落ちている。
ところが、阪急宝塚線だけはターミナル駅たる宝塚が衰退して、沿線中間駅へと繁栄が「トリクルアップ」しているではないか。
竹中平蔵もびっくり。
そんなバカなことがあるだろうか。
阪急宝塚線では、
衰退と繁栄が歪になっているのだ。
繁栄スコアでは捉えきれていない「落とし物」がある。
それを捉えるためには「実地調査」が必要であろう。
ということで、
筆者は「落とし物」を探しに、
近日中に宝塚駅と川西能勢口駅へ赴くこととあいなった。
コロナ期間に行けなかった、2つの「大好きな駅」に行くのが今から楽しみでならない😉
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