愛蓮 阪急神戸線塚口店 イカリと出会いと惜別の矜持
ジイさんバアさんばっかじゃねえか。パチパチパチパチ写真ばっか撮りやがって。SNSなんぞ貴様らには100年早いわっ・・・20年にしといたら、後生じゃ。
阪急神戸線という桃源郷
愛蓮塚口店は40年近い伝統を誇る中華料理店である。
この伝統をつむぐため阪急電鉄とは何かから言の葉を散らし始めなければなるまい。
神戸から大阪にかけて阪急電鉄という由緒ある鉄道が走っている。
この阪急電鉄の中でも阪急神戸線は別格だ。
例えば阪急神戸線には「芦屋」という六麓荘でお馴染みのブルジョワジー御用達のステーションがある。
それと同様かそれ以上の格調高いステーションが「塚口」だ。
安全保障上「特急」は塚口に止まらないことになっているが、その町並みの格調の高さと住民の高貴さは芦屋からも一目置かれている。
昨今台頭が著しい西宮北口の住民も塚口の利便性の良さには舌を巻くほどだ。
塚口からしか乗り入れていない伊丹線という盲腸のような路線は、あの伊丹空港への大動脈として不可欠な存在である。
そんな現代の理想郷たる塚口の駅から北西に3分歩いたところに「愛蓮」がある。
とはいえ阪急沿線の人々にとっては「イカリスーパー」と言った方が通りが良いだろう。
「イカリスーパー」とはノブレスな人々だけが買い物に訪れる豪華絢爛なスーパーマーケットだ。
このイカリスーパーも塚口、芦屋、夙川といった一等駅にしか出店していない。
そんなイカリスーパー塚口店の二階に軒を構えるのが「愛蓮」である。
イカリと愛蓮の相思相愛
イカリが阪急神戸線の中でも羨望される特級スーパーであることは既に述べた。
愛蓮はイカリ系列の中華料理店であり1985年に塚口で銀の匙を咥えて産声をあげ、昨今では苦楽園にも衛星店が出来ているようだ。
愛蓮はイカリスーパーの高級な食材をふんだんに用いて、口福に満ちた料理を訪れる人々に提供してくれる。
ランチタイムの客層は人生の大々々先輩がマジョリティーであり、ワタシのような若輩者は身の引き締まる想いである。
逃げ切りランチ
ランチタイムはセレクトランチ1300円からとなっており、逃げ切り世代と揶揄されがちな年金生活者にターゲットを絞っているようにお見受けする。
他にも百花繚乱で華美なるメニューの数々があったが、ワタシのような青二才が拝謁すれば刹那にして目が潰れるので自重した次第だ。
塚口町、コンパクトシティの見本市
愛蓮のランチは人生の大々々々先輩がたに最適化されているため、どこか流動食のような風情を漂わせている。
どこに頭をぶつけても致命には届きようがない。
ここで刮目すべきなのはデザートがなんと二つもついているということだ。
左上にあられるパイナップル様と右上にあられる杏仁豆腐様があたかも天覧試合のような緊張感と天照のような温もりを差し伸べて下さっている。
1300円ランチでデザート二品とは空前にしておそらくは絶後ではないだろうか。
それにしても愛蓮のある塚口の客層は穏やかである。
と思ったら人生の大先輩がたは入れ歯の手入れなどに苦心しておられた。
これからの高齢化時代のモデルケースとして、塚口ひいては愛蓮はフロントランナーとなるべきだろう。
品位ある空間
大先輩がたに味付けなどが最適化されているからといって分量が控えめになってはいない。
ここらはご飯のお代わり無料などで微調整可能ではあるが、その必要もなく十分なボリュームが担保されている。
ここに来ると毎回己の身の至らなさに気付かされてばかりだ。
口福をたんまりと感じながら精神修行も出来るとは、一粒で二度美味しいランチだといえよう。
阪急電車 片道15分の軌跡
阪急電鉄の終着駅にして母体は、表層上において梅田駅ということになっている。
この傀儡駅たる梅田から阪急神戸線に乗ること15分で塚口駅に降りたてる。
宝塚線、京都線、今津線、伊丹線など様々な沿線があるが、やはり阪急電車といえば花形は神戸線だ。
片道15分の軌跡にて塚口に舞い降り、愛蓮で人生の先輩がたの仮想体験をするのもまた一興ではないだろうか。
愛蓮には、いつくしむ、めでる、大切にする、、惜しむ、、という含意がある。
愛すべき人々を惜しみつつそろそろ愛蓮をお暇させてもらおう。