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成瀬、天下やめるってよ

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難しい本が売れない時代だ。

簡単な本が売れる。
だから簡単な本を出版する。
難しい本がどんどん書店から減っていく。

人々は簡単な本の中で取捨を行い、より簡単な本を選択する。
より簡単な本ばかりが世に氾濫し、
人々はさらに簡単な本の中で取捨を迫られ、ことさらに簡単な本を選択する…

このようにして、
世の中に溢れる本がどんどんどんどんどんどん簡単になっていく。

この簡単書籍ブームが、21世紀の日本に「情報の単純化」を引き起こした。

情報の単純化とは何か?

例えば、「レジェンド」という表現。
ここ15年で日本に定着したカタカナ言葉。
レジェンドの意味射程は非常に広大だ。

立志伝中の人物
功成り名遂げる
生ける伝説
生き字引き
大物
助っ人
カリスマ
功労者
重鎮
大御所
奥の院
雲上人
年長者
目上のスタッフ
老害

「レジェンド」に喰われた言葉たち


伝説から老害まで一手に引き受けてくれる便利フレーズ。
それが「レジェンド」なのだ。
15年にわたるレジェンドブームによって、これらの表現が使われなくなって死語化している。

難しいピンポイント表現より、
簡単で使い勝手がよいボンヤリ表現。

立志伝中の人物より、レジェンド。
生き字引きより、レジェンド。
奥の院より、レジェンド。
老害より、レジェンド。

こうして、
情報が単純化された。

早晩、
この情報の単純化現象が世界を破滅シンギュラリティへと導く。

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