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輸出産業としてのゲームとアニメ

日本経済団体連合会(経団連)は、基幹産業としてコンテンツ振興に向けた支援策の抜本的拡充を求める提言「Entertainment Contents ∞ 2024」を公表した。10月15日のことだ。
 
エンターテインメント・コンテンツ産業は、わが国のデジタル赤字が問題視される中で外貨を稼ぐ産業としての期待が高まっており、国内消費活性化の起爆剤にもなり得る日本経済を牽引する基幹産業の一つであるとともに、ソフトパワーとして日本への関心を高め理解の促進にも貢献することが期待されています。(経団連プレスリリース原文ママ)
 
なるほど、そういう時代になったのか。
 
2023年ゲームの国内市場規模は2兆1,255億円になった。『ファミ通ゲーム白書2024』公表の数字である。
その内訳は、家庭用ハード(ゲーム機)2,675億円、家庭用ソフト(ゲーム機対応ソフト)3,865億円、オンラインプラットフォーム(スマートフォンアプリ等)1兆4,715億円になっている。
 
一方アニメの国内市場機規模(放送、 映画、ビデオ、 配信のアニメ映像 やグッズ、 遊興、 音楽等)は1兆4,685億円。2023年12月公表した『アニメ産業レポート2023』(日本動画協会)掲載の数字である。海外売り上げは1兆4,592億円になるという。
 
日本貿易会が運営する『キッズNEWS』というサイトに2021年の日本の輸出総額は83.1兆円、日本の輸出の主力品目は、自動車、半導体等電子部品、鉄鋼、自動車部分品、半導体等という説明があった。
 
そういえば、アニメやゲーム、コンテンツに関連した輸出のデータをどこかで見たことがあったな。と思い、ネット上で探してみたら、内閣府の『クールジャパン戦略関連基礎資料』(2023年)があった。
 
その中に、「日本のコンテンツ産業の海外展開の内訳」というページがあった。
日本のコンテンツ産業の海外展開総額4.5兆円。内訳は、ゲーム関連が63%、アニメ・出版(マンガ等)が35%、(実写)映画・テレビが2%とあった。
 
さらに「世界のコンテンツ産業の市場規模と日本のコンテンツ産業の輸出規模」というページには、ほかの産業とのコンテンツ産業の輸出額の比較(2021年のデータ)があった。
それによると、コンテンツ産業4.5兆円。鉄鋼産業4.1兆円、石油化学産業1.5兆円、半導体産業4.9兆円になっている。
 
これまでこういう数字を見たことがなかったし、大手のメディアでこうしたニュースを目にした経験もない。当然見逃している可能性もある。WBSでアニメの海外進出拡大という特集はあったが。
 
コンテンツが日本の基幹輸出産業と位置付けられ、経団連の提言は、今後どういう形で国の支援として具現化していくのかわからないが、ゲームやアニメが注目されたのはいいことだ。それが、大手企業だけではなく、中小のゲーム会社(受託開発会社含む)を含めた支援につながるのであれば。
 
先日大手のアニメ制作会社の社長と話す機会があった。アニメ産業がいかに大きなビジネスになっても、ビジネスの構造上アニメを作る会社の売上は、人月モデル(人月単価と人数をかけ合わせた売上で成り立つビジネスモデル)なので、なかなか利益が出しにくい。人件費が十分でないことはわかっているのだが、と言っていた。
 
ゲームの受託開発も事情は同じだ。ゲームを販売する会社は、ハイリスクだがハイリターン(高利益)、受託開発する会社はローリスクだがローリターン(低利益)なので構造は変わらない。
ゲームやアニメを実際に制作しているのは、だいたい後者なので、受託制作の会社の売り上げは、受託の仕事が多いときは別として、業界外の人たちが想像するほどでもないと思われる。
 
経団連の提言でこれから国の支援が始まるのであれば、日本のコンテンツの輸出拡大を実現するであれば、企業の規模を問わず、中小の会社でも対応できる煩雑な手続きがいらない支援であってほしいと切に願っている。

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