見出し画像

ファミコン衰退前の成熟期 1989年

12月3日は30年前プレイステーションが発売された日。多くのメディアが「プレイステーション30周年」に関する記事を掲載していた。
 
もう30年たったのか。その5年前はどうだったのだろう。後期ファミコンの時代だったな。
1985年ごろからファミコンの市場は急拡大し、それと同時に国内のゲーム産業も急成長していた。その後1989年にはどんなゲームが発売されていたのか。
 
ゲーム情報メディアで調べてみると、ファミコンでは様々なタイプのゲームが発売されていたことがわかった。
それらの多くは、毎号雑誌を作るため実際にサンプル版をプレイしていたので、どんなゲームかわかってはいるが、1989年発売タイトルという視点で見渡したことはなかった。
 
あのころ国内はバブルの時期で、社会全体に好景気感があり、ポジティブな社会環境だった。ゲーム業界も少なからずその影響を受けていた。
1989年、ファミコン市場は成熟期を迎えていた。発売タイトルを改めて振り返ってみると、こうした市場や世相を反映していたことがわかって興味深かった。
 
ナムコは、『ファミスタ'89 開幕版!!』や『ファミスタ'90』という定番のタイトルを発売している。
一方、主人公が秘密組織と闘うスパイ映画のような『ローリングサンダー』、当時テレビに出演していた超能力者といわれていたエスパー清田氏を起用して超能力を磨いていく『マインドシーカー』、ラサール石井がプロデュースしたアイドルグループ・チャイルズを一流スターにするRPG『ラサール石井のチャイルズクエスト』など多彩なタイトルも発売している。
 
加えて、遠藤雅伸さんがナムコを退社後設立したゲームスタジオが開発した『ケルナグール』。これはタイトルどおりアクションがウリのゲームだったが、ファミコンゲームとしては珍しくキャラクターの動作が滑らかだった。ゲームスタジオの人が編集部に来て説明してくれたが、蹴る殴るアクションに納得した覚えがある。
 
カプコンは、映画『マルサの女』(伊丹十三監督)をモチーフにしたアドベンチャーゲーム『マルサの女』、映画『スウィートホーム』(黒沢清監督)をモチーフにしたホラーゲーム『スウィートホーム』、またアメリカのファンタジー映画『WILLOW』(ロン・ハワード監督)をモチーフにしたアクションRPG 『W・I・L・L・O・W』などIP(Intellectual Property/知的財産)ものが多かった。
夜中に『スウィートホーム』をプレイしていると怖かった。ゲームで初めて恐怖感を味わった。後に開発される『バイオハザード』に繋がるものがある、とは個人的な感想。
 
データイーストは、前作よりレベルアップしたRPG『ヘラクレスの栄光II タイタンの滅亡』のほかに、国内で人気となったアメリカ映画『ROBOCOP』をモチーフにしたタイトルを発売している。
アイレムは、当時西村京太郎原作のサスペンステレビドラマが人気だったがそれにあやかったアドベンチャーゲーム『西村京太郎ミステリー ブルートレイン殺人事件』、アメリカ映画『メジャーリーグ』とはあまり関係ない野球ゲーム『メジャーリーグ』などIPタイトルも発売していた。
データイーストもアイレムもその後ゲーム業界からリタイアしてしまう。
 
IPゲームの老舗的存在だったバンダイは、『週刊少年ジャンプ』の漫画キャラクターが多数登場する『ファミコンジャンプ 英雄列伝』を発売。100万本以上売れている。
 
任天堂は、『MOTHER』やディスクシステムのアドベンチャーゲーム『ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女 前編』と『後編』などを発売している。『MOTHER』は、今ではレジェンドゲームのような存在になっている。
 
主要ゲーム会社のタイトルをざっと見渡してみたが、どの会社もIPタイトルが多い。また、新しい試みもみられる。こうした多彩さは、ゲームもまた時代の産物であること、ファミコン衰退期の前の成熟期のピークだったのが1989年だったことを教えてくれる。

いいなと思ったら応援しよう!