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「僕らはSNSでモノを買う」は、観光業界でSNSを活用する方の必読本!

「僕らはSNSでモノを買う」は、Webマーケティングメディア「ferret」の創刊編集長で、現ホットリンクCMOの飯高さんの著書です。
アマゾンでの評価はレビュアーの立場によって様々ですが、観光に携わる行政・DMO・観光協会・観光事業者の方々がSNSやWebマーケティングに取り組むにあたっては、まず読むべき一冊であると断言できます。

この本がめちゃくちゃオススメなのは、SNSやWebマーケティングの本質が、ものすごく分かりやすく書かれてるからです。
SNSのこと「だけ」じゃなく、Webマーケティング全体を捉えたうえでの本質的な考え方が、初心者でも理解しやすいよう、丁寧に書かれています。

それに、飯高さんが、後輩とその友人に会話形式で優しくレクチャーする、という形式で書かれているので、読みやすいんですね。

観光業界の方々からは、SNSやWebマーケティングにどうやって取り組めばよいか分からない、という声を聞くことがありますが、これを読むことで、SNSを活用するというのはどういうことなのか、そして、何に意識して取り組めばよいか、といった根っこの部分が分かるようになるので、「Instagramの特徴とは」みたいな基本の勉強の前に、まず一読することをオススメします。

では、本の内容を紹介しながら、観光協会・観光連盟の公式SNSの運営にどう活かしていくかを考察してみたいと思います。

情報が届きにくい時代だからこそ、UGCが大事

冒頭の「はじめに」で、SNSマーケティングは、今が一番おもしろい時代の理由として、次の2点をあげています。

・資本(広告予算)がものをいう時が終わり、誰でもやり方次第で効果的なマーケティングができるようになったこと。

本当にいい商品やサービスが評価され、購買される時代がやってきたこと。

たいした予算が使えず、でも、地域の本当に良いところを紹介して広めていく立場としては、すごく希望が持てる言葉です。

そして、第1部・SNS活用編の前半では、SNSの投稿はリアルな購買に影響を与えているけれど、企業の情報は届きにくくなっているし、たとえ届いても購入してもらえないので、UGCを活用しましょう!ということが書かれています。

UGC(User Generated Contents:ユージーシー)とは、ユーザーが作ったコンテンツ。つまり、企業が打ち出す広告ではなく、ユーザーが自分の意思で投稿するコンテンツを指します。
UGCには3つの特徴があります。
情報の信頼性が高いこと
行動転換(態度変容)が起こりやすいこと
シェアされやすいこと

情報量が爆発的に増えている現在、知ってもらいたいことを届けることが本当に難しくなっています。
そんな中でも確実に届くのは、「家族、友人、知人の口コミ」

企業の宣伝に貢献したくてSNSをやっている人はいないので、だからこそ、UGCの方がユーザーの共感を生みやすいし、シェアされやすいのです。

なので、飯高さんは「SNSマーケティングの鍵はUGCである」と言います。

ちなみに、前回の記事に書いたバズの事例ですが、実はスペイン村さんがその一ヶ月前からPRしていた内容だったんですね。
企業公式アカウントじゃなく、一人のユーザーが面白く切り取ってツイートしたからこそ爆発的に拡散した、ということで、まさにUGCの事例でもあったと思います。

そもそもSNSマーケティングは、自社アカウントの運営だけを指すわけじゃない

そして、すごく勉強になったのが、フォロワー数の考え方。
「SNSのマーケティングって、広告を出すことと、フォロワーを増やすことだとばかり思っていました。」との感想に対し、
「フォロワーを増やせばいいというのは、半分合っていて、半分間違っているんだよね。」
と教えてくれます。

「フォロワーを増やしたい理由は、自分の会社の商品情報をたくさんの人に知って買ってもらうためだよね。じゃあ、ユーザーが自分でその情報を拡散してくれるなら、フォロワーを増やす必要はあるだろうか?
フォロワーを増やすことは手段であって、目的ではありません
フォロワーを増やすだけではなく、フォロワーの質を考える必要があります

フォロワー数を目標に頑張ってきたので、この言葉は刺さりましたね。
これを読んでから、目的は「情報を届けること」であって、その手段として「フォロワー数を増やす」、という順番を意識するようになり、「インプレッション」をより重視するようになりました。

ちなみに、それを理解したうえで、今も「フォロー&リツイートキャンペーン」をやってます。
「フォロワーの質」を考えると、あまり良くない施策ですよね(笑)
飯高さんも、「キャンペーンは広告として一定の効果があると思うけれど、そういう一時的に獲得したフォロワーは、その先も企業が伝えたい情報を受け取ったりシェアしたりしてくれる可能性は小さいよね。」と言われています。

※ちなみに、先日受講したTwitterジャパンの「Twitterビジネス活用セミナー」でも、あまりオススメしない、と言われました。

それでも「フォロワーの量」にこだわるのは、「情報が届く人数が増える(インプレッションが増える)ことにつながる」からです。

それから、三重県観光連盟が「メディア」としての価値を高めていくために、フォロワー数という分かりやすい指標を上げることが大事だからでもあります。

なお、先日受講したアライドアーキテクツ社のウェビナーでは、

・Twitterキャンペーンをきっかけに企業公式アカウントをフォローする人が多い。
・懸賞応募用アカウントでTwitterキャンペーンに参加しているユーザーは全体の4分の1程度。
・「懸賞応募用アカウント」をメインに使用している懸賞ユーザーからも、しっかりとブランド好意度・理解度の向上や購買につながっている

との話がありましたので、フォロー&リツイートキャンペーンにて獲得したフォロワーであっても、一定の効果はあると言えると思います。

ULSSASサイクルを回す

本の紹介に戻りますね。
第1部の後半では、
「SNSを利用している8,000万人もの"パーソナルメディア"にどう取り上げてもらうか、どう広げてもらうかを考えるのが、UGCを起点にしたSNSマーケティング」
という定義とともに、SNS時代の購買プロセスとして、「ULSSAS(ウルサス)」が紹介されています。

UGCが起点となり、Likeを通じて、SNSでのSearch(検索)→検索エンジンでのSearchを経て、Action(購買)に至り、そこからSpread(拡散)され、また新しいUGCが生まれる、というサイクルです。

購買行動モデルとしては、「AIDMA」や「AISAS」の後、SNSの"共感"から始まる「SIPS」が提唱されているところですが、「ULSSAS」がより実態に近いと言えるかもしれません。
旅行業界では「DCATS」というモデルが最近言われるようになりましたが、スタートのDreamのフェーズにおいては、やはりUGCが重要な役割を果たすと考えられます。

そして、企業がULSSASのサイクルを回すためには、

・質の高いフォロワーを確保すること
・UGCを発生させやすい公式アカウントからの投稿
・ユーザー参加型のコンテンツ
・UGCを生み出すアカウント運用

に取り組むべきということで、実際にシャトレーゼでの具体的な事例が紹介されています。

観光業界での活用方法でいえば、次の事例が参考になると思います。

美しい絶景の中、インストラクターがサップ体験の様子を撮影するので、体験後に写真を受け取って、「#白ひげSUP #白ひげサップ 」のタグをつけてインスタグラムでシェアしよう!

お客様がSNSへ投稿したくなる仕組みが商品に組み込まれているので、確実にUGCが発生します。
企業じゃなく、お客様自らがSNSに「楽しかった!」って投稿することで、その「家族、友人、知人」が「いいね!」して、いいねした人が自分も行ってみようと思ってSNSやGoogleで検索する・・・という、まさにULSSASのサイクルが回っていく様子がリアルに想像できますね。

それから、フォロワー数に応じて宿泊金額が割り引かれる「フォロ得キャンペーン」も、ULSSASの観点からみて、秀逸なキャンペーンだったと思います。

「フォロワー数×1円」を割り引いてくれる宿に泊まったら、それ自体がユニークなので、間違いなくSNSに投稿しますよね!
一方、プロモーションという観点からみても、マイクロインフルエンサーにフォロワー単価1円でPRをお願いしている、ということにもなりますし、なんといっても大きな話題になったことで、パブリシティの面からも大成功だったのでは、と思います。

一番のポイントは、本当にいい商品やサービスを提供すること

ULSSASの起点となるUGCの発生は、顧客に「これはいい!」と思ってもらうことなので、
『結局のところ、SNSマーケティングで売上をアップさせる一番のポイントは、顧客にとってよい商品やサービスを磨き上げること
と飯高さんは言います。

※これは、以前の記事「観光地のブランディング」で、ホットリンク社の記事を引用した部分でもあります。

SNSマーケティング、という言葉だけを聞くと、プロモーション活動の一部分だけを切り取ったように感じますが、
「お客様一人ひとりが、メディアそのもの」
というSNSの本質部分を理解したうえで、
「お客様に口コミしてもらう」ために何が一番重要かと言えば、
「本当に良い商品やサービスをお客様に提供すること」
という、ビジネスの一番大事な部分に行きつくわけですね。

冒頭で紹介したとおり、本当にいい商品やサービスが評価される時代だからこそ、UGCを活用することで、誰でもやり方次第で効果的なマーケティングができる、ということなんだと思います。

コンテンツマーケティングの活用

本書の第2部では、SNSマーケティングと相性の良い「コンテンツマーケティングの活用」について書かれています。

「コンテンツマーケティング」という言葉は、観光関連の方々にとっては馴染みのないところですので、まずはその説明から。

コンテンツマーケティングとは、コンテンツ(=広告ではない、価値ある情報)を使ったマーケティング活動のこと。

Webマーケティングの世界でいえば、
「コンテンツ」というのは「ユーザー目線で役に立つWeb記事」のことですね。
コンテンツには、自分で書くブログ記事はもちろん、記事広告を出稿することも含まれます。

UGCが自然に生まれていない場合は、UGCを促すためのコンテンツを作って投稿することで、UGCの発生のきっかけを作れる、と飯高さんは言います。

そして、企業自らが「ユーザー目線で役に立つWeb記事」を作成して投稿する「オウンドメディア」が、潜在層に向けたアプローチの手法として注目を集めていることや、オウンドメディアをどうやって運営していくのか、が書かれています。

このあたり、「観光三重」というメディアを運営する立場の自分にはすごく参考になったのですが、観光事業者さんにとっては、なかなかオウンドメディアを運営するということまでやれないので、まずは、コンテンツマーケティングという手法を知っていただくことが大事かな、と思います。

で。
三重県観光連盟では、「観光三重」というメディアでコンテンツマーケティングに取り組んでおり、「コンテンツを作成」して「SNSで発信」することで、UGCの発生を促進しているところです。

有料での記事広告メニューは、他のウェブメディアへの広告出稿と比較すると圧倒的に安い!(=費用対効果が高い)と自負していますので、コンテンツマーケティングの一環として、ぜひご検討ください。

【参考】レポート記事PRパック
https://www.kankomie.or.jp/asset/about_ad/reportPRpack.pdf
【参考】「観光三重」を活用した情報発信について
https://www.kankomie.or.jp/asset/about_ad/promotion.pdf

という営業はさておき。
本書の最後の方で、とても大切な話がでてきます。

すべてのマーケティングの最終目標は、商品やサービスを買ってもらうことであるはず。
そう考えると、本来は「コンテンツマーケティング」とか「SNSマーケティング」といった区別もなくていいはずです。
商品やサービスを真ん中において、全体を俯瞰して見ること
そのうえで、専門家を選んだり、代理店に相談するという考え方が大事です。

これは、本当に大事な視点だと思います。
自分の立場で言えば、観光事業者さんをサポートするには、いろんな知識を勉強したうえで、全体最適の考え方を忘れないようにしないといけないな、と思わせていただきました。

分かりやすくて、本質的なうえに、いろんな気づきを与えてくれる素晴らしい本ですので、ぜひ手にとってみてください。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

追記:飯高さんのTwitterで、紹介してもらいました!

著者の飯高さんのTwitterで、この記事を紹介していただきました!

ちょうどTwitterで自分のアカウントを作って、初投稿したのがこの記事についてだったのですが、飯高さんに気づいていただき嬉しかったですね。
note+Twitterでの発信は大事だな、と思った次第です。


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