見出し画像

読書記録「ウスズミの果て」2・3巻

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、岩宗治生さんの「ウスズミの果て」KADOKAWA 2~3巻です!

岩宗治生「ウスズミの果て」KADOKAWA

・あらすじ

崩壊した世界で「光」を探す旅
美しき廃墟のポストアポカリプス紀行、第3巻。

"宇佐"の元を目指す小夜、イサミ、カノコ。3人は、"宇佐"の行く先を知る屋敷使用人ロボットと出会った。ロボットは「ひとつ頼みを聞いてほしい」と、小夜達を自身の仕える屋敷へ招待する。

カドカワストア より抜粋

2024年6月に1巻目を読み始め、世界観とストーリー、そして人類滅亡後の変わり果てた街並みに引き込まれ、2・3巻目を購入して紐解いた次第。

不死身の肉体を持ち、「永遠の子」としてとある組織に造られた丑三小夜うしみつさや。そして相棒のクー。

彼女の任務は、生存者の探索と感染遺体の処理。≪断罪者≫と呼ばれる人類を滅亡させた謎の異形と戦いながら、旅を続ける。

ディストピアのような終末世界では、自分の最期は自分で決められることは、ある意味人間に与えられた自由であるのだろう。

例えば、1巻「シネマ」で出会ったのは、人格データをロボットにコピーさせ、シネマが滅びるまで映画を見続ける元従業員。

「博物館」でようやく生存者の老人に出会うものの、彼もまた、博物館と伴に最期を遂げる決断をする。

「時計塔」では生存者こそいなかったものの、最期の場所として神に救いを求める人々の姿が。

3巻のとある屋敷で出会ったロボット曰く、生まれつき身体の弱かった主は、火葬ではなく「土に還る」ことで花とともに生きることを決めた。

お嬢様の亡骸は生前の手筈通り土に還し、ここに咲く花達の堆肥となりました。私は現在、彼女の生存を検知しておりません。ですが……わずかながらでも、彼女の願いが叶えられたと、そう理解しています。

同著 77-78頁より抜粋

自分の最期をどうするかだけでなく、「生き残る」にも様々な選択肢があるのだと。

なお、このような一種の「感染症」に侵されて人類が滅亡するシナリオからも、考えさせられることもある。

断罪者が放つ瘴気を吸ってしまった人間は「結晶病」に犯されてしまい、肉体は腐敗することなく瘴気を放ち続ける。

そのため、人類復活のためにも遺体を火葬しなければならないし、結晶病を患った人間は、致死率100%の病気だとされていた。

しかし、小夜が出会ったイサミとカノコは、結晶病を患った母から生まれた、結晶病の抗体を持ったまま生まれた人間である。

イサミとカノコの身体には、結晶病の症状と思われる症状が見受けられるものの、それ以外の身体的特徴はなにもない。

しかし、もし何の抗体を持っていない人類が、彼・彼女らを見たとき、同じく人類の友として認められるかは、また別の話である。

残念ならば、実際に性別や肌の色で差別があるものだし、現代の流行病を患ったか否かで、嫌な思いをしたことがある人だっているだろう。

ヒトはヒトである限り、同じ歴史を繰り返すことしかできないのか。感染者を疎み、排除し、排除された側は恨みをつのらせる――そうした負のサイクルを乗り越えることは、本当にできないのか?

冬木糸一「SF超入門」198頁より抜粋

先日読んだ、冬木糸一さんの「SF超入門」から影響を受けすぎているが、そういう観点で物語を紐解くのもまた一興かと。

彼女たちの旅の行方を、ゆっくり追っていくことにしよう。それではまた次回!

この記事が参加している募集

今日もお読みいただきありがとうございました。いただいたサポートは、東京読書倶楽部の運営費に使わせていただきます。