見出し画像

なぜ京急ではこのメロディを奏でる電車があったのか

こんにちは。交通技術ライターの川辺謙一です。

今回は「なぜ京急ではこのメロディを奏でる電車があったのか」と題して書きます。

かつて京急では「歌う電車」とか「ドレミファインバータ」と呼ばれる電車がありました。「駅で発車した直後に、まるでメロディを奏でるような音を奏でていたあの電車」と言えば、京急を利用したことがある方のなかには「あ〜アレね」と気づく方もいるでしょう。

なぜ京急には、そのような電車が存在したのでしょうか? 今回はその理由をざっくりと説明します。


■ キーワードは「磁励音」

それではまず結論から言います。

「なぜ京急ではこのメロディを奏でる電車があったのか」

それは、おもにモーターから発生する「磁励音(じれいおん)」が音階を奏でるようにインバータを設計したからです。

「磁励音」とは、電気的なノイズによって鉄心などが振動して発生する音です。

■ なぜ音階を奏でたのか?

それでは、なぜ音階を奏でるように設計したのでしょうか?

その理由は…以下の記事「『歌う電車』の秘密」で書きました。

「歌う電車」の秘密。『京急電鉄の世界』より

この記事「『歌う電車』の秘密」では、電車の開発者が記した資料や新聞記事をベースにして、磁励音が出る仕組みから、それに音階をつけた理由、そして歌わなくなった理由まで記しました。

記事のトップでは「ドレミファインバータは、技術者のユーモアだった?」と記しました。インバータを製造したドイツのシーメンス社は、朝日新聞の取材に対して「不快にも感じられるノイズを『遊び心』でメロディーを奏でるように調整した」とコメントしています(2021年7月15日付け記事)。

どうしても出てしまう音ならば、より親しみやすいものにしようと工夫したのでしょう。技術者としてはユニークなアプローチです。

なお、このメロディを奏でる電車は、残念ながら現在の京急にはありません。これは、インバータをはじめとする電機品の更新によって、以前ほど目立つ磁励音を出す電車がいなくなったからです。

「もっとくわしく知りたい!」という方は、ぜひ『京急電鉄の世界』をご覧ください。先述した「『歌う電車』の秘密」だけでなく、京急を楽しむためのバラエティ豊かな記事が載っていますよ。

本日(2024年8月27日)発売です!

本日発売! 『京急電鉄の世界』

この記事が参加している募集

よろしければ、サポートをお願いします。みなさんに楽しんでもらえるような記事づくりに活かさせていただきます。