【発見の旅#08】地下鉄・路面電車・バスに自転車を持ち込める都市
近年は、環境にやさしい移動手段として自転車が注目されていますね。
とくにヨーロッパでは、自転車を見直す動きが活発で、自転車が走りやすい環境を整えた都市が多数存在します。
そこで今回は、地下鉄や路面電車、バスなどの公共交通機関に自転車を持ち込むことができる都市の一例として、ドイツの首都・ベルリンを紹介します。
■なぜベルリン?
まず、ベルリンの自転車事情を紹介する理由を説明します。
例としてベルリンを選んだのは、近年私が訪れたヨーロッパの都市で、もっとも自転車で移動しやすい環境が整っていたからです。
ここで交通にくわしい方のなかには、「そこはアムステルダムの例を紹介するべきだろう」と指摘される方もいるでしょう。
たしかに、ヨーロッパの「自転車先進都市」といえば、オランダの首都・アムステルダムが有名です。この都市では、人口が約80万人であるのに対して、自転車が約100万台あり、街の身近な移動手段として自転車が定着していることが知られています。
ただ、私はまだアムステルダムを訪れていません。私自身がかつてサイクリングを趣味としていたため、ぜひ訪れたいのですが、これまで機会がありませんでした。
そのいっぽうで、コロナ禍の前にドイツとフランスに行く機会がありました。ドイツには2014年と2016年、フランスには2019年に行きました。
その結果、ドイツの首都・ベルリンの自転車事情を見て驚きました。そのあとフランスの首都・パリの自転車事情も見たのですが、「公共交通機関への自転車持ち込みが許可されている」という点においては、ベルリンのほうが一歩リードしていました。
このため今回は、ヨーロッパにおける自転車事情の一例として、ベルリンの自転車事情を紹介します。なお、これから紹介する写真は、すべて2016年に撮影したものです。8年前なので、現在と状況が変わっているかもしれませんが、その点はご了承ください。
■朝に走り抜ける自転車の群れ
ベルリンでは、平日の朝に自転車で通勤する人がたくさんいます。それゆえ交差点では、信号待ちのために停車している自転車が群れをなすこともあります。
また、自転車を持って公共交通機関を利用できる環境が整っているので、電車やバスに自転車を持ち込む人をよく見かけます。
それゆえ、市街地では、自転車と公共交通機関の両方の利点を活かした移動が可能です。自宅から駅までは自転車に乗り、乗車駅からは自転車を持って電車に乗り、降車駅からオフィスまで自転車に乗る。そのようにして朝に通勤する人が、この街にはいるのです。
■整備された自転車レーン
ベルリンでは、主要道路での自転車道が整備されています。
近年は東京でも自転車レーンの整備が進められていますが、車道との区分があいまいで、自転車が安全に走るのがむずかしい場所も少なくありません。
その点ベルリンは、もともと道路の幅に余裕があり、自転車道と車道の区分が明確になっている場所が多いので、自転車が安全に走れるようになっています。
■自転車を持ち込める公共交通機関
ベルリンの公共交通機関では、自転車の持ち込みが許可されています。ただし、自転車を持ち込める場所があらかじめ決まっており、そこに自転車のマークが付けられています。
下の写真は、近郊電車(Sバーン)の窓ガラスに描かれた自転車のマークです。このマークがついた車両の車内では、自転車を持ち込んでいる人をよく見かけます。
下の写真は、路面電車(トラム)です。ドアには、自転車やベビーカー、車椅子が載せられることを示すマークが描かれています。
下の写真は、路面電車です。自転車のほかに、車椅子やベビーカーのマークがついており、それぞれを持ち込めるようになっています。
■輸送力に余裕がある
なぜこのようなことがベルリンで実現したのでしょうか。
その理由は、市街地の道路や公共交通機関の様子を見て気づきました。
この都市では、道路や公共交通機関の輸送力に余裕があり、自転車の通行や持ち込みを受け入れる余裕があるのです。朝夕のラッシュ時でも、日本の主要都市で見られる渋滞や公共交通機関の混雑は、ここではあまり見られません。
実際の朝ラッシュの様子を写真で紹介します。この程度の混雑度なら、自転車を持ち込む余裕がありますね。
市街地の道路に余裕があることは、数値にも表れています。
下の棒グラフは、世界の主要都市の平均旅行速度(道路を走る自動車の平均速度)を示しています。平均旅行速度は、道路が整備されており、混雑が起こりにくい都市ほど速くなります。
これを見ると、東京(区部・23区のこと)が極端に遅く、ベルリンが速いことがわかります。
私は、実際にベルリンでバスに乗り、その速さに驚きました。
おもに利用した区間は、中心街と住宅地を結ぶ片側3車線の幅広い道路で、朝ラッシュでも混雑が起きず、バスが軽快に走っていました。
以上のように、ベルリンの交通事情の「よい側面」だけ見ると、ちょっとうらやましく感じますね。