マガジンのカバー画像

川端堂おすすめの書籍

15
東京・神保町のシェア型書店「SOLIDA」の棚主「川端堂」です。気に入った本をこちらのマガジンでご紹介します。随時更新していきます。既に売れてしまった本や、手放すのが惜しく販売し…
運営しているクリエイター

#小説

ノーベル文学賞を取る? 中国の作家、残雪。 短編集《西双版納的女神》(シーサンパンナの女神)を手に取ってみた

10月10日に2024年のノーベル文学賞の受賞者が発表されます。事前予想では中国の作家、残雪氏の名前があがっているそうです。 そこで以前に買ったまま「積ん読」になっていた短編集《西双版納的女神》(シーサンパンナの女神)を慌てて本棚から取り出してみました。 短編集だから面白そうなものからつまみ読みを始めたところですが、早くも悪夢にうなされそうな気分です。もちろんこれは褒め言葉です。良い小説は、夢に出てくるぐらい読者の心に響くもんですよね。 この短編集は2022年に発刊されまし

中国の作家・残雪〜テンポの良さが気持ちいい

さてノーベル文学賞発表(10月10日)を前に「今年は中国の残雪氏が有力!」という世評を聞き、慌てて彼女の作品を読み始めた私ですが、前回ご紹介した短編に続き、もう一つ短編を読んでみました。 手元にあるのは2年ほど前に中国で買って未読だった短編集《西双版納的女神》(シーサンパンナの女神)です。中国語ネイティブではない私でも短編集なら読みやすそうだと思って買っていたのでした。 前回の投稿ではこの本の冒頭に収められた短編「宝蔵地帯」をご紹介しました。氷雪に閉ざされる北の街が舞台で

テレマークスキー文学の最高峰『魔の山』

トーマス・マンの『魔の山』。このあまりにも有名な小説を、私は「テレマークスキー文学の最高峰」と勝手に認定しております!(ただしこの文章の最後に注意事項あり) テレマークスキーとは、クロスカントリースキーのように、かかとが外れているスキーです。雪山を歩いたり登ったり滑ったりする山スキーに適しています。斜面を滑り降りるときは、両脚に前後差をつけたテレマークターンという独特な技術を用います。日本にも少数ながら根強い愛好家がいる。私もそのひとりです。 『魔の山』の後半、第六章には