川端堂

神保町の共同書店「SOLIDA」に小さな棚主として出店しています。 https://passage.allreviews.jp/store/R3U2ZPC3PMU7XQ5IA4HPN5VE

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最近の記事

有名写真家の作品を一気に鑑賞できる展覧会「写真をめぐる100年のものがたり」(静岡)

静岡市美術館で開かれている写真展「写真をめぐる100年のものがたり」を見ました。歴史的に有名な写真家の作品が勢ぞろいした贅沢な内容です。いろいろ見られてお得!って感じなんですが、けっこう骨太な内容でもあります。写真の持つ力について考えさせられました。2024年11月17日(日)まで開かれています。 展示されているのはアルフレッド・スティーグリッツやアンリ・カルティエ=ブレッソン、木村伊兵衛、東松照明、ロバート・キャパ、ウォーカー・エヴァンズ、ユージン・スミス、トーマス・ルフ

    • 石内都写真展〜桐生への日帰り迷い旅〜

      写真家・石内都さんの個展「石内 都 STEP THROUGH TIME」を10月上旬に見に行きました。群馬県桐生市の急斜面にある大川美術館が丸ごと会場になっています。階段をつたって小部屋から小部屋へと展示を辿り、50年近い写真家としてのキャリアを振り返る趣向。もとは社員寮だったという建物の古びた雰囲気を絶妙に活かした展覧会です。東京から桐生への日帰り旅行。味わい深い一日になりました。 会場の大川美術館はJR桐生駅から歩いて10分ほどですが、入口までは急斜面と階段を登ることに

      • 中国の作家・残雪〜テンポの良さが気持ちいい

        さてノーベル文学賞発表(10月10日)を前に「今年は中国の残雪氏が有力!」という世評を聞き、慌てて彼女の作品を読み始めた私ですが、前回ご紹介した短編に続き、もう一つ短編を読んでみました。 手元にあるのは2年ほど前に中国で買って未読だった短編集《西双版納的女神》(シーサンパンナの女神)です。中国語ネイティブではない私でも短編集なら読みやすそうだと思って買っていたのでした。 前回の投稿ではこの本の冒頭に収められた短編「宝蔵地帯」をご紹介しました。氷雪に閉ざされる北の街が舞台で

        • ノーベル文学賞を取る? 中国の作家、残雪。 短編集《西双版納的女神》(シーサンパンナの女神)を手に取ってみた

          10月10日に2024年のノーベル文学賞の受賞者が発表されます。事前予想では中国の作家、残雪氏の名前があがっているそうです。 そこで以前に買ったまま「積ん読」になっていた短編集《西双版納的女神》(シーサンパンナの女神)を慌てて本棚から取り出してみました。 短編集だから面白そうなものからつまみ読みを始めたところですが、早くも悪夢にうなされそうな気分です。もちろんこれは褒め言葉です。良い小説は、夢に出てくるぐらい読者の心に響くもんですよね。 この短編集は2022年に発刊されまし

        • 有名写真家の作品を一気に鑑賞できる展覧会「写真をめぐる100年のものがたり」(静岡)

        • 石内都写真展〜桐生への日帰り迷い旅〜

        • 中国の作家・残雪〜テンポの良さが気持ちいい

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        マガジン

        • 写真展や写真集
          8本
        • 川端堂おすすめの書籍
          15本

        記事

          【岩手県盛岡】竹細工を体験して「民藝」を身近に感じる。しかも気軽に

          岩手県の「盛岡手づくり村」で、伝統工芸の「すず竹細工」を体験してきました。まったくの素人でも気軽にできるので、かなりおすすめです。今年6月に見た「民藝 MINGEI」展で興味を持った「すず竹細工」が、一気に身近なものとして感じられました。 まずこのペン立てをご覧ください。 どうなんでしょう。やっぱり素人が作ったって分かりますかね。全体的にゆがんでます。隙間も多いです。私が作りました。わずか1時間半で! ちゃんとペン立てとして使っております。 小岩井農場の近くにある「盛岡

          【岩手県盛岡】竹細工を体験して「民藝」を身近に感じる。しかも気軽に

          テレマークスキー文学の最高峰『魔の山』

          トーマス・マンの『魔の山』。このあまりにも有名な小説を、私は「テレマークスキー文学の最高峰」と勝手に認定しております!(ただしこの文章の最後に注意事項あり) テレマークスキーとは、クロスカントリースキーのように、かかとが外れているスキーです。雪山を歩いたり登ったり滑ったりする山スキーに適しています。斜面を滑り降りるときは、両脚に前後差をつけたテレマークターンという独特な技術を用います。日本にも少数ながら根強い愛好家がいる。私もそのひとりです。 『魔の山』の後半、第六章には

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          凝りまくった造本がすごい 武井武雄展

          先日、目黒区美術館で開かれている武井武雄展に行ってきました。造本や装幀に興味がある人は必見かもしれないと思いました。素晴らしい展示です。 武井武雄は子供向けの絵本などの挿絵を芸術的なレベルに高めた「童画」の作家として有名です。 一方で小型の「刊本」作品など、凝りに凝った造本でも知られているそうです。 今回の展覧会は童画や版画など武井の作品が盛りだくさんで展示されていますが、わたしは特に、武井が造ったたくさんの本に目を奪われました 小型の「刊本」以外に大型の豪華本もあります

          凝りまくった造本がすごい 武井武雄展

          【猛暑の青森で雪見】鴻池朋子や小島一郎の展覧会で涼む

          7月下旬に青森に行ってきました。予想外に暑い。地元のタクシーの運転手さんもびっくりしていました。でも青森県立美術館で開かれている企画展では東北地方の「雪」を堪能することができましたよ。 ひとつは「鴻池朋子展 メディシン・インフラ」です。(2024年9月29日まで) もうひとつは青森の写真家・小島一郎の展覧会。(2024年9月29日まで) まずは鴻池さんの展覧会です。いろんな展示の中で、特に「物語るテーブルランナー」というプロジェクトが面白かった。鴻池さんが秋田県・阿仁合

          【猛暑の青森で雪見】鴻池朋子や小島一郎の展覧会で涼む

          キラキラしたジュエリーに癒されるはずが、ちょっと胸焼け(良い意味で) 上野のカルティエ展

          たまにはキラキラしたものを見て癒されたい…そんな気持ちに駆られ、上野の東京国立博物館で開かれている「カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』展 ― 美と芸術をめぐる対話」に行ってきました。 カルティエのジュエリー、しかも一生触れないような逸品を理屈抜きで楽しもうという気持ちで行ったのですが、よい意味で裏切られました。ジュエリーだけではなく、現代アートもしっかり楽しめる展覧会。思わず展示を2周しましたよ。たっぷり時間を取って、胸焼けするぐらいじっくり見ることをおす

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          カヤックの経験はないけどこの本は面白い 『海旅入門』

          きょうは『海旅入門』(著:川﨑航洋、イラスト:川﨑あっこ)というシーカヤックの入門書をご紹介します。 わたしはシーカヤックをやったことがなく、正直言って近々やる予定もないのですが、この本は面白い。海旅への憧れをかき立ててくれました。 本書の後半に収められている実際の海旅の記録を読むと、陸の旅とは別の世界があることが分かります。例えば島根半島の周囲を漕ぐ海旅。著者は夫婦で稲佐の浜から日本海岸を東へ漕ぎ、途中2泊のキャンプを経て境港まで回り込んでいます。舟でしか行けない入江もあ

          カヤックの経験はないけどこの本は面白い 『海旅入門』

          恵比寿で「時間旅行」 東京都写真美術館

          宮沢賢治が詩集『春と修羅』を出版してから今年でちょうど100年だそうです。この節目と絡めて100年を振り返る写真展「TOPコレクション 時間旅行」が、恵比寿の東京都写真美術館で開かれています。先日見てきました。 『春と修羅』はあくまでも「手掛かり」との位置付けで、展示内容は宮沢賢治に縛られず多様です。見る人の興味によっていろいろな楽しみ方ができる展覧会だと思いました。 まず大好きな桑原甲子雄の写真がたくさん見られたのが良かったです。戦前・戦中の東京の街並みを写した作品が良

          恵比寿で「時間旅行」 東京都写真美術館

          岩手県・鳥越竹細工の魅力が詰まった本『かごを編む』 

          世田谷美術館の企画展「民藝 MINGEI」を見て岩手県・鳥越の竹細工に興味を持ったわたしは、さっそく『かごを編む』(文:堀惠栄子、写真:在本彌生)を買って読んでみました。柴田恵さんという現地の職人をクローズアップして鳥越竹細工を紹介した本です。 岩手県一戸町の鳥越竹細工は作り手の高齢化が進んでいる上、材料であるスズタケの減少という危機に瀕しているそうです。なんでも120年周期で起きる大量枯死現象の可能性があるとのことですが、詳しい原因は分からないそうです。 柴田さんは自分

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          見応えあり、世田谷美術館「民藝 MINGEI」展

          世田谷美術館で開かれている企画展「民藝 MINGEI」を見てきました。 身の回りにこんな家具や食器、置き物や服があればいいなあと想像しながら見るのが楽しい。実際には、まず家を片付けましょう、というのが現実だけど。 一部エリア以外は撮影禁止だったので、いろいろ目に焼き付けてきました。紅型(びんがた)と呼ばれる沖縄の模様染の着物がかわいかった。青地に花や蝶の模様があしらわれている。沖縄なのに雪輪のデザインも入っている。本土のデザインの影響を受けたそうです。素材が木綿なので夏で

          見応えあり、世田谷美術館「民藝 MINGEI」展

          【書籍紹介】『手仕事をめぐる大人旅ノート』(著:堀川波)

          工芸作家・イラストレーターとして活躍する著者が3週間にわたりロンドン、バルト三国などを巡った旅の記録です。12年ぶりに再取得したパスポート、新調したスーツケース、息子に借りたリュックサック…。海外旅行には不慣れで英語も苦手という著者が、Google翻訳を駆使して歩き回ります。 インスタで知り合ったロンドンの毛糸店に依頼されてワークショップを開き、ラトビアの「森の民芸市」で白樺細工を買い込む。アクティブな旅の様子と現地の手工芸品を、ほんわかした挿絵で紹介しています。 それに

          【書籍紹介】『手仕事をめぐる大人旅ノート』(著:堀川波)

          100年前の痛快な温泉ガイド 田山花袋『温泉めぐり』

          田山花袋の『温泉めぐり』は、そのありきたりなタイトルからは想像できない、痛快な旅行ガイド本です。大正時代に出版され、読みやすい表記で岩波文庫に入っています。 まず情報量がすごい。北海道から九州まで、各地の温泉を訪ねています。温泉宿や接客の様子、泉質、周辺の町や村の様子、風景などを細かく記しています。当時の有名な温泉地はだいたい網羅しているのではないでしょうか。 そして温泉に対する評価が率直です。「伊香保は東京附近では、箱根についで、好い温泉場だ」という感じで勝手にランキン

          100年前の痛快な温泉ガイド 田山花袋『温泉めぐり』

          大阪・淀川とブッシュ大統領

          2005年11月、米国のブッシュ大統領が来日しました。外交のことはよく知らないですが、このときのことは忘れられません。 小泉首相との会談場所は京都でした。大統領は専用機で大阪の伊丹空港に到着。京都との間はヘリコプターで移動したそうです。 私は当時、大阪に住んでいたのですが、上空を物々しいヘリコプターの編隊が飛んでいったのでびっくりしました。 テレビをつけると地元の放送局が興奮状態で実況中継をしています。特別番組でしょうか。中継の担当者が「いま、大統領を乗せたとみられるヘ

          大阪・淀川とブッシュ大統領