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広い海のどこかで

夏も終わりですねぇ…
今年の夏もどこにも行かずに過ぎてしまいました。

私は海が大好きで毎年どこかしらの海には行っていたのですが、このご時世なので我慢です。
我慢の夏、二度目。

海ではいつも波の音を聞きながらぼんやりとビーチでごろごろしています。何もしない贅沢な時間です。
ですが、直近で行った海ではいつもと違う貴重な体験をしたのでその時のことを記事にします。

2019年の夏。

ベトナムはコンダオ島という場所で、ウミガメの放流の手伝いをしました。
泊まったホテルはシックスセンシズコンダオ。
こちらのホテルは自然環境、地域社会との共生を理念に掲げウミガメの保護活動をしているのです。

タマゴが孵化するとその日の朝早くに部屋にバトラーから電話がきます。急いで身支度をしてビーチへ向かいます。

孵化したばかりの子ガメはずっと手足をパタパタとさせて海へ行こうとします。
木箱に入り、周りを板で囲われていても海のある方をずっと向いています。外は見えなくても海のある方向がわかっているようでした。
海の方が明るいかららしいのですが、卵のある場所から海まではかなり距離があるし、砂浜も海も明るさもさほど変わらないように思えました。人間にはわからない、何か本能のようなものでわかるのでしょうか。
うーん、不思議だ…

この時点で孵化できずに、死んでしまう子ガメもたくさん見ました。体が半分だけ卵から出ていたり…孵化できるのは5〜8割ほどだそう。

用意をしてもらった手袋をはめて、木箱から子ガメをすくってそっと手のひらに乗せます。
その間もずっとパタパタと力強く動いているので、落とさないように素早く慎重に砂浜に下ろします。

小さな子ガメが砂浜に降りた途端に吸い込まれるように真っ直ぐと海へ向かって行くのです。
休むことなくずっと手足を動かして一心不乱に。
他の仲間と群れることなく、一匹で大海原に向かっていく姿からは生命の力強さを感じました。

ウミガメは1回の産卵で120個近くの卵を産みますが、その内の1匹が無事に成長すれば良い方だそうです。

見ている中に、泳ぐ力も弱いのか波になかなか乗れず砂浜に何度も戻される子ガメもいました。
頑張れ!と応援せずにはいられません。
周りの人もずっとその子ガメを見守ります。どうしても波で砂浜に戻されるので、最後はスタッフが手助けしていました。

波に乗ると、頭を海面から出したり入れたりして一斉に泳いでいきます。

海に出るとウミガメは一生を海の中で過ごします。この砂浜に戻ってくるのは産卵の時だけ。自分の生まれた島に戻って産卵をする。
何でわかるのでしょう。
砂浜にいる時間も、卵から孵化して海に出るまでのほんの短い時間なのに。
海と共に命の循環の神秘を感じ取れたのでした。

ウミガメは地球上で生きている全ての種類が絶滅危惧種だそうです。

魚やカニに食べられる側からある程度大きくなって食べる側になっても、油にまみれて息ができなくなってしまったり、ゴミを食べてしまったり、台風の荒波で泳ぎ疲れてしまったり…さまざまな困難が待っています。
(餌のクラゲがどうしても海を漂うプラスチックゴミに似ているので食べちゃうこともあるそう)

…正直、紙製ストローはふやけて飲みにくいなぁと思ったり、マイバックをうっかり持ち忘れてイラっとしたこともあります。レジで荷物を詰めて、後ろにいる人を待たせて勝手に焦ってみたり…

でも、海に出て行った子ガメ達の成長の妨げにならないように今後もこういった行動は継続しなければいけないよなぁ…と思います。

地球人みんなで協力するしかない。

小さな体でパタパタと進む姿がホントに健気で可愛いのです。朝日に向かって進む姿が逞しいのです。

あの子たちが今もこの広い海のどこかで生きていると良いなぁ

当たり前ですけど、母なる海は人のものだけじゃないのよね…と改めて感じた貴重な時間なのでした。


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