ゼロから創る「スタートアップのブランディング」の舞台裏
こんにちは!シェア買いアプリ「カウシェ」です。
今回は、シェア買いアプリを提供する「カウシェ」 × ウェルネス業界向けのオールインワン基幹システム「hacomono」とのコラボnoteです。
コラボのきっかけは、両社のこんな共通点から始まりました。
両社が考える「toC / toB それぞれのスタートアップのブランディング」とはなにか、ぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
「ブランディング」とは
そもそも、一般的に言われる「ブランディング」の定義とは何でしょうか?
一般的な定義
これを踏まえた上で、カウシェとhacomonoでは「ブランディング」をどのように考えているのでしょうか?
hacomonoの定義
Yukiko:hacomonoにおいてのブランディングは、ミッション・ビジョンを叶えるための「HOW:どのように届けるか」に当たります。
一般的にブランディングと聞くとまず「ロゴデザイン」「フォント」「色彩設定」などデザインシステムのようなものが思い浮かぶと思いますが、それらも含めた、デザイン・ビジュアル・メッセージなどの表現から、言動・行動・マインドまで含めたhacomonoから社内外に届ける全てのアウトプットの素地にブランディングがあると考えています。
カウシェの定義
Kana:カウシェにおけるブランディングは、「ミッション・ビジョン・プロダクトコアバリューのイメージを構築し、伝えるための手段」として機能します。
企業のミッション・ビジョン等を反映したコミュニケーション戦略、ロゴなどの視覚的な要素、製品やサービスの品質や顧客体験などを通じて、企業の独自性や価値をお客様に届けます。
——ありがとうございます。なぜ作ることになったかについても、ぜひお伺いしたいです。
Yukiko:hacomonoは代表の蓮田が、ブランディングやデザインについて自分でも勉強するぐらいその領域に理解がある人物で、何かの制作時には意思決定者として案件に入っていたので、創業当時からhacomono「らしさ」を感じるアウトプットはできていたと感じます。
その結果、hacomono「らしさ」の一定水準以上の共通認識を社員が持つことができました。
しかし社員数が200名ほどに増えていく中で、代表ひとりに全てのアウトプットの意思決定をいただくのは厳しい状況になっていったのと、hacomono「らしさ」の認識が人によってズレていくのを感じていました。大きなズレは無いものの、それぞれに思い描くものに少しずつズレが生じてしまった結果、デザインやメッセージの制作ですぐに合意を得られなかったり、制作時にコミュニケーションコストが大きくかかったりと、外部パートナーに制作いただく際にも何を基準に作っていただくか説明しづらいということが起きていました。そのため、この事業成長のタイミングで、一度hacomono「らしさ」ってなんだっけ?と自分たちを見直すことと、共通のイメージや共通言語などの表現のよりどころの必要性を感じていたのがブランドガイドライン作成の大きな理由です。
以下のような目的でブランドガイドラインの作成を行いました。
Kana:カウシェはリリース時にロゴを作って以降、私が1人でデザインを作っていたのですが、徐々にPromotionチームやProductチームにもデザイナーが増えていきました。
また、デザインする上で最低限必要なロゴルール・ブランドフォント・ブランドカラーなどは準備していましたが、デザインの依頼の際に「これはPRなので、カウシェっぽい感じでお願いします」といった、フワッとした「カウシェっぽさ」を求められる場面も増えてきました。
そこで、デザイナー間で共通認識を持つために、ブランドガイドラインのようなものがあった方が良いのではないか?という話になりました。
一方で、カウシェはスタートアップであり、事業状況に応じてスピード感高くプロダクト戦略やマーケティング戦略を改定することも多々ありました。これらは長期的にイメージ形成していくべきブランディングと逆行しているように感じていました。
そこで、綿密なブランドガイドラインを策定することはROIが悪いと判断し、変わりやすい部分と変わりにくい部分をしっかりと整理しながら、以下のような前提を持って作成しました。
また、このように私がつらつらと語っておりますが、今回のガイドラインの策定は9割を @HirotoArakawa さんに作成していただきました!(荒川さんありがとうございました!)
——どんなプロセスで作っていったのでしょうか?
hacomono
Yukiko:
まずは社内チームを立ち上げて、ブランディングプロジェクトを推進していきました。
そして外部パートナーとしてTakramさんに入っていただき、プロジェクト全体の設計やインタビューを含めたリサーチ、バーバルガイドライン作成までのブランドの言語化と構造化をサポートいただきました。
今回外部パートナーにご参加いただいた理由は、社内だけではこの大きな決定をするのに経験値が十分ではないだろうという判断もありましたし、社外の目を入れることでhacomono「らしさ」をより多角的につくっていけるのではないかと考えたためです。
ブランドガイドラインの制作期間は3ヶ月です。
以下のプロセスでプロジェクトを進めました。
①現状把握|自分たちのことをきちんと知る
エグゼクティブインタビュー, オンサイトインタビュー, クライアントインタビュー
ブランドの現状認識や課題、また理想のイメージを把握して一致点や相違点を知る作業です。
このブランドはなんなのか
このブランドはどうなりたいのか
現在地から未来の話までとにかく洗い出して、キーワードを探っていく作業です。
hacomono「らしさ」とは企業文化や社風、社員の特徴などを表すキーワードはなんですか
どのような人にhacomonoブランドのファンになってもらうことが理想ですか
ベンチマークにしている企業、もしくは避けたいブランドイメージを教えてください
このような質問をいくつか用意して、言葉を引き出していきました。
ちなみに、インタビューはTakramさんに主導いただいています。
お互い知った仲よりも、知らない相手だからこそ忖度の無い「ぶっちゃけた」話が引き出すことができました。「うわ〜そんな考え方もあるのか!」と発見も多かったです。
②リサーチ|自分たちの競合や憧れの企業を洗い出す
業界リサーチ, ブランド構造リサーチ
自分たちのいる業界でどんなブランドが存在しているのか、どんな人格・ビジュアル・メッセージを持っているのかリサーチして、これから自分たちブランドの目指すポジションを検討する作業です。
このブランドはどこにいるのか(As is)
どこにいきたいのか」を探っていきます(To be)
たくさんの企業をリサーチして、かつポジションマップなどを作成していきました。
③ブランドワークショップ|ディスカッションで精度をあげていく
いつもはオンラインミーティングでしたが、この時は原宿本社に集まって顔を合わせながら様々なワークショップを行いました。
どのようなキーワードがhacomono「らしさ」を感じるか
どのようなビジュアルがhacomono「らしさ」を感じるか
どのようなコピーがhacomono「らしさ」を感じるか
様々な方向性の中からYes、Noとふせんを貼っていき、その理由も書いていきました。
そうすると、やはり一致点と相違点が出てくるので、その内容をチームメンバーとディスカッションしてここで「らしさ」の精度や共通認識を高めていきます。
④ブランドガイドライン作成|資料に落とし込む
ブランドパーソナリティ、バーバルガイドライン作成
ここまで色々と調べたり、hacomono「らしさ」を深く考えてきた中で、じゃあhacmono「らしさ」を一言で言うと何?ということで様々なアイデアをTakramさんより提案いただきました。
また、提案いただいた内容を見ながら、ああでもない、こうでもないと繰り返し議論を重ねました。
少しの言葉遣いでも「らしさ」があったりなかったりするので、本当にとことん話し合ったと思います。
カウシェ
Kana:カウシェは以下のようなプロセスで作成しました。項目としてはデザイン運用するに当たって必要最低限あれば良いと考えていたので、かなり絞った内容で作成しました。
①現状の「カウシェらしさ」の整理
まずは現状私や他のデザイナーの中にある「カウシェっぽい」を可視化してみようということになり、イメージボードを作成しました。
イメージボードとは
ビジュアルのサンプルを集めたもの。
言葉で表しにくい視覚的なイメージをまとめたり、抽象的な意図が伝わるように「こんな感じ」を集めたアイデアブック。
その際に留意したポイントは、単純にイメージに近いものだけじゃなく、近いけどちょっと違うものも集めていきました。
そうしてそれらを分類し、整理していきました。
整理することで、漠然とあった「カウシェっぽい」が可視化され、逆に漠然とあった「微妙にカウシェっぽくない」が可視化され、デザイナー間で共通認識を持てました。
②調査と現状把握
競合調査
その後、とはいえ現状の「カウシェっぽい」は既存のブランドロゴやビジョン・ミッションから深い戦略もなく作っていた物だったため、改めてどういったブランドにしていくべきかを決めるため、まずは競合他社のブランド戦略やマーケティング手法を分析しました。
競合のサイトや公開しているガイドライン、プロモーションの制作物等を収集し、分類したのち、カウシェとして取れるポジショニングを見定めていきました。
ユーザー調査
同時に現状のターゲットの把握を行いました。アンケート自体は定期的に収集・分析していたので、それを元に、デモグラ情報やECの利用状況、現状のカウシェをどのように思ってくれているのかなどを把握し、誰に届けるのか?ということをデザイナーチーム内で認識合わせをおこなっていきました。
事業戦略やプロダクトの価値の把握
そして、改めて事業戦略と、プロダクトを通してどういった価値を届けるのかも把握していきました。現状のカウシェにはないけど、将来的にはこういうものも考えられるというところも含めて認識合わせし、スケーラビリティを担保していきました。
③ブランド戦略の策定
ポジショニングマップ
先の現状把握を踏まえて、市場のどこのポジショニングを取って他社と差別化するかをまとめたポジショニングマップを作成しました。
④ブランドアイデンティティとルールの設計
パーソナリティの策定
あらかたの戦略が決まったら、今度はそれらを表現するためのブランドデザインの設計を行います。まずはブランドパーソナリティを決めていきました。
ブランドパーソナリティとは
ブランドが持つ特徴や個性のことを指します。ブランドパーソナリティは、消費者に対してブランドとのつながりや共感を生み出し、ブランドの独自性や識別性を高める要素です。
カウシェの場合は、以下のような4つのキーワードを抽出しました。
Vibrant(活気に溢れた)
Colorful(さまざまな)
Playful(遊び心)
Friendly(友達のように)
これらを元に、さらに既存に規定していたブランドアイデンティティのルール作りを行っていきました。
各メディアにおけるトーンの規定
同時に、既に出ていたデザイナー間で課題感として、「この制作物はどこまでブランドを強く表現すべきなのか?」ということです。ブランディングは統一したメッセージを一貫して発信することで効果を発揮しますが、短期的にはブランドを表現せず、キャンペーンのコンセプトに合わせた方が数字を上げられるものも存在します。
そのため、この課題感が出てきていました。そこで、各メディアにおけるブランドトーンの違いについても規定しました。
ロゴルール
ロゴは既に存在し、変える必要がなかったため、改めて運用上必要なロゴのルールを整えていきました。ロゴは様々なシーンで、デザイナー以外の様々な領域の人も使用するアセットであるため、一般的にはかなり厳格なルール整備が必要です。
そのため、カウシェでも以下のような項目を用意しました。
プライマリー・セカンダリーの定義
クリアスペースの規定
背景色の規定
加工の規定
カラールール
また、カウシェには6色のブランドカラーが存在します。これらを全て使った制作物もあれば、1色・2色の制作物も存在します。先の「各メディアにおけるトーンの規定」と合わせて、これらも規定していきました。
タイポグラフィルール
タイポグラフィはこのnoteで書いたShorai Sansをブランドフォントに規定しています。
完成したブランドガイドライン
——完成したブランドガイドラインについて、どんなものに出来上がったかをお伺いさせてください。
hacomono
Yukiko:3ヶ月間、目一杯の時間をかけて無事にブランドガイドラインが完成しました!
・ブランドパーソナリティ
今までずっと深掘りし続けたhacomono「らしさ」を表す一言を「伴走するソートリーダー」と定めました。
・ブランドアティチュード
ブランドパーソナリティーがどんなアウトプットからでも感じられることが必要ですが、では「そう感じさせる」ためにはどのような要素が必要かを噛み砕いた情報です。
「Visionary」「Empowering」「Clean」この3つにDos(ふさわしいこと)とDon’ts(ふさわしくないこと)を割り当てていきます。
このブランドアティチュードも、hacomono「らしさ」ある単語はもちろんですが、「覚えられるのか」「使いやすいのか」など、実際共通言語として利用していくhacomonoメンバーのことをかなり考慮しました。「かっこいいけど覚えられない言葉は違うね」という観点もhacomono「らしさ」を感じた覚えがあります。
そしてこのブランドアティチュードはタッチポイントやターゲット、シチュエーションによって配分を変えていくことが重要です。
Base Tone|ブランド表現として理想の状態
Flexble Tone|相手やシーンに応じて表情を変える状態
Mix Tone|コラボレーションなどで外部の要素が加わる状態
例えば、
会社の企業広告をつくるとき
採用関連のデザインを作るとき
障害情報を送るとき
全てのタッチポイントがブランディングにつながるものの、全て均等に「Visionary」「Empowering」「Clean」を表現するのは難しいと思っています。
この3要素はマストで抑えながら、1つ2つを際立たせることでhacomono「らしさ」を感じさせつつそのシチュエーションに合ったアウトプットができるというわけです。
ブランドガイドラインが完成した段階で、ここからデザインガイドライン、デザインシステムなど様々なルールを作っていくわけですが、このブランドガイドラインは全ての源になると考えています。
共有をしたhacomonoメンバーもいままでのアウトプットやデザインの際に、明確な拠り所が無かった分、様々なデザイン・メッセージに十分活かせそうだという話はもちろん、それだけでなく言動・行動・マインド、また社内でのコミュニケーションやチームづくりにも使っていけそうだというポジティブな意見もいただけて、ひとまず安心しています。
全てのアウトプットがブランディングに通じるものだとすると、例えば「これってVisionaryなデザインかな」「これってCleanな言動だったかな」というように、ブランドガイドラインを活用することが息を吸うようにできるまでやり続けることが一番大切なことだと思います。
これから息の長い企業になるためにも、hacomono「らしさ」を育てていきたいです。
カウシェ
Kana:完成したブランドガイドラインの一部を抜粋して掲載します。
お二人とも、ありがとうございました。
カウシェ、hacomonoがゼロから創り上げた「スタートアップのブランディングの舞台裏」について、いかがでしたでしょうか。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
カウシェ
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hacomono
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