「改正少年法,少年を厳罰するべき⁉」新科目公共で学ぶ探究のトビラ(9)
人間社会では,必ず意見や考え方が対立します。解のない問題や課題が現代社会では増え続け,これからはコミュニケーションを通じた共に納得できる解を見いだす姿勢や態度がますます求められます。中高社会科教員経験のある大学教員です。生徒や学生たちとの授業実践,互いの根拠や意味を問い合う対話による探究活動を紹介します。諸学校での授業活用はもちろん,理解しやすい身近な題材にしていますから,友人同士や家族団らんで語り合ってみてはいかがでしょうか。
改正少年法@2022年4月施行
2022年4月,改正民法が施行して成人年齢が18歳に引き下げられました。一方,少年法は,18・19歳を引き続き保護の対象にしますが,「特定少年」と位置付けて特例扱いとするようにします。
少年法は,少年の健全な育成を目的にしているので,刑罰よりも立ち直りを重視しているためです。しかし,これまでよりは扱いが厳しくなります。
特定少年の扱いは!?
主な変更点は,次の2点です。
①これまでの故意に人を死亡させる殺人や傷害致死に加えて,強盗や強制性交,放火などの罪(法定刑下限1年以上)が追加されます。
②これまでは,少年の実名報道を禁止していましたが,特定少年の実名報道が可能になります。
厳罰化すべきなのか!?
少年による残虐事件では,実名がオープンになる事例もありました。神戸市児童連続殺傷事件(1997年)では,週刊誌での顔写真の掲載に至りました。山口県光市母子殺害事件(1999年)では,顔写真掲載の本が出版されましたが,裁判所の判決は違法とはなりませんでした。これらは厳罰化へ向ける動きとも読み取れそうです。
厳罰化ではなく,適正化!?
犯罪被害者からなる団体などでは,今回の法改正を適正化と評価しています。「凶悪犯罪を起こせば,実名報道は伴うものであるということで促せる自覚」「名前が出たからといって,社会で働きにくくなるなどとは理由にならない」などの意見表明がなされています。匿名であることが,犯罪抑止力の低下につながるとも考えらます。
立ち直り視点からどう考えるか?
犯罪少年の立ち直りを支援する団体では,今回の法改正は立ち直りの妨げになるとしています。「現代社会では,実名報道が本人だけでなく,家族への誹謗中傷につながる」「信頼できる大人(少年院職員や保護司など)との出会いが更生のきっかけになるが,機会が減ってしまう」などの意見表明がなされています。あくまでも,少年の健全育成が軸に据えられています。
日弁連は報道に対する慎重論
日本弁護士連合会は,今回の法改正について,慎重に検討するべきと指摘しています。特任,実名報道はインターネット上,半永久的に閲覧できることから,少年の更生の妨げになってはならないとして,十分に配慮が必要であるとしています。
今回の少年法改正は,中庸論?
公職選挙法改正による18歳の有権者,民法改正による18歳の成人は,18・19歳という若者の自己決定権を尊重して,積極的な社会参画を促すという目的があります。
少子化が急速に進行しています。若者の社会参画,若者による社会形成は,これからは必要不可欠ともいえるでしょう。
今回の法改正は,オールオアナッシング策をとらずでした。これから検証を積み重ねて,見直しが必要になるでしょうね。
探究とは…
①自分で課題を見いだす
②解のない問いと向き合う
③人としての在り方生き方を追究する
④他者と共に望ましい社会形成に参画する