「安楽死を認めるか⁉」新科目公共で学ぶ探究のトビラ(10)
人間社会では,必ず意見や考え方が対立します。解のない問題や課題が現代社会では増え続け,これからはコミュニケーションを通じた共に納得できる解を見いだす姿勢や態度がますます求められます。中高社会科教員経験のある大学教員です。生徒や学生たちとの授業実践,互いの根拠や意味を問い合う対話による探究活動を紹介します。諸学校での授業活用はもちろん,理解しやすい身近な題材にしていますから,友人同士や家族団らんで語り合ってみてはいかがでしょうか。
安楽死とは!?
安楽死とは,「助かる見込みのない病人を,本人の希望に従って苦痛の少ない方法で,人為的に死なせること(広辞苑)」です。死期が迫った末期患者に対して,医師などが薬物などを用いて,死期を早めます。
現在の日本では,法として認めていないので,安楽死に携わった医師は殺人罪に問われることになります。
安楽死賛成論には!?
そもそも人間には生きる権利とともに,死ぬ権利を有するという主張があります。近年,自己決定権が確立されつつあり,自らの死を選択することも自己決定の一つととらえることもできるでしょう。
安楽死によって,肉体的・精神的な苦痛から解放することができます。また,長期間の入院は経済的な負担となるため,その負担を軽減することもできるでしょう。
安楽死反対論には!?
安楽死が認められると,末期患者や高齢者に対して,周囲の人間が安楽死を望むことがありえます。周囲からのプレッシャーでやむを得ず死の選択に追い込まれることになりかねません。また,病気や障害をもって生きることを否定的にとらえるようになれば,差別を助長するようになるかもしれません。
世界では!?
世界で安楽死を合法化したのは,オランダであり,2000年には確立しています。ベルギー,ルクセンブルクも2000年代です。2010年代には,カナダとオーストラリア,2020年代になると,スペインのほか,ニュージーランドでは国民投票で賛成多数となり施行されることが決まっています。近年,欧米では安楽死を受け入れる傾向が強くなってきています。
日本では!?
日本では,賛否両論が入り乱れている状況といえます。日本人には,「死」をテーマに語ることがタブー視することがあるかもしれませんが,若い世代の方々は積極的な議論を通じてこの課題と向き合うことを期待したいですね。
探究とは…
①自分で課題を見いだす
②解のない問いと向き合う
③人としての在り方生き方を追究する
④他者と共に望ましい社会形成に参画する