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「卵の飼育はケージフリーがいいの !?」新科目公共で学ぶ探究のトビラ(1)

人間社会では,必ず意見や考え方が対立します。解のない問題や課題が現代社会では増え続け,これからはコミュニケーションを通じた共に納得できる解を見いだす姿勢や態度がますます求められます。中高社会科教員経験のある大学教員です。生徒や学生たちとの授業実践,互いの根拠や意味を問い合う対話による探究活動を紹介します。諸学校での授業活用はもちろん,理解しやすい身近な題材にしていますから,友人同士や家族団らんで語り合ってみてはいかがでしょうか。

ケージフリーとは!

 ケージフリーとは,採卵鶏を平飼い,放し飼いすることです。卵を産む鶏が自由に地面を歩き,羽を広げ,ケージに閉じ込めないようにすることです。昨今,ケージフリー宣言を発する企業が増えています(世界で1815企業,アニマルライツセンター調べ,2020年2月時点)。


 家畜であっても命ある動物が狭いケージに入れられ続けるのは,ちょっとかわいそうな気もしますね。

ケージフリーとアニマルウェルフェア(動物福祉)

 世界では,家畜のストレスや苦痛を軽減する飼育環境を目指す動きが盛んになりつつあります。これがアニマルウェルフェアという考え方です。EU(ヨーロッパ連合)ではケージ養鶏を禁止しており,アメリカでも多くの大手企業がケージフリー卵への切り替えを宣言しています。


 現代の企業には,環境や社会への配慮が求められるようになりましたので,企業価値向上の戦略として取り組まれているケースも増えつつあるようです。

ケージフリー卵は安全でない⁉

 日本でもケージフリーは浸透しつつありますが,ケージフリー卵の安全性などに疑問を呈する見方・考え方が示されています。ケージ飼いにこだわる日本企業もあるので,ケージ飼いのメリットを整理してみました。
①行動範囲の制限により,害虫を食べない 
②効率的なフン処理で,衛生的 
③一羽一羽容易な把握により,健康維持管理が可能
などが挙げられていました。

 卵かけごはんのような卵の生食は日本の代表的な食文化と言っても過言ではありません。諸外国では見られない生食文化の日本では,衛生管理が徹底しやすいケージ飼いも評価されそうです。

生食にはケージ飼いが優位?

 日本では生食するため,ケージ飼いでは卵とフンを完全に分離して生産するとのことです。鶏のお尻部分の床は網状になっています。フンは網の間をそのまま落ち,卵は傾斜のある網の上を転がし集卵していきます。こうして卵とフンの接触を最小限に抑えています。


 しかし,ケージフリーでは鶏は自由ですから,どこにでもフンをして,卵も産み付けます。卵とフンの接触は避けられないことになりますが,しっかりとした消毒がなされることになりますね。

アニマルウェルフェアと経済効率性 両立は可能か?

 日本の卵は「物価の優等生」と表現されることがあります。私たちが手にする商品の多くは,長期間で見ると価格上昇しているにもかかわらず,卵はその上昇幅が小さいためです。ここには,徹底した生産効率性という生産者の努力が存在します。

 狭い網の檻(おり)(バタリーケージと呼びます)での飼育は,大量生産を可能とし,一括管理による安定供給を実現しました。卵を安く買える理由は,ここにあります。

 本来,自然界の鶏は止まり木で休息をとります。しかし,養鶏は一生,止まり木で休むことなくエサを突き続けて卵を産みます。檻から出るのは卵を産めなくなったときであり,その後すぐ,廃鶏と呼ばれて処分(殺)されます。

 これはメスの話で,採卵鶏から産まれてくるオスは,さらに惨(むご)く見えてきます。オスは肉食には適さないため,生後のヒヨコのまま,その日のうちに処分されます。このような実態から,動物(鶏)福祉の重要性が叫ばれるのは,当然のことといって良いでしょう。

日本での選択行動はどうあるべきか?

 倫理上,問題視されることのあるオスヒヨコの殺処分の削減のため,卵内選別という技術が開発されつつあるようです。卵のうちにオスとメスを選別し,卵での処分により,苦痛を軽減しようとしています。

 メスヒヨコは,ケージフリーかケージ中のどちらかで,人間のため卵を産み続けるだけです。今日も私たちが口にしたかもしれない卵。どう飼育していくべきかなのか,探究してみましょう。

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