「地方鉄道の存続は⁉」新科目公共で学ぶ探究のトビラ(12)
人間社会では,必ず意見や考え方が対立します。解のない問題や課題が現代社会では増え続け,これからはコミュニケーションを通じた共に納得できる解を見いだす姿勢や態度がますます求められます。中高社会科教員経験のある大学教員です。生徒や学生たちとの授業実践,互いの根拠や意味を問い合う対話による探究活動を紹介します。諸学校での授業活用はもちろん,理解しやすい身近な題材にしていますから,友人同士や家族団らんで語り合ってみてはいかがでしょうか。
地方鉄道の現状
鉄道は私たちの生活に欠かすことができません。しかし,全国の地方鉄道は,人口減少に加えて,新型コロナウイルス感染拡大による利用者の落ち込みも重なり,赤字を抱えて存続が危ぶまれる路線が出てきています。
地域鉄道のあり方に関する検討会設置
政府は2022年2月に地域鉄道のあり方に関する検討会を立ち上げ,同年7月25日に提言を取りまとめました。ここでは,輸送密度という概念を用いながら,検討が進められています。
輸送密度とは?
輸送密度とは,1㎞当たり一日に平均何人乗客を運んだかを示しています。鉄道は長い区間を乗る人もいれば,短い区間を乗る人もいるので,すべての乗客が乗車した距離を合わせて,1㎞当たり平均で何人が乗車したかで計算します。それらが一覧で表わされました。
すぐに廃止なの⁉
今回の提言は,特定の路線を廃止にするなどを目的としていません。しかし,輸送密度1000人未満の区間を対象に,国が中心となって,自治体や鉄道事業者も参加する形で協議会を設置するべきとしています。
協議会ではどんな話を⁉
利便性や持続可能性の向上が議論の中心になることでしょう。バスやBRT(バス・ラピッド・トランジット:バス高速輸送システム)への転換,自治体と鉄道会社とで運営を分割する上下分離方式などへの見直しが検討されることになっています。
鉄道開業から150周年
2022年は日本で初めて新橋―横浜駅間鉄道開業から150年の節目を迎えました。地方鉄道は赤字・黒字の決算ありきで語りがちですが,輸送密度という地域の役割の担い度という視点から考察することに意義はありそうです。これを起点に,地域をどう活性化するかという発展的な議論を期待したいものです。
探究とは…
①自分で課題を見いだす
②解のない問いと向き合う
③人としての在り方生き方を追究する
④他者と共に望ましい社会形成に参画する