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スルースキル
いつの頃からか、イヤな言い方をされてもサラリとかわすスキルを、スルースキルと呼ぶようになりましたね。
そういえば、こんなことがありました。
ある鉄道会社の駅で人身事故が発生。
混雑する路線だったので、振替輸送の乗り換えで、改札は乗客でごった返していました。
振替輸送の手続きがよく分からない中、なんとなく皆についていき、どうにか自宅最寄りの駅まで乗ってきたのでした。
私の前に、駅員に改札横のインターホンで相談している高校生らしき生徒さんがいました。
(インターホンで違う駅出口近くの駅員詰め所につながる仕組みのようです)
聞こえてくる内容から、私と同じで、人身事故での振替輸送でこの駅まで来た様子でした。
事故発生を知らず、ICカードで入場。
乗車中にその路線の先の駅から、振替輸送が始まったことを知り、急遽、振替輸送実施中の別の鉄道会社へ乗り換え。途中の駅は全てタッチ無しで改札を通してもらったらしい。
終着駅は振替輸送範囲外で定期券の範囲内。
乗換時の出場記録無しのエラーで降車不可になりました。終着駅の駅員に事情を説明して入場記録消去をお願いした、という経緯のようです。
すると駅員がインターホン越しに
「振替の時はタッチしたらだめだよ!」
と、ずいぶん厳しい口調で生徒さんの不手際を指摘しているのが聞こえてきたのでした。
この駅は人身事故が発生した電鉄会社の駅。
駅員が振替輸送で、同様の事後対応が大変だったとは思いますが、相談して来ている生徒さんは巻き込まれた乗客です。
なぜ、乗客がそこまで言われないといけないのだろうと思いました。しかも、大人じゃないからだと思いますが、インターホンからの声に敬意は感じられませんでした。
振替輸送で混乱する駅の状況は、大人でも正しい対応は難しいです。
乗り換え駅には、長い行列が出来ているので、改札で多忙を極める駅員さんに、自分の事情を相談しに行ける雰囲気ではありません。
もし、相手が私のようなおっさんでも、同じような口調で叱るのだろうか?と疑問になりました。きっと、しませんよね。
厳しいダメ出しが目に余ったので、「もう少し口調に気をつけないと、お客さん減るよ」と行列の後ろから駅員にひとこと言ってやろう、と思った矢先。
生徒さんは駅員に反論することなく、「すみませんでした。入場記録を消していただけますか?」と丁寧に伝えて、改札をあけてもらい、爽やかに降車していきました。
ひとこと言ってやろう、と思った自分が恥ずかしくなりました。
噛みつくだけが能じゃない。
生徒さんの柔軟性の高さ。
颯爽と「記録を消して改札を出る」という目的を最短距離で果たした生徒さんの人間力の高さに脱帽。
カチンと来る一言を言われても、自分から一歩譲って相手の言葉のトゲはサラリとかわし、柳の木のようにしなやかさのある対応をすることが、一番早く改札から出られるのです。
私の方が「駅員の態度がケシカラン」とカリカリしていたくらいです。
近年、自分の頑固さが強まってきているように感じるときがあります。
年を重ねたせいでしょうか…
振り返ると、私もこの駅員と同じように、敬意に欠ける対応をされたとき、腹が立って反論し、解決に時間がかかり、非常に後味が悪かった思い出があります。
嫌なことを言われたときにどう動けば良いか。
目的を見失わず、自分のしなやかさで問題を解決した生徒さんの鮮やかなスルースキル。
生きたお手本を目の当たりにして、私も心の柔軟性を取り戻し、スルースキルを磨かないといけないなぁ、と強く感じたのでした。
振り上げた拳を、そっと下ろす勇気。
その勇気が、世の中をもう少し寛容にしてくれるような気がします。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
#カツオnote #スルースキル