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えたーなる•すのー
しんしんと、降る雪。
天から、ふわふわと降ってくる。
辺りがしーんとなる、その瞬間が好き。
わたしが、わたしでいられる時。
しんしんと、降る雪。
ゆきの『山の神様は言ったわ、男を一人差し出しなさいって、元気で強くたくましい男を探して、山の神様に差し出さなければっ。』
むかーしむかし、きみたちの知らない世界のお話し。
あるところに、太陽と言う名前のきこりがおりました。そのきこりは、村一番とても元気で、たくましく、そして村一番、心優しいのでした。
今日も、村にいるおばあちゃんのお風呂の薪割りをしたり、村長さんの肩叩きをしたり、お隣さんの畑の手伝いもしました。いつもより沢山良い事をした太陽は、
太陽『今日も一日つかれたなー。どうやら雲行きが怪しい、降りそうだな。さぁ、帰って最後にゆっくりしよう。』
と、太陽は、満足げに、にこにこと自分の家へと帰りました。
その晩の事、
トントン。
と、戸を叩く音がします。
太陽『ん?こんな夜中に誰だ?』
ゆきの『や、夜分にすみません。』
と、若い女の人の声がします。
太陽が、そっと戸を開けると、そこには、肌の真っ白な、綺麗で短めの黒髪に、真っ白な着物を着た、とても美しい女性が立っておりました。
太陽『あ、あ、あの!あああ、あなた様は?』
ゆきの『や、ややや夜分にすみません!わ、わわわたしは、ゆきのといいましまして!』
太陽『ましまし?あ、ゆきのさんでごぜーますか?』
ゆきの『はいな!ゆきのでごぜーましてん!』
そうなのです、二人共、恐ろしく、恥ずかしがりやさんなのです。恥ずかしさのあまり、言葉がちんぷんかんに。なんだか、面白そうなので、話を進める前に、もう少しこの二人のやり取りを見てみましょうか(笑)
太陽『す、すっばらしいお名前でがんすな!せっしゃは、太陽と言うなりよ。』
ゆきの『た、太陽はん!これまたスッバラシーナマエネー!』
太陽『ユーは、いったいこんな夜になんのようかね?』
ゆきの『あ、あ、あの、あなた様をもらいにきましたなりよ。わたしは、雪女で、山の神様に捧ぐためっ!!』
太陽『雪女!?もらいに?山の神様、捧ぐ?』
ゆきの『あちゃー、言っちゃった。』
あちゃー、言っちゃいましたね。なんてドジ。そろそろ、本編へ、もどりましょうかね。
ゆきの『と、突然の失礼お許しください、わたし、人間の男性を見るの初めてで、いきなりほんとごめんなさい。もしよかったら、いけにえになりませんか?』
太陽『嫌です。』
ゆきの『ですよね〜(涙)そうですよねー、いきなりそれは、ないですよねー!あー、じゃーもう力ずくで、』
太陽『わ、ちょ!まさか、ぼくを凍らせるのですか!?ん?』
と、ゆきのを見ると、いつの間にか縄を持っているではありませんか!
ゆきの『この縄であなたを縛って連れていくのです!!』
太陽『縄で!?え、凍らせたほうが早いじゃないですか?』
ゆきの『あ、そうですよね、いいんですか?とても冷たいですよ。』
と、太陽、あっという間にゆきのの隙をついて、縄を奪い!
太陽『えいっ!!』
と、これまたあっという間に、ゆきのを縛り上げました!
ゆきの『えーん、えーん、やらかしちゃったよー、山の神様に怒られちゃうよー。て、なんかとても熱いよー!助けてよー。』
太陽『おドジな雪女め、もう悪さしないと言うなら、助けてやる!』
と、太陽は火のついた薪を雪女に近付けました。
ゆきの『もう、しませんし、だから、許して!というか体がとけちゃうよー、あ、あれれ、痛いよ、熱いよ!助けて〜。』
と、なんとほんとに、ゆきのの体が溶けかかっているでは、ありませんか!
太陽『え、ちょ、ご、ごめん!』
と、太陽はびっくりして急いで火を消しました。
ゆきの『わたしを外に出して。お願い。このままだとわたし、なくなっちゃう。』
太陽『わかった!』
と、心優しき太陽、縄をほどき、半分溶けかかっている、ゆきのを外に出しました、外はいつの間にか雪が降り積もっており、しーんとしておりました。
外に出されたゆきのは、みるみるうちにもとの体に戻っていきました!
ゆきの『今だ!』
と、ゆきのが口から冷たい息を吹きかけようとした時に、
太陽『良かったー、良かったー、ゆきのさんが、とけてなくならないで』
ゆきのは、とっさに笑い出しました。
ゆきの『アハハハハハ、』
太陽もつられて、一緒に笑い出しました
太陽『ア、アハハハ!』
ゆきの『あ、あの太陽さんは、わたしが怖くないの?』
太陽『山の神様に捧げられるのは、怖いけど、ゆきのさんは、なんだか、温かい。』
ゆきの『えー、わたしがあたたかい?雪女なのに?太陽さんて、面白い。アハハハハハ。』
太陽『綺麗な、笑顔です。』
ゆきの『え、な、なな、』
太陽『あなたのためなら、よろこんで捧げられます。』
ゆきの『えっ?な、何言って』
太陽『ぼくは、昨年、妻をなくしました。もう、このまま生きてくのは、つらいんです。』
ゆきの『そんな。』
太陽には、周りからおしどり夫婦と言われるくらい、仲良しこよしな、妻の『ふゆ』がおりました。
ふゆは、はやり病に負け天国へと言ってしまったのでした。
太陽『ごめんなさい!似てるんです、何もかも、白い透き通った肌も短めの、綺麗な黒髪も、何よりも、笑顔が、、笑顔が、』
と、泣きくずれてしまいました。
ゆきの『なんて、なんてかわいそう、けど、わたしは掟をやぶれない。どうしよう。』
ゆきのは、そっと太陽を抱きしめました。
太陽『温かいなー、温かいなー』
太陽は、震えながら泣きながら言いました。
ゆきの『うそつき、太陽さんの嘘つき。わたしがこのまま、あなたを抱きしめたままでも、あなたは、凍ってしまいますよ。』
太陽は、何もいいません。
ゆきのも泣いています。
ゆきの『どうして、わたしが泣くのでしょう?けど、あなたを見ているととても悲しい。』
太陽『ふゆ』
と、ゆきのの手を握りました。
ゆきの『おまえさん。』
と、ゆきのも、太陽の手を握りかえしました。
太陽『約束したんだ、ずっとずっとずっと一緒だと。生まれ変わってもずっとずっとずっと一緒だと。』
ゆきの『そうね、そうですね、おまえさん。』
太陽『ふゆ』
ゆきの『けどね、わたしは永遠にはあなたといられない。ただ、今、この時だけは、いてあげようね。』
太陽の体は、だんだんと凍っていきました。
ゆきの『ふゆさんに、よろしくね。』
太陽は、静かにうなずき、とうとう全て凍ってしまいました。
ゆきの『あ、笑ってる。』
ゆきのは、降り積もった雪に大の字になり、降りしきる雪の空をみあげました。
ゆきの『わたしが、わたしでいられる時。
しんしんと、降る雪。』
雪は、静かに静かに、天からふわふわと、降り続いていました。
ゆきの『永遠に、この瞬間があればいいのに。ね、おまえさん』
お〜しまい。