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[読書感想文】今野敏『任侠楽団』

あぁ、面白かった。
最初から最後まで、ただワクワクして読めました。
問いかけてこない、思考や解釈を求められないって楽。

ヤクザの組長が内紛で分断しかけているオーケストラを一つにまとめ
定期公演を成功させるという任務を請け負う物語。
請け負うのは組長阿岐本雄蔵と阿岐本組代貸日村誠二とその子分たち
暴対法や暴力団排除条例のせいで稼ぎの手段が削られ
阿岐本組はすぐやる課のような何でも屋みたいな暴力団なのだ。
そんなのはホントはないと分かっていても
この物語にグイグイ引き込まれていきました。

堅気のコンサルタントという名目で楽団に潜入し内情を探ると
常任指揮者が交代したことでベテランと若手の間で軋轢が生じたのだ。
楽団のメンバーの情報やオーケストラの諸々を教えてくれるのは
ステージマネージャーの片岡静香さん、女性だ。そしてすぐ二人が堅気じゃないことに気づく。そりゃそうだww。
対立の中心人物はベテランのクラリネット奏者峰岸と若手のフルート奏者
坂上である。
木管楽器のパート練習中坂上は細かく峰岸にプレッシャーをかける。
日村は気に入らない。任侠の世界ではあり得ないから。若い者が目上の存在をぞんざいにするなんて。

阿岐本と日村は私に良いことを沢山気づかせてくれた。

ネット社会の悪影響なのか、気にしなければ通り過ぎていくことを
いちいち取り上げようとする人たちが増えてきてる気がする。とか。

対立というのは当事者同士の間で直接起きるとは限らない。
抗議に対する抗議、そこに対立の連鎖が生まれる。とか。

物事はなるようにしかならない。あれこれ心配しても始まらない。
何が起きても楽しむ。そうすりゃ人生明るくなる。とゆーこととか。

野心ってのは諸刃の剣で、野心があるから頭も使うし努力もする
でもそのために人を蹴落としたりよこしまなことをしたりする。とか。

全部なるほどなぁと思えました。
分かっていたようでも言葉にするとストンと落ちてきた気がしました。

そして結局問題は無事解決するのだけど(かなり端折っちゃいましたが)
そこでのキーワードは
みんな「音楽が好き」ということ。

やっぱりなぁ。好きは最強かぁ。

最後になったが、本の中盤日村が子分たちの心情を思い遣る場面がある。
彼らなりに「もし堅気だったら」社会参画したい。世の中と関わりたいと
密かに思ってることに気づき、それがないものねだりだから切実なんだ。
とチャンスを与えようと考えるこのシーンが私は好きだ。

やっぱり好きは最強なのである。

#読書感想文

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