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人事のお仕事⑤ 人事が警察みたいな顔をするとき

今日は天気がよかったので、久しぶりに布団を干してパンパンしたところ、ホコリでくしゃみが止まらなくなりました。
ちなみに、干した布団をパンパンと叩いた時に出るホコリは、ほとんどが布団の繊維が砕けたものが舞っているそうで、ダニの死骸などの除去は掃除機で吸うのが効果的らしいです。むしろ、死骸は叩かれると粉々になり、ハウスダストの原因になるとかならないとか。


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さて、今日は人事のお仕事シリーズから、ちょっとドロっとした話。
題して「人事が警察みたいな顔をする時」です。


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私は前職でHRBP(Human Resource Business Partner)という肩書きでした。
平たくいうと人事。

前職でのHRBPの仕事はざっくりというと、
人事・労務を浅く広く対応する何でも屋
人事の中では給与や勤怠などのオペレーションというより、現場&マネジメント寄りの立ち位置という感じでしょうか。
#経営者の人事的パートナーとなるのがHRBPの本質です

※人事の仕事の内訳について、ざっくりですがこちらにあります。
https://note.com/katoshin_/n/n82bd50021526

さて、そんな何でも屋のHRBP業務の中で、私がたぶん得意だけど、あまり好きではない業務がありました。

それは、社内問題の対応です。
人事部には、社内の色々な問題に関する相談が寄せられます。

社内問題とは?

社内問題というと、かなり幅広いのですが、
例えば、こんなものがあります。

・勤怠不良社員の対応、フォロー

・成績不良社員の対応

・退職関連

・ハラスメント関連

・横領、窃盗、その他の不正

・その他、社員間のトラブル(同僚間、上司ー部下間)

・社員個人の問題(給与差し押さえ、刑事事件、家庭内問題 など)

・協力会社とのトラブル

他にも色々ありますが、
記憶に蓋されているのかスっと思い出したのはこんな感じです。

色々な問題がありますが、
上記の中で、必ず人事が対応しなければならない案件はありません。
企業によっては、現場の管理職の方が対応しているケースも多分にあります。


社内問題の対応方法

私がHRBPとして、これらの案件の相談を受けた際の対応方法はいたってシンプルです。

①申立者(相談者)の話を聞く

②申立者の希望や、相談の内容によって、ヒアリングのみとするのか、何かしらの対応が必要なのかを判断する

③(対応が必要な場合)関係者から事実確認をする

④確認された事実から、労働法や社内規定の中で抵触するものがあるかどうかを確認する

⑤④にて何かしらの法令や規程に抵触するものがあれば、処分内容を検討し、決定する。

⑥⑤で決定した処分を実行する

⑦状況に応じて、社内周知や注意喚起を行う

⑧申立者に対応を行った旨を伝える⑧申立者に対応を行った旨を伝える

例えば、セクハラの相談があったとして、
「いつ」「どこで」「誰が」「誰に」「何を」「どのように」「どの程度」行ったかを具体的に確認します。

ちなみに刑事裁判において「推定無罪」という言葉がありますが、
これは人事の世界も同様で、相談を受けた"問題行為"について、具体的な事実確認が完了するまでは、注意も処分も出来ませんし、
場合によっては、申立人が虚偽申告をしている可能性まで鑑みて、慎重に行動する必要があります。

推定無罪とは
「検察官が被告人の有罪を証明しない限り、被告人に無罪判決が下される(=被告人は自らの無実を証明する責任を負担しない)」ということを意味する。(wikipediaより)


大変なこと① プライバシーを守る

相談を受けてから、事実確認を行う際に、
とても重要なことがあります。

それは「プライバシーを守ることです」

ちなみに、守らなければならない対象者は3者います。
・申立人(相談者)
・証言者
・被疑者(問題行動の行為者)

まず申立人について、
特にハラスメントの被害など、公にされたくないようなこともありますし、特に配慮が必要です。

加えて、証言者は、
その証言の内容によっては、
被疑者もしくは申立人から「自分にとって不利な証言をした」と逆恨みされてしまうリスクがあります。

最後に、被疑者について、
前述の推定無罪の考えもありますし、仮に問題行動の事実があったとして、何かしらの処分を受けたとしても、その内容は人事情報として厳秘にされるべきものです。
処分は罰を与えるためのものではなく、戒めをもって問題行動を改めてもらうためにあり、
行動が改善されれば、それまで通り業務を行える環境を守ることも必要です。

3者いずれについても、
発言内容や確認された事実が当人の問題解決以外に対し、不要な影響を与えないよう、配慮が必要です。

具体的には、それぞれとのコミュニケーションは個別面談で行い、
その場で共有される内容については守秘義務を守ることを約束し、
破った場合には、義務違反として何かしらの処分となる可能性がある場合も伝えます。
(綺麗な言葉で書いていますが、
 抑止のために多少の脅かし的なトーンになります)


大変なこと② 証言が食い違う

特にハラスメント問題に関してありがちなこととして、相談内容と事実が一致しないということがあります。

現在の一般的な判断として、
(言動の事実がある場合)
セクハラに関しては、被害者がどのように感じたかという点が判断のポイントとなります。

パワハラについては「業務上の指導の範疇かどうか」という点が論点になります。

稀に一部始終を録音していたりする「手練れ」もいますが、
多くの場合は、本人のメモだけだったり、
下手すると記憶だけのこともあり、且つ目撃者もいないようなケースがあります。

これが厄介です。


相談者は本当に辛くて相談をしてきていたとしても「証拠、第3者の証言、それに準じるもの」が無ければ、推定無罪の原則を優先せざるを得ません。

そういった場合、
相談者に対しては問題行為の履歴が確認できるようにアドバイスし、
また被疑者の上司に対して要観察の注意をして、一旦は案件を終了します。
#でも大体は何かしらの証言が得られるので事実確認できます
#稀に上司をハメようとデッチあげの相談を持ってくる強者もいます


私にとって大変だったこと

ここまでお読み頂いた方は、なんとなくお気づきかもしれませんが「推定無罪」や「証言者」など、刑事ドラマのような言葉がチラホラあります。

そう、警察みたいなことするんですよね。同じ会社員なのに。
#実際の取り調べとか受けたことはありませんが

面談して、ヒアリングして、調書とって、事実確認して、しかもそれを1案件につき、5~10名くらいに行うのです。

さらには現場に足を運んで様子を見ることもありますし、メールやシステムの履歴から、何かしらの事象が確認できないかを調査することもあります。

前職は問題がそう多い職場ではありませんでしたが、それでも年に何件かこういった案件が発生していました。

人事相手にハラスメントを仕掛けてきたり、
問題を直接的にふっかけてくるような強者はほとんどいないので、皆さん「良い社員」なのですが、人事以外の関係性においてはそういったことがたまにあります。

もしどんなに普段から親しく話していた社員であっても、問題行為を行ったら、内容に応じて公平に処分しないといけない。
相手が親しくしていた人だと、これがけっこう心にズーンとくる。

となると、どの社員に対してもほどほどの距離を保たないといけない。
こういう見えない線引きをしないといけないことは、個人的にはけっこう大変でした。


ちなみに冒頭で「得意だけれど、あまり好きではない」と書いたのは、理由があります。

私自身は面接官としての経験が他の人事の方よりは多くあったので、人の話を聞きながら、
「どこまでが事実で、どこからが主観(想像)なのか」を切り分けるための情報収集が得意でした。

そういう点で、
聞き取り調査で細かい情報を集めて、
問題行動の事実を特定するのは、得意だったと思います。

一方で、
被疑者の社員を内面では疑いながら、事実確認されるまでは何もない顔で接したり、普段から距離を保つ点については、自分自身の気持ちの切り替えが上手くなかったように思います。

また、ハラスメントの相談などは、
申立者の主張の半分くらいは色々な”愚痴”だったりします。
申立者は感情的にもテンションが上がっているので、その時はいったん受け止めます。

しかし私は愚痴を聞くのはあまり好きではないので、聞き取りが終わるとドヨ~ンとなることがよくありました。
そういう点が「好きではない」理由です。


人事で労務を担当されている方の中には、
こういった社内問題の対応の専門家みたいな方がいますが、本当に尊敬します。

それは、社内問題を円滑に対応するためには、
誰が対象者であっても、公平に対応できる正義感
何がどの程度の問題なのかを切り分けるための、過去の裁判例や労働法に関する知識、
その問題及び対応が会社にとって将来的にどのようなリスクとなるのかを察知する洞察力
さらにはどのような対応をすることが、当人と組織にとって良いのかを見極める力
そしてどのような決着であれ、申立人、被疑者ともに納得してもらうコミュニケーション能力といった、
人事としての高い総合力が必要な仕事だからです。

まとめ

今日は、人事のドロっとした話ということで、社内問題の対応について書いてみました。

人事業務の経験があまりない方からすると、
「人事=採用・評価」みたいなイメージを持たれる方も多いように思いますが、実際にはこういうドロっとして地味な仕事もあります。


社内問題の発生数や内容は企業によって全く異なりますが、人事職を目指される方は、会社を創る系のキラキラ業務だけではないことを知っていただけたらな―と思います。


もし人事職を希望される方がいれば、この一冊をお勧めします。
私がHRBPになった時に一番最初に人事の業務把握のために買った本です。
人事業務について、網羅的に書かれています。
本屋さんでサラっと立ち読みでもしてみてください。


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