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新聞社説は各社とも日銀の追加利上げに慎重姿勢

1月24日の日銀による追加利上げに関する、主要紙の社説を読み比べました。
見出しは以下の通りです。
日経:日銀はより精緻な利上げの戦略と対話を
読売:丹念に影響を精査してほしい
朝日:求められる精緻な判断
毎日:暮らしへの影響目配りを
産経:景気見極め丁寧に対応を
東京:「物価の番人」続けねば

「過度な円安に一定の歯止めがかかることも期待できる」(読売)、「日銀の説明は、大筋では理解できる」(朝日)など、今回の0.5%への利上げ自体に異論を唱える声はありませんでした。今後の金融政策が利上げ方向であるという点についても、「円安加速による物価高のリスクには引き続き注意が必要だ」(日経)、「金利水準は依然低く、アベノミクスによる経済構造のゆがみを取り除くには至っていない」(東京)と理由は様々ながら、コンセンサスがあるようです。

興味深いのは、「物価高に苦しむ国民」(読売)を憂慮しているにも関わらず、今後の利上げペースについて、「次に利上げすれば30年ぶりの水準となる。日本では久しくなかった局面」(産経)であることを背景に、各紙揃って、日銀に一層丁寧な分析に基づいた慎重な判断を求めている点です。
「物価高が長引き、実質賃金は安定的なプラスに至っておらず、節約志向は強まっている。(利上げで)消費者心理にさらなる悪影響が及ばないか」(読売)、「トランプ大統領の関税措置が大きな混乱を生む可能性」(朝日)、「金利引き上げは企業の借入金や住宅ローンの金利が上昇するため、景気の足を引っ張る要因になりかねない」(東京)など、実体経済の下振れリスクが意識されています。足許のインフレが(需要の過熱ではなく)原油や食料品価格の高騰、円安の影響を含むコストプッシュ型であるため、性急な利上げは適当でない、との理解がメディアにも一般的なのでしょう。

それにしても、 0.5%という、極めて低水準からの利上げ判断であっても、世論がこれほど慎重さ、精緻さを求めるのであれば、専ら短期金利を操作対象とするという意味での「伝統的な政策手段」のみに依存する金融政策では、身動きが取れなくなっていくリスクもありそうです。
そもそも世の中が日銀にあれもこれもと(金融政策以外で対応すべきことまで)目配りを期待し過ぎなのでは、とも感じますが、その期待に応えようとするならば、たとえば、①金利の変更幅を0.25%刻みにこだわらず、0.1〜0.125%刻みできめ細かく対応するとか、②6月で新規貸付を終える「貸出増加支援資金供給」や「⚪︎⚪︎支援のための資金供給オペ」などの量的な手段も(非伝統的と毛嫌いせず)合わせ技で併用していく、といった工夫が必要かもしれませんね。

ちなみに貸出増加支援資金供給については、日銀自身が多角的レビューの一環で、民間貸出の増加につながっていたとの評価をしています。


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