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飾りじゃないのよ 織り機は / 障害者福祉施設の文化遺産
「絶対音感をお持ちだと思うんですよ」
その施設のスタッフが、話しかけてきました。
訪れた障害者生活介護施設で、ユーミンの卒業写真のメロディ-。
その女性は、右手人差し指一本で器用に電子ピアノの鍵盤をたたきます。
「彼女、一回曲を聴いただけで、すぐ、ああして弾けるんです」
ボクが演奏を感心して眺めていると、他の利用者さんが次から次へリクエスト、彼女はそれに答えて、人指し指の演奏を続けました。
スタッフの方は満足そうにしています。
せっかく絶対音感があるかもってわかってるのに、人差し指一本の演奏で満足って、どうなん?
もったいないと思いました。
彼女がもっと演奏技術を広げる事ができたら、適切に専門的にアドバイスできる人が支援したら、ピアノ演奏を今以上に楽しめるのではないかと。
ボクはそう思いました。
⭐⭐⭐
色々な障害者施設を訪れると、よく目にする さをり織り機。
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ただ、立派に鎮座ましましていても、近々に使われた形跡が無い織り機、頻繁に出会います。
さをり織、やってはるんですねぇ
ちょっとイヤミな質問をすると、ほぼ予想した答えが返ってきます。
「以前は、さをり織のできるスタッフが居たんですが、今、誰もできる人が居なくて…」
ケースに入ったままのギターが、部屋のすみに、少しホコリをかぶって立て掛けてあったりします。
陶器を焼く釜のある事業所、
「以前は、焼けるスタッフが居たんですが…」も。
電子ピアノは、先の事業所のように、何とか存在意義を示してる所もあり、障害者施設の支援員さんには、保育士の方が多く、普段は布を被せてiPadの充電場所になっていても、クリスマスには活躍しているようです。
でも、利用者に弾き方を教えるまでには、いきません。
障害者にとっては遊び道具止まり、『趣味』を教えてくれるプロが居ない、たまたま得意なスタッフがいたときだけ、が実状です。
ボクは常々思っているのですが…
一般的に『趣味』と呼ばれる楽器演奏、ハンドメイド、料理、イラスト、芝居、カラオケ、釣り…
『趣味を持つこと』=『QOL』
過言でないと思います。
『趣味を持つこと』、『その利用者さんの趣味ですねん』と紹介できる位深める支援をSST(ソーシャル スキル トレーニング) に組み込めないかと。
○○教室、○○クラブ形式で、色々な選択肢、それを魅力的に提供できれば尚素晴らしい。
最近の障害者施設の利用者さん、
何したい? と問えば、殆どの答えは
ゲームしたい!かもしれません。
iPad使いたい!スマホ使いたい!
それも、目的はYouTubeかTikTokを観るだけのようです。
ゲームやYouTubeに子守りをさせていて良いのか?
教育者が言いそうな真っ当な意見も有ります。
でも、ゲームも今や eスポーツ なんて『趣味』に成り上がりましたし、YouTubeをアップできるスキルも立派に『趣味ですねん』。
『ただ遊んでる』から『趣味ですねん』へ、QOLの向上には、プロ、その道の達人の適切なアドバイスが不可欠では?
ボクはそう思います。
ところが、ボランティア精神に頼ってきた弊害か 福祉は奉仕、無料が当たり前、根強く蔓延っています。
その道の達人、 プロフェッショナルを備えるにはそれなりの費用も必要です。
なのに、QOLの向上は口先だけで、『趣味』に関しては、スタッフのスキル任せの施設も多く、それこそビジネス視点から、利用者の『趣味』を深める選択肢を備えていかないと、この先利用者離れが始まるかもしれません。
置いてきぼりに なりますよ
使われていない さをり織り機に出会う度、ボクはそう思ってしまいます。