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ミッシェル・オバマさんの演説を聞いて、アメリカらしさを思い出した

アメリカでは民主党の正式な大統領候補者を指名するための全国大会が行われている。久しぶりにミッシェル・オバマさんの演説を聞いて、スカッとした気分になった。

相変わらずよく通る声で、いかにも胆力があるって感じ。繰り返し訴えるのは、「良識と思いやりをもって、誰もが自分なりの成功や幸せをつかむチャンスがある社会」、そして「仕事や生き方、誰を愛するか、誰と結婚するか、何を信じるかを一人ひとりが自由に決めて、それをお互いが尊重する社会に向かって進んでいこう」ということ。

民主党がいつも言うようなことで、「そんなの単なるナイーブな理想論じゃない?」とシニカルな見方をする人は多いかもしれない。でももう、うがった見方とか、個人攻撃とか、嘘でも言ったもの勝ちとか、陰謀論とか、自分の味方じゃない人はみな敵だみたいな、恐怖感を煽って対立を深めるような雰囲気にはうんざり。

まだ実現できていない理想について希望をもって伝えてくれる声の方が、不機嫌な顔をして、暗い声で人を揶揄するようなわけわからないことを繰り返し言い続けるトランプさんの呪いの声よりずっといい。

それからミッシェル・オバマさんは、民主党の大統領候補になるであろうカマラ・ハリス現副大統領が、母親からいつも言われていた言葉を紹介した。「そこにただ座って文句を言うんじゃなくて、行動を起こしなさい」

ハリス副大統領の母親は、1958年、19歳で栄養学と内分泌学についてカリフォルニア大学の修士課程で学ぶために、インドからアメリカに渡って来た。博士号まで終えた後は生物医学の研究者として、アメリカで活躍をつづけた人だ。行動を起こした女性に育てられたカマラ・ハリスさんは今、初の米国女性大統領誕生に一番近いところまで来つつある。

ミッシェル・オバマさんは演説の中で、「アメリカは、行動を起こすの。小さくなることが答えじゃない。恐怖にかられて、分裂して、過去にしがみついて小さくなるのは、アメリカじゃない。前に進んでいくのが私たちのアメリカよ」と呼びかけ、喝采を浴びていた。

そうそう、私が28年前に来た時のアメリカは、なんだかいろんな人がいて、みんな勝手にいろいろと行動を起こして、あっちこっちでぶつかり合いながらも、わけのわからない熱量で前に進んでいたような気がする。そんなアメリカを思い出した。

トランプさんは、相変わらず「不法移民に国もカネも奪い取られ、極左がアメリカを破壊する」と恐怖心を煽り、「真のアメリカ」に戻るべく、50年前の価値観に合わない本は学校や図書館から追放し、保守的な価値観に合わない教育プログラムは禁じ、レイプであっても中絶は罪とし、それぞれが銃で自衛する社会環境を復活させたい様子。

私は「希望と自由と前進」を感じさせてくれる声に惹かれるけど、アメリカは初の女性大統領誕生へと前進できるかな。人間は本能的に恐怖感に強く影響されてしまうらしい。「味方でなければ敵」モードにはまって、トランプさんとともに小さな世界に籠城したいと思う人もけっこういるんだろうな。




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