東京少女、アメリカの田舎で生きる
私は、東京で生まれ東京に育ち、16でアメリカの田舎に一人で留学した。大学ではデザインを専攻した。そこで、田舎の暖かさを知ることとなる。
人もいない、ビルもない、遊ぶ場所だってない、ご飯を食べるところもろくにない街で、学んだことはデザインだけじゃなかった。
空気の綺麗さ、星の明るさ、暗闇の暗さ、人の温かさ、時間のゆっくり流れる音、またここに、帰ってきたいと思う気持ち。東京で生まれ育ったからこそ、田舎の素晴らしさがわかり、田舎で4年過ごしたからこそ、東京の偉大さがわかる。人の波に飲まれ、愛想笑いにも疲れた時が来たら、帰ろう、と思える場所がある。それだけで、人は強くなれるし優しくなれる。
私の大好きなamazarashiの曲、『帰ってこいよ』という楽曲に、こんなフレーズがある。
真っ黒な夜 真っ黒な夜でこそ思い出せ
生まれた町を 今年も花が咲いたよ
そう、私にとっての"生まれた町"はそれでも東京だった。
新宿の南口の思い出横丁沿いの道路の上にかかっている小田急百貨店の橋の上から見た景色を、私はまだ覚えてる。ここで、大学を卒業してアメリカで働く今でも、昨日のように思い出せる。大切な人に出会った、家族と喧嘩して逃げ出した、たくさん働いた、大嫌いで大好きなこの街を、ずっと心の中にとっておこうと、消えそうになったら思い出そうと何度も誓ったから。
今日も私の大好きな街を歩く人が、幸せであってほしい。強くいてほしい。ある日の私も、あの道を歩いて背中を押されたから。消えたい気持ちを、負けそうな気持ちを、当たり前のように飲み込んでくれたから。
死ぬ前に一度は、また戻りたい。いや、叶うなら東京で命尽きたい。
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