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居場所をオープンして多くの出会いが。目指すは「多くの人・経験・目標と出会える居場所」
Profile太田 蒔子(おおた まきこ)
ユースセンター起業塾/事業創造コース3期生
大学卒業後、株式会社図書館流通センターに就職。2018年、休職して独立行政法人国際協力機構のJICA海外協力隊に参加し、ソロモン諸島イザベル州教育局にて中学生の読書推進活動に携わる。
2022年より「ユースセンター起業塾/起業準備コース」1期生として、カタリバが運営するユースセンター「b-lab(ビーラボ)」で働きながら、地元にて中高生向けの居場所「ナッツアップ?」を立ち上げた。
2024年からは「ユースセンター起業塾/事業創造コース」3期生として「ナッツアップ?」を運営。現在、「一般社団法人子どものみらい開墾社」の設立準備中。
カタリバは2021年、10代の居場所づくりに取り組む人を支援するインキュベーションプロジェクト「ユースセンター起業塾」を立ち上げました。その起業準備コース第1期生である太田蒔子さんが、研修を始めてから実際にユースセンターを開設するまでを追った活動記を、全3回の連載でお届けしています。
最終回である今回は、2023年春、出身地の千葉県八街市に10代のための居場所「ナッツアップ?」をオープンした太田さんが、現在までに経験した試行錯誤、悩みと喜び。そして、目指していきたいユースセンターの形などについてレポートします。
活動記vol.1:JICA海外協力隊を経験した私が、10代の居場所づくりに挑むワケ
活動記vol.2:起業仲間をどう探す?1通のメールから思いがけない「出会い」と「チャンス」が
オープンして1年余り。関わってくれる人が少しずつ増えている
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――10代のための居場所「ナッツアップ?」を2023年4月にオープンして1年余り。現在の状況を教えてください。
オープン当初から週2日開館していて、デイタイムは10:30~14:30、アフタースクールは15:00~20:00。デイタイムは主に不登校生徒を対象にしていて、事前に親御さんとご本人が「ナッツアップ?」の見学と面談を行い、利用登録をしていただきます。でも、現在はまだデイタイムの利用がなく、この層へリーチしていくことが今後の目標の1つです。
アフタースクールは中高生世代であれば誰でもいつでも無料で利用可能で、出入り自由。2023年度の延べ利用者数は410名でした。今後は少しずつ開放日を増やしていきたいと思っています。
――オープン前はスタッフ集めに悩んでいらっしゃいましたが、すぐに集まりましたか?
去年はボランティアに応募してくれた学生3名と運営していました。でも、年が明けると皆、卒業論文や就職活動などで忙しくなって。
そんなとき、八街市で子どもの居場所に関する講演会が行われ、私も事例発表をさせていただいたのですが、そこで子どもの居場所に関心のある方々と知り合うことができました。現在はユースワーカーとして3名の方が来てくれているのですが、皆、その講演会でつながった方々です。
他に、絵や音楽などの得意分野を生かして不定期に中高生と交流したり、イベントを開いたりしてくださる方も増えています。また、リモートでプロボノとして参画してくれている2名は、今年から始めたプロジェクト「北総ミチゆくミライブラリー」のライターとして活躍してくれています。
――「北総ミチゆくミライブラリー」とはどういうものでしょう?
地域のちょっと年上の、おもしろいことをやっている方々を紹介するブログです。
私も八街出身で、中高校生のときは「都会に比べて何にもない田舎」と思って過ごしていました。でも今、ここに戻って活動してみると、若くして活躍している人がいっぱいいることを知りました。今の中高生にもそういう人が身近にいることを知ってほしくて、このプロジェクトを始めたんです。
子どもとの向き合い方は常に悩み。
無力感を覚えることもあるけど、手応えも大きい
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――ここまでとても順調に見えますが、オープンして戸惑ったり悩んだりしたことはありましたか?
子どもたちとどういうふうに向き合うかは、最初も今も常に悩んでいることで、スタッフたちともよく議論を交わすポイントです。
利用してくれている中高生の中には外でトラブルを起こした子も。そういう話を聞くと胸が締め付けられますし、自分たちの無力さを感じます。
どう接するのが良いのか迷うこともありますが、今は「ここにいる彼らの味方でいよう」と思っています。悪い噂を聞けば、人は事実がどうあれ彼らをそういう目で見るでしょう。でも、彼らにも良いところがたくさんあります。
「ナッツアップ?」で問題を起こしたら厳しく対応しますが、そうでない以上は彼らの味方でありたいと思っています。
――逆にユースセンターをやっていて感じた手応えや喜びは?
頻繁に「ナッツアップ?」に来ていた中学3年生の男の子が、雑談の中でふと「ここは第2の家」と言ってくれたときのことが、すごく心に残っています。子どもたちにとって安心安全な場が提供できているのだと実感できる言葉だったので、うれしかったです。
また、友達と一緒じゃないと来なかった子が、あえて利用者が少ない時間帯に来て、悩みや不安を打ち明けてくれたことも。多少なりとも子どもたちの力になれているのかなと思い、やりがいを感じます。
――中高生にとって「ナッツアップ?」をどういう場所にしていきたいですか?
私はあえて、「ただの箱」でいいと思っているんです。中高生は進級・進学で環境が変わり、利用者も入れ替わりがあります。やんちゃな子が多いときや、1人活動が好きな子が集まるときなど、訪れる中高生によって「ナッツアップ?」の雰囲気も変わります。
「ナッツアップ?」はこういう場なのでこういう人に来てほしい、ではなく、訪れた中高生たちがその時々で自由に「ナッツアップ?」を作り上げていく。そういう場でいたいと考えています。
組織として体力をつけるため、ソーシャルビジネスを開始予定
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――今後に向けて課題に感じている点はありますか?
大きく2つあります。1つは、リーチできていない層への対応です。最初にお話しした通り、デイタイムの時間帯に不登校生徒の受け入れができたらと考えているのですが、まだできていないのが現状です。また、「ナッツアップ?」だけでは八街市全体の中学校区を網羅できないので、他エリアにも居場所の拠点が必要だと思っています。
もう1つは、組織として体力をつけること。今年5月にユースセンター起業塾の起業準備コースを卒業し、現在は事業創造コースで運営面、資金面のサポートを受けているのですが、2年間と期間が決まっています。助成終了後にどういうふうに自走するかは現在の最大の課題です。
――そのために何かしていることはありますか?
他エリアの居場所については、地域の方と拠点づくりの話が進行中です。私たちが自ら手を施すかは未定ですが、協力し携わっていくつもりです。
また、今年の4月からソーシャルビジネスを学んでいて、ある事業を起こす準備も始めています。助成期間が終了するまでに実装したいと考えています。
――ソーシャルビジネスによるある事業とは?
地元の会社とのマッチングみたいなことをできたらと思っているんです。地域の会社の中には、高校を卒業した子を採用したいと考えているところが少なくありませんが、高校生と繋がれる場が少ないという課題を持っています。一方、高校生の中にも早く働いて自立したいと考えている子がいます。
就職する・しない以前に、両者が交流するだけでも価値があると思うので、中学生や高1、高2の子も含めて、地元の会社の方と接触する機会を作りたいと思っています。
――これまでずっと「チャレンジという軸でいろいろな人が集まれるユースセンターを目指したい」とおっしゃっていましたが、今も同じ思いですか?
はい。最初にお話しした「北総ミチゆくミライブラリー」やイベントなどを通して、少しずつですが実現できてきていると感じています。
去年1年間は土台である居場所作りに注力してきましたが、今後はそこに「いろいろな経験ができて自分にぴったりハマる何かが見つかる場所」という要素を加えていきたいです。それが「チャレンジという軸で集まる」につながると思うので。
そういう意味では、会社とのマッチングもその大きな要素の1つになると思います。
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「出身地の千葉県八街市に10代のための居場所を作る」という目標を実現させた太田さん。最後にこれからユースセンター設立を目指す人へのメッセージをくれました。
「ユースセンターはめちゃくちゃやりがいのある活動だと思います。子どもたちと接するなかで、成長が見られたり変化が生まれたりした瞬間は、ものすごい感動があります。
一方で、同時に大変なこともたくさんあります。でも、どんなことであれ人と関われば、想定外のことが起きるもの。それありきで、大変さもこの活動の魅力の1つとして、丸ごと楽しんでほしいです」(太田さん)
-イベントの写真提供:JICABLUE
-文:かきの木のりみ
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