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「友だちグループと好きなものが違う」高3女子が悩みを打ち明けてくれたときの話
私が所属するb-lab(ビーラボ)は、東京・文京区にあるユースセンター(中高生のための施設)です。少し前、私は高校3年生の女の子からある悩みを相談されました。それは私自身も高校時代に抱えていた葛藤であり、「自分がb-labに来た意味」と感じていることでもありました。その出来事についてお話しします。
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ワカナさん(仮名)はb-lab常連の高校3年生。私とは好きなお笑いが同じで、顔を合わせるとお笑いの話でよく盛り上がっていました。
そのワカナさんからある日、「最近悩んでいることがあって……」と相談を受けたのです。
それは修学旅行でのこと。夜、同室の友だちと部屋で過ごしていたとき、ワカナさんが「バラエティ番組を見よう」と提案したら、全員から「テレビなんておもしろくないじゃん」と言われたという内容でした。
それ以前から「好きなものや興味のあることが周りの人と違う」と感じることがよくあったというワカナさん。「自分の感覚が変なのかな」と悩むようになったそうです。
実は私も高校時代、ワカナさんと同じような悩みを持っていました。周りの友だちが盛り上がっている話題をおもしろいと思えず、自分が興味のあることを話せる人もいませんでした。
「仲良くしたいのに共通の話題がない」というところが、ワカナさんとすごく似ていると思ったんです。
高校時代の私は「嫌われたらイヤだから何もしないでいよう」と考え、結局自分を出せないまま3年間を過ごしてしまいました。
大学ではその反動で、「もう後悔はしたくない。やりたいことをやろう」と決めアカペラサークルに入部。すると、好きなことでつながれる友だちが増え、充実した4年間を過ごすことができました。
今思うと、高校時代に自分を出しても嫌われることはなかったでしょう。でも、当時は頭でっかちに考え過ぎ、踏み出す勇気を持てませんでした。
ただ、その経験はムダではなかったと思っています。なぜなら、高校時代に多くのことを感じ、悩み、考えたことが、今の自分の個性や良い部分につながっていると感じるからです。
ワカナさんにはそうした私の経験を話し、「今、とてもしんどいのはすごくよくわかる。でも、『周りと違う』ことが自分の武器になるときが、将来絶対に来る。だから、そういう今の自分も大切にしてほしい」と伝えました。
するとワカナさんが「話してみて救われました」とポツリ。その言葉と彼女のやわらかな笑顔が、今でも心に残っています。
日本の中高生は諸外国に比べて自己肯定感が低いと言われます。カタリバでは、そうした中高生の心へのアプローチも昔から続けています。
私は大学卒業後、テレビ番組制作の仕事をしていたときに、何かの記事でカタリバのそうした活動を知り、「そんな部分に目を向けてくれるところがあったのか」と驚きました。
同時に、高校時代の悩みは私の性格的な問題ではなく、中高生という年代ゆえの普遍的な悩みかもしれないと思いました。ならば、周りと馴染めずに悩んでいる中高生たちに、同じ経験を持つ自分だからこそ言ってあげられること、してあげられることがあるのではないか。そう思い、b-labスタッフへと転職したのです。
今、b-labで働いてみて、自分が高校生のときにb-labのような「悩みを話せる人がいる場所」が身近にあったら、どんなによかっただろうと感じます。
悩みを1人で抱え込んでいても、いい方向に転ぶことはあまりないと思います。相談とまではいかなくとも、誰かに思いを話すだけで楽になることが多くあります。
中高生が自身の思いや悩みを気軽に話せる場所、それを聞いてくれる人がいる場所がもっともっと増えてほしい。強くそう感じますし、私自身そうした活動を続けていきたいと思っています。
今回のコラム担当:渡辺大樹(わたなべ・たいき)/b-lab
1996年生まれ、大分県宇佐市出身。高校まで大分県で過ごし、東京学芸大学に入学。生涯学習について学ぶ。卒業後はバラエティー番組の制作会社に勤務し、アシスタントディレクターとして働いた後、児童館職員に転職。その後カタリバに入職し、現在は文京区にある中高生の居場所「b-lab」でユースワーカーとして勤務。