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平成八年生肉之年--02
承前
平岡辰雄
錆びた鉄の階段が霧で濡れている。平岡辰雄刑事が一段ずつ上がる。60を超え、段差がこれほど怖いものになるとは思わなかった。年齢に勝てない自分を忌まわしく思う。革靴の踵でカンカンと階段が鳴った。二階ではアパートの扉が開かれ、捜査員たちがひっきりなしに出入りしている。ちょうど出てきた若い捜査員に声をかけた。
「鉢村」
「平さん」
鉢村と呼ばれた捜査員が平岡に駆け寄る。鉢村要巡査は
承前
平岡辰雄
錆びた鉄の階段が霧で濡れている。平岡辰雄刑事が一段ずつ上がる。60を超え、段差がこれほど怖いものになるとは思わなかった。年齢に勝てない自分を忌まわしく思う。革靴の踵でカンカンと階段が鳴った。二階ではアパートの扉が開かれ、捜査員たちがひっきりなしに出入りしている。ちょうど出てきた若い捜査員に声をかけた。
「鉢村」
「平さん」
鉢村と呼ばれた捜査員が平岡に駆け寄る。鉢村要巡査は