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電楽の短編

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#お菓子

ボルゾイに血まみれ錦鯉をぶん回す

ボルゾイに血まみれ錦鯉をぶん回す

 浦井先生はボルゾイに似ている。輪郭がしゅっとしてるところなんてそっくりだ。高校時代はバレー部の主将だったらしく、筋肉質な身体はボルゾイの白くてがっしりした姿と重なる。
 他にもまだある。今日の先生は無印の白いブロードシャツを着ている。肌の白さとマッチしていてかなりボルゾイだ。
 そんな浦井先生が駐車場に倒れている。舌を出して目を半開きにして尻を突き出したまま微動だにしない。センター分けにした黒髪

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チェーンフォー悪童

チェーンフォー悪童

空は鉛色だった。
石畳には破れたゴミ袋が腐臭を放ち、ネズミとカラスの楽園と化している。
奇声をあげながら子供たちが走り回る。
「おらー!」
「やったなー!」
投げ合うのは火炎瓶だ。一本が雑貨屋に逸れる。
火だるまの老婆がとびだした。魅々子はその光景を見つめる。
ドレスデンは悪童の手に落ちていた。空港は落書きの展覧会だった。今や、ドイツにまっとうな人間は残っていない。
大好きな杏子先輩が、食べ尽くし

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ソは青い空

ソは青い空

「あらら」
魅々子の目の前には六芒星の魔法陣。中に鎮座するのは首のない着物の死体。おおっと、殺人事件だ!
時間をぐるっと巻き戻そう。
サークル活動が終わり、杏子先輩と魅々子はファミレスで夕飯をとっていた。
杏子先輩はいつものZARAのフラワープリントワンピース。対する魅々子はいつものラバースーツに鉄仮面。
「ねぇ知ってる?」
杏子先輩が、差し出すスマホの画面には見知らぬ物体が写っていた。皿に盛られ

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鉄仮面探偵とドラ焼き屋敷

鉄仮面探偵とドラ焼き屋敷

 帰りの総武線の席に座ると、しばらくして杏子先輩は魅々子の鉄仮面をこんこん、と叩いた。
「なんかさ、最近流行ってるんだって。」
 先輩がスマホを魅々子に傾けると、小さなピラミッドと大学生が映し出された。
「ピラミッどらって言ってさ、今人気なの。」
「どら……。コレどら焼きなんですか。」
 魅々子は鉄仮面がぶつかりそうなほど画面に顔を寄せる。
「なんでも、店主がエジプト帰りのトレジャーハンターらしい

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【完全版】魅々子です。またお菓子を作りにきました。

【完全版】魅々子です。またお菓子を作りにきました。

前に逆噴射プラクティスで書いた話の完全版です。

魅々子 ミュージカル部の狂人。大好きな杏子先輩に会った時の照れを隠すため鉄仮面を着けている。お菓子作りが好き。
杏子先輩 ミュージカル部の麗人。魅々子の憧れの先輩。歌と演技が卓越しているため部長に推薦された。

あらすじ

お菓子作りにハマった魅々子は、「分子ガストロノミー」を手に入れるため、国内の研究機関の9割を爆破した。

しかし、学者の一人か

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