見出し画像

刀展示ケース製作日記② 設計前にすること

私が作る展示ケース(刀箱漆)の制作工程を複数回に分けて書いています。
完成した展示ケースは以下の物です。

画像9

画像10


動画でも刀展示ケースの機能を一通り紹介してます。

以下の内容に加筆して書いていく予定なので、先をすぐ読みたい方は以下ブログ内の「製作日記①~⑧」をご覧ください。


・前回までのあらすじ

前回はまず一番初めの段階として、刀を綺麗に見せる為のライトを選定するまでの話を書きました。


①設計する前にまずやること

ライトが決まったら次にやることは、設計に落とし込むために、
「ライトと刀の適切な距離を見つける」ことです。
その為には実際に刀にライトを当てつつ適切な距離を探るしかありません。
アナログですが、刀を置きライトを手で持ちながら距離を探りました。


②ケース内にライトを付ける事の問題点

博物館などではケース外からライトを当てるので、ライトから刀までの距離を稼げる(より光の配光角度が大きくなるので刀身全体に光が届きやすい)のですが、ケース内にライトを付ける事の問題点として、ライトと刀身の距離が近い事が挙げられます。
距離が近いとライトの光が強くなってしまい、刃文が見えにくくなります。

無題


③美しく見える縦横比率

ケース内でライトと刀身の距離を稼ごうとすると、ケースの形がだんだん縦に伸びていくので、ケースの形が長方形から正方形に変わっていき、サイズも大きくなってしまいます。
サイズが大きくなってしまうと飾れる家が限られてしまい、自身の製品コンセプトの一つである「どこでも、そこだけ美術館」というものから外れてしまいます。

加えて人間がパッと見で美しいと感じる縦横比率は、テレビの「16:9」や「4:3」などとある程度決まっているそうです。
なのでその比率に落とし込みたいという思いは根底にありました。

画像2


④実際の見え方

その比率である程度どの家でも置けるケースを作るとなると、ライトから刀身までの距離が30~40cm程度で刃文や地景が綺麗に見えないといけません。

40W~60Wの電球もこの距離で刀に照らすと光が強すぎて綺麗に見えません。
ここがレフ電球などの採用を避けた理由でもあります。
他にも電球自体が高温になりケース内温度が上がるなどの弊害もあります。

ライトの選定記事で書いたような軸でライトを選定すると、LEDで刀身までの距離が30~40cmと近くても、実験段階で大体このくらいで見える事が分かりました。(下はケース完成後の写真です)

・大慶直胤

画像3


・出羽大掾藤原国路

画像4


ライティング実験の段階で上記程度に見える事が分かったので、
刀用は16:9、短刀用は4:3の比率で作れる確信が持てました。

画像5


⑤展示ケースのサイズ感

ケースの横幅ですが、刀用は1200mm、短刀用は600mmにしました。
写真に飾っている刀は2尺3寸3分(70.6cm)、短刀は9寸6分(29.1cm)です。

拵えを飾る場合は、刀用で1400mmくらいにしておけば大体すべての刀を飾る事が出来ると思います。
今回は我が家の部屋の狭さと、拵えが付属していない都合で1200mmにしました。
この辺のサイズ感は依頼者の刀に合わせて柔軟に対応できると思います。


1200㎜でも2尺3寸用の拵え位であれば飾れるのですが、以下のような感じで少し窮屈になります。

画像6


多くの博物館や美術館を見に行くと、美術品を飾る際、空間の演出に気を遣っている事がわかります。
陳列品同士には適切な距離が取られており、ぎゅっと詰まって並んではいません。
夏雄の鐔は芸術的で美しいですが、これは空間を上手く使う構成力が高いからかもしれません。(それ以外の技巧も突き抜けて素晴らしいですが。)

画像7

(画像転載元:http://www.nezu-muse.or.jp/jp/collection/detail.php?id=80991

そういった意味でも空間の使い方については私自身もこれから色々な作品を見て勉強していかねばなりません。


⑥終わりに

ライトと刀の位置関係、横幅、縦横比率が決まれば、他の細かい寸法も必然的に出てきます。
これを基に実際の設計に落とし込んでいきます。
という事で、今回は設計前にする事について書きました。
次回はパソコン上でする3Dモデリング(設計)の様子を書こうと思います。


今回も読んで下さりありがとうございました!
読んで面白かったと感じてくれた方はハートマークを押してくださると嬉しです^^
記事更新の励みになります。

それでは皆様良き御刀ライフを~!

画像8

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?