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立ち位置が変われば視点も変わるⅡ 〜視点・視野・視座の違い〜

こんにちは、2024年4月に産業振興課から秘書広報課の広報担当に異動した吉崎です。
2019年に「立ち位置が変われば視点も変わる~仕事における視点の違い~」という記事を書きましたが、今回は少し角度を変えて「視点と視野と視座の違い」に触れてみたいと思います。


研修所の講師やってます

私は、東京都内(23区を除く)の市町村職員が合同研修を行う東京市町村職員研修所の講師もやらせてもらっています。
この研修所では、係長級以上の職員なら講師養成研修を受講すれば、なんと講師になれるんです!
私のように人材育成に興味のある人にとっては、こんなありがたい制度はありません。
だって、どんなに専門知識や教えるスキルがあっても、受講生や教える場がなければ、教えられないのですから。

問題とは?問題解決とは?

そんな訳で、私は主に在職3〜4年くらいの職員が受講する「問題解決」という2日間の研修を2022年から担当しております。
「問題解決」は、「目標(理想の状態)」と「現状」の差(ギャップ)を見える化し、その差を埋めることで「問題を解決する」というロジカルシンキングをグループワークで学ぶ研修です。

問題の構造

年間5回くらい開催されており、1回あたり7クラス程に分かれて研修所の専任講師や私のような内部講師が1クラスずつ担当します。
1クラスは3〜4グループで構成されており、1グループあたり8人程度です。

基本的には、共通のテキストがあるのでどのクラスも同じ内容の講義をしますが、分かりにくいところやポイントとなるところなどは、講師が独自に解説できますので、私はオリジナルスライドを作って説明しています。

そこで、今回ご紹介するのが「視点と視野と視座の違い」です。

当事者と立ち位置

まず、この問題解決の研修では「当事者は誰か?」を設定します。
つまり、問題とは「その当事者にとっての問題」となりますので、当事者を誰にするかで問題の内容も問題解決に向けた取り組みも大きく変わってきます。

この当事者設定の際に私が伝えているのが、「立ち位置を変えてみること」です。
簡単な事例として、こんなものを紹介しています。

同じものを見ているのに、Aさんは「丸い」と答え、Bさんは「四角い」と答えました。なぜでしょう?

同じものを見ているのに答えが違うのはなぜかな?

答えは、「Aさんは円柱を真上から見ており、Bさんは真横から見ていたから」です。

円柱を見る場所(角度)の違い

これは物理的な立ち位置の話ですが、世の中はもっと複雑怪奇ですよね。
立場や組織、環境や価値観などで、ものの見方や捉え方、判断基準などは全く異なります。
事業部門に所属していた時は「もっと自由にやらせてくれよ」と文句を言っていたのに、管理部門に異動したら「規則上、ダメなものはダメです」と断る立場になった、なんてことはよくある話です。

立ち位置を“意図的に”変える能力を鍛えることも、研修の中で体験してもらっています。
一番の近道は、いろんな人の意見を聞くことなので、グループワークが功を奏します。
同じ公務員でも、自治体によって組織風土も違いますし、職種(事務職、技術職など)によっても着眼点が違うので、合同研修の醍醐味を味わうことができます。

視点と視野と視座の違い

さて、「視点と視野と視座の違い」ですが、まずはイラストを見てもらって視覚的に理解してもらっています。

視点・視野・視座の違い

視点とは、どこを見るか、どんな観点で見るか、どの方向を見るか、見る人が意識して見ている特定の部分です。
「鋭い視点」とか「視点を変える」なんて使われ方をしますね。

視野とは、どこまで見えるか、どのくらい見えるか、時間軸(長期、短期)や規模など見る人の思考の幅の範囲を指します。
「視野が広い・狭い」とか「視野が広がる」などと使います。

視座とは、どこから見るか、見る人の立場や姿勢などであり、抽象度や俯瞰して見る度合いに影響します。
「視座が高い・低い」と使います。

この3つの中でも「視座」を意識的に変えて見る訓練をグループワークを通して体験してもらっています。
在職3〜4年の職員だと、「部課長や市長になったつもりで考えてみろ」と言われても、なかなか上位者の立場で考えるのは難しいものですので、せっかく研修といういわば「道場」に来ているのですから、失敗も含めて経験してほしいと思っています。

視座は高ければ良いとは限らない?

ただ、これまで2022年から計2回「問題解決」の講師を務めましたが、私の中で一つの疑問が生まれてきました。

それは、「視座を高める」ことでミスリードしていたかもしれない、ということ。

この研修では主に2つの事例を題材にグループワークで問題解決してもらうのですが、2つ目の事例は結構難易度が高いので、どのグループも苦戦します。
気になったのは、他のクラスの講師と意見交換した時に、私のクラスだけ「当事者」を「個人」ではなく「組織」にするグループが圧倒的に多かったのです。
明確な正解がある事例ではないので、間違いではないと考えていますが、一応、模範解答は「当事者は個人」であり、他のクラスでも個人にするグループが多かったのです。

ではなぜ、私のクラスだけ当事者を組織にするグループが多かったのか?

おそらく私が「視座」の話をしていることと、1つ目の事例の当事者が私としては「組織」の方が適切なのではないか、と考えていることが要因ではないかと仮説を立てています。
1つ目の事例の模範解答も「当事者は個人」なのですが、解説の時に私は「これは組織的な問題でもあるよね」という話をしています。
この結果、2つ目の事例の時に「当事者を組織」にする流れができてしまっているのではないかと考えています。

特に、2つ目の事例は問題の構造が非常に複雑なので「視座を高く」してしまうと、抽象度が上がり過ぎて解決困難になってしまう可能性があります。
いわゆる、「あちらを立てればこちらが立たず」の状態に陥ってしまうのです。

したがって、視座はケースバイケースで高さを調整する方が良いのかもしれないと思うようになりました。
特に、この研修の2つ目の事例においては、あえて視座を下げて「当事者を個人」にした方が、抽象度が下がるので問題を解決しやすくなるという裏ワザ的なテクニックが使えるかもしれないと仮説を立てています。
グループワークの進捗状況を見ながら、適切なタイミングで「あえて視座を下げる」話をしてみようと思います。

この仮説は、今後の研修講師で検証してみたいと思いますので、検証結果についてをまた後日、追記するようにしますので乞うご期待!?(笑)

以上、今回は「視点・視野・視座の違い」について書いてみました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。かたじけない!

おまけ(2024年9月23日更新)

最後に書いた「仮説」の検証結果をアップしましたので、気になる方はぜひチェックしてみてください!


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