虚無僧と文学☆夏目漱石『草枕』岡本一平漫画
山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通とおせば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。
人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣にちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。
こちらは有名な冒頭部分。
とある洋画家が山奥の温泉宿に宿泊する話である。
夏目漱石は、1896年4月13日に熊本を訪れた。
その『草枕』に虚無僧が登場する。
と言っても、昔の話としての登場。
昔々、虚無僧に想いを寄せた女性が、叶わぬ恋のために身投げをしたという悲しいお話。
さらに特筆すべきは、こちらの本の挿絵は岡本一平。あの芸術家の岡本太郎の父親だ。
ということで題名も『草枕絵物語』となっている。
この虚無僧、よく見ると前に結び目のある帯が虚無僧結びになっている。ちょっと大きめ。黒いものは三衣袋だろうか。
この「草枕絵物語」が書かれている『文芸名作漫画』を、どうして知ることになったかというと、友人の営んでいる高山の絵本屋に併設される古民家カフェらん洞の本棚にあったのだ。たまたま手にとってパラパラと頁をくると虚無僧の絵があるではないか!
また、この本がここにあるいきさつは、その絵本屋の店主のお祖父さまが多治見市の古虎渓駅というところで旅館を営んでおり、そこに岡本一平が泊まりに来て、この本を置いていったのだそうだ。それもすごい話。よっぽど気に入った宿だったのだろうか。
お祖父さまは、古虎渓を日本一の観光名所にしようと野望を持って旅館を営んでいたそうな。
こちらは、『草枕』発祥の町について。
この『草枕』でありますが、冒頭部分は面白いのだが、その後一体何の話をしているのかてんで分からなくなるのも正直なところ。
夏目漱石の芸術論を広きにわたり漂流するような気分になる。
こちらは難しい語句の解説付き↓
おまけの情報で熊本には虚無僧踊りという伝承芸能があるそうな!
とかくに人の世は住みにくいと言いながらも、そこに詩が生まれ、画ができると言う漱石。
人の世で生きていくしか無いのですありますので、『草枕』でも読んで、ここは尺八でも吹いて浮世を離れてみるのも如何でしょう♪