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復讐の女神ネフィアル 第5作目 『愚かな商人』 第2話

「一つだけここで約束してくれ」
 北の地の戦士はアルトゥールに言う。
「何だ」
 他に漏(も)らせない密約でも結んだか。ネフィアルの若き神官はそう思ったが、返ってきた答えは意外なものだった。
「俺は、ヴィルマが守っているこの店の女主人から依頼を受けている。ただヴィルマに会いに来たわけじゃない。女主人が言うにはな、この街の地下に《法の国》時代の遺跡が残っている。それを探し当てて来てくれと言われたのさ」
「地下に?」
「そう。《法の国》時代の上下水道の充実ぶりはそれはすごいもんだったらしいからな。今でもそれを使い続けているのさ。しかし地下に残っているのはそれだけじゃない。他の地下遺跡もなんだ」

「なぜそれが今まで見つからなかったんだ」
「そりゃ隠されていたからさ。なぜ隠されていたか分かるか」
 リーシアンは反対に問い掛ける。
「何か、危険な物を封印しているか、貴重な宝でもあるのだろう」
「そうそう、そういうことだ」
 アルトゥールはしばし考えた。
「今は宝探しをしている場合じゃないな」
「違うさ。もちろんただの宝探しじゃない」
「何が目的なんだ?」
「お前は闇の眷属(けんぞく)とされる神々がいるのを知っているだろう」
「もちろん」
「その神殿があるんだよ。宝はその神殿にある」
「ここの女主人がその宝を手に入れて欲しいと言ったんだな」
「そうだ」
「依頼の中身について訊くわけにはいかないだろうな」

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