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【クリエイティブ生活】ファンタジー背景世界の作り方〜 背景世界の情報の出し方【その9】

 世界を創造するcreatorの皆さん、この記事を読んてくださってありがとうございます。

 前回の記事はこちらです。

 他の記事は順番に、マガジンにまとめてありますので、どうぞご覧ください。


 背景世界を作ったら、それを小説などの形にして公表したいですよね?

 ここでは漫画や動画など、視覚的に見せられる場合の話はしません。私の一番得意な、小説のやり方でゆきます。

 答えを先に端的に言ってしまうと、「キャラクターの動き、ストーリーの展開に合わせて、その場ごとに必要なだけの情報を出す」です。

 具体的に例をあげましょう。 

 前回の記事で書いた、このストーリーの導入部を使います。

《ルリヤーナは美しく勇敢で強い戦士で、外敵が来ないように内海の見張りをしています。ある時、海底に遺跡を発見しました。どうやらシレーナ族の先祖が外敵から身を守るために建造した物のようです。

 なぜ、この遺跡は見捨てられたのでしょうか?》

 それでは、小説化した本文がこちらです。

〜小説化〜

「それじゃ、行ってくるからね」

 ルリヤーナは背後に立つ若者に声を掛けた。この時にはまだ、海底に謎の遺跡を見つけてしまうとは、この美貌の女戦士は考えてもいない。

「ああ、頼んだよ」

 《円卓会議》の一人、パーブロスは言った。その声は年齢に似合わず厳(おごそ)かであり、生まれつき人を従わせる才能を持って生まれた者のようだった。

「ルリヤーナ、君は強く勇敢な戦士だ」

 ルリヤーナは赤みがかった髪をなびかせて海辺の岩の上に座っていた。パーブロスの言葉に、ただ黙って微笑んだ。

 すんなりとした長い足は、見る間に魚の尾びれとうろこのついた姿になってゆく。

 この姿を見れば、伝説に聞く人魚姫だとシレーナ島の外の人々は思うだろう。正確には、シレーナ族は人魚にも人間にもなれる種族なのだ。もちろん、女だけでなく男もいる。

「シレーナ族の暮らすこの村は、私たちシレーナ島の戦士が必ず守る」

 ルリヤーナは海に飛び込んだ。青い水面から水しぶきが上がる。ルリヤーナの姿は、海面に沈み見えなくなる。

 今日もシレーナ島のある内海に、侵入者がいないか見て回るのだ。

 外海から、大陸から、迫害する者から逃れて先祖はこの場所にたどり着いた。先祖が見つけてくれた安住の場を守るために、シレーナ島の戦士たちは、シレーナ島がある内海の周辺部を警戒する。


〜小説化終わり〜


 いかがでしょう?

 このように、キャラクターとストーリーの動きに合わせて、情報を出してゆきます。これまで情報が多いと言われた方は小出し気味に、少なくてそれゆえに分かりにくくなっていると言われた方は、少し多めに出すといいでしょう。

 あるいは、他者の小説を見て、「自分なら、このくらいの情報量がちょうど良いと思う」感じで書いてみてください。情報量がどのくらいなら適度なのかは一律ではなく、人それぞれ、作品によっても違います。

 あなた自身、そしてあなたが読んでほしいと望む読者に合わせてください。

 情報量が多めであれ少なめであれ、その場その場のキャラクターやストーリー展開と、密接に結びついた情報を出すのがポイントです。

 今、ラスボスとヒーローの戦いが始まろうとしているのに、その街の一般人に好まれているグルメ情報など、関係のない情報を出す必要はありません。

 しかし関係のある情報であるならば、読者の好みによってはくわしく描写した方がいい場合もあります。

 ヒーローとラスボスは、一体どんな思いを抱えてここにいるのか、どんな技を繰り出し、周囲の街はどのように影響を受けるのか。

 そうした、「そのシーンに密接に関係した情報ならば、むしろくわしく書いてほしい。読みたい」という層は確実に存在しています。

 そうではなく、「ヒーローとラスボスが戦っているのを、できるだけシンプルに分かりやすく書いてくれればいい。くわしい情報はいらない。読みにくく感じる」そんな読者もいます。ウェブ小説では、こちらの方が多数派かも知れませんね。

 さて、サンプルの小説化では、世界設定の説明や描写だけでなく、ストーリー上重要な要素、つまり海底遺跡の発見について最初に提示しておいて、最初から読者の関心を引くようにしています。

 これも対象読者によって異なり、もっとスローテンポで、初めから危機感をあおらないほうが好ましいと感じる人もいます。

 書き方については、ターゲットとする読者に分かるように、読まれるようにすれば良いのです。ウェブでの主流となる読まれやすいとされる書き方には、必ずしも従う必要はありません。

 最初は、あなたが好きな作家の書き方を真似るのが一番です。一人だけでは影響が強く出すぎてしまうため、二、三人の作家の小説に目を通すと良いでしょう。

 長編を読むのが辛ければ、短編をいくつか繰り返し読みましょう。こうすることで、文章力や表現力だけでなく、作品全体の構成も頭に入ります。私も6千字から3万字くらいの短編が大好きです!

 声に出して読むのもいいですし、少しだけでいいので、書き写してみるのも良いですね。

 ちなみに、私が書いた和風ファンタジー『海神の社』は、カクヨムでの順位が二日前の通知で1583位くらいでした🌿

 それくらいの順位なら、ウェブで読まれやすいとされる、ライトな書き方や作風の物は一つもないのでしょうか?

 いえいえ。全くそんなことはないのです。読まれやすいとされる書き方や作風、キャッチコピーやタイトルにしても、読まれるとは限らない。それが事実なのです。

 そうであるなら、あなたの作品を理解し愛してくれる人のためにだけ書きましょう。不特定多数に読まれる必要は必ずしもありません。

 

 今回はここまでにします。

 ここまでお読みくださってありがとうございました。あなたのクリエイティブ生活のヒントになれば幸いです。


続きはこちらです。


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片桐 秋
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